▽ 7話
血まみれの男たちが帰ってきた。
狐に言われるがまま、許可を出して手入れに向かわせる。
血の匂いが気持ち悪い。
派手な血の色なんて生理以外で見たことのない私は、少なからず驚いた。
手入れのための部屋は四つあるが、重傷の4人が先に入り、残された山鳥毛と鯰尾が手入れ部屋の前で座り込んでいた。
「手入れって、早く終わったりしないの」
「手伝い札というものが必要になりますが、当本丸にはあと1枚しかございません」
「どっちのほうがやばい?」
「私はまだ平気だ。鯰尾を先に頼む」
「俺も、まだ……」
「分かった。鯰尾を入れて」
「承りました。どの手入れ部屋を空けますか?」
「任せる」
狐が札を持って部屋にぴたりとつけると、少しして山姥切が出てきた。
いつも通りの姿だ。
さっきまで血まみれだったとは思えない。
山姥切と入れ替わりで、肩を貸されながら鯰尾が部屋に入る。
「手伝い札、使ってくれたんだな」
「早く終わるなら、早いほうがいいでしょ」
「助かった」
山姥切が私の手を握って、その冷たさに驚いたのか目を瞬き、風呂の準備をしてくると去っていった。
そんなに冷たかっただろうか。
自身の手を握りながら、最後に残された山鳥毛を見る。
痛みを逃がすためか、戦の高ぶりか、息が荒い。
私が見ていると、山鳥毛は気まずそうに微笑んだ。
「無様を晒してすまないな、小鳥」
「いい、けど。血、止まんないの?」
「折れることはないさ」
「止まんないの?」
今度は狐のほうを向いて聞いた。
「緊急時の物ですが、主さまの霊力供給によって、一部補修されるというデータはございます。主さまの霊力量であれば可能性はありますね」
霊力なんて自覚したことはないが。
山鳥毛の手に触れ、どうすればいい?と問いかける。
山鳥毛は迷うように首を振り、私の手から逃れて刀を握りしめた。
「大丈夫だ、ほら、あと40分もかからない」
秋田の入っている手入れ部屋の時計を指して、血まみれの顔で笑う。
「こんのすけ」
「記録では当該審神者の血が刀に触れ、傷が補修されたと」
「それは嫌」
「政府としても審神者の負傷は極めて避けるべき事項でございます。件のデータについては非常に緊急性のある状況下での……」
私は山鳥毛の後頭部に手を当てて、唇にキスをする。
痛みに耐えるように食いしばっていた口が驚きで緩んだところへ、舌を入れて唾液を飲み込ませた。
ごくりと喉が上下したのを確認して、1番の深手である左腕を見る。
血は、止まった。
体液なら効果はあるらしい。
「まさか……唾液で、ここまでとは。主さまの規格外の霊力量だとこのようなことが」
「消えろよ」
狐を掴んで遠くへ放り投げ、先ほどとは違う息遣いの荒さに変わった山鳥毛の上に乗る。
「十分だ、ありがとう小鳥。これ以上は……」
命をかけた戦いのせいか、興奮しやすくなっている様子の山鳥毛だったが、それでもまだ理性で自分からは私に触れまいとしている。
かと言って完全に本能に勝てるわけでもなく、膝の上にまたがる私を押し除けたりはしない。
私は再び山鳥毛にキスをして舌を入れた。
理性の緒が切れる音。
山鳥毛は血塗れの左手で私の後頭部を押さえつけた。
唾液を奪われるように舌を絡め、息もできないほどに求められる。
あー、これ好き。
興奮を押し殺すように荒い息のまま押し倒され、何人かの血が混ざった床に顔を顰めれば、一度起こされて雑に脱いだ山鳥毛の上着が私の下に敷かれた。
理性があるのかないのか。
勃起しているそれを服の上から撫でれば、山鳥毛は情欲に濡れた目のまま私を見下ろし、耐えるように細く息を吐き出す。
「まだ、逃してやれる」
「私のせいにしていいよ。誘ったのは私」
山鳥毛は空笑いして、やや乱暴に私の服の中に手を入れた。
「いいや、私が襲っているんだ」
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