▽ 20

心底嬉しそうな、初めて見る笑顔に、俺は、苦しくなった。
針を取り上げたシュリ様を押し除け、微笑むレーナの首を掴む。
やめろと叫ぶお姫様の声に顔を背けて、感謝するように笑うレーナの首をへし折る。
虹が首を戻し、そして僅かに、本当に小さな音を立てた。
ひび割れが広がるような、そんな音だ。
ああ、これを望んでいる。

「レーナ、これだけが、俺がお前にしてやれる贖罪だ。すまない……本当に……すまない、レーナ……」
「あり、が、と……」

泣いて感謝するレーナに、俺は胸を潰されるような痛みを感じながら、また、殺した。
殺したくない。
殺したくない。
もう、誰も。
これが罰だというのなら、これ以上に辛いことなどないだろう。

「バーンズ!レーナから離れろ!」
「いや、レーナはこれを望んでいるんだ。虹のひび割れが進んでいる」

俺を止めに来たティチャラを振り払い、レーナの首をへし折る。
できるだけ痛みを感じないように、一瞬で。
今度ははっきりと割れる音がした。
ティチャラが俺を投げ飛ばし、レーナの容態を見ようとして、一際大きく瞬いた虹の光を浴びた。
虹のひび割れはレーナの腰から肩口、そしてその上の空間にまで広がった。

「レーナ……?」

俺はその瞬間、初めてぞっと嫌な寒気に襲われた。

「みんな、しね」

虹が割れた。
すべての障害物を突き抜けて天上まで伸びる虹の光が、世界を割った。
空間そのものが割れていく。
虹色に染まる視界で、一歩レーナへと近づいた俺の体も、虹のひび割れに飲み込まれる。
痛みはない。
けれど、食われている感覚は確実にある。
虹色に包まれ、俺の体も割れていく。
彼女が、ずっと虹を恨むように、怯えていた理由を、ここに来てようやく知った。
俺たちは、食われた。


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