Step.11
「はぁあああ、緊張するね!消太くん!」
「別に」
「でしょうね!」
いつもと同じケロッとした顔で事もなげに隣に座る消太くんは欠片も緊張した様子はない。
プロヒーローだもんね!
本日何度目になるか分からないドキドキを回収しては心の奥底へぶん投げる。
前の親子が終わったのか、見知った顔の女子が教室から出てきて私ににっこり笑った。
「コトハちゃん!リラックスリラックス!」
両手を差し出してくれる女子の手からは明るい感情が漏れ出ている。
それをくれるというのか友よ!!
「はぁあぁぁ!ありがとう、心の友よ!」
「にひひ、頑張れ!」
両手でタッチして、勇気をもらう。
私のクラスメイトは天使ばっかりか!
親子を見送った先生が教室からひょこりと出てきて手招きした。
よし、行こう。
消太くんの後に続いて教室に入る。
先生はいつもよりも愛想20%増しで、おかけくださいと椅子を示した。
始まってすぐは、普段の生活やクラスメイトとの関係などについて話していたが、成績の話になるとそれに絡めて、ようやく進路の話になった。
「進路の希望は、雄英のヒーロー科が第一志望と聞いています」
「ええ」
「ご存知の通り、雄英はヒーロー科の最高峰です。コトハさんの座学成績は十分ですが実技に関しましては、私共では見られませんのでなんとも言うことが出来ません。ご家族の方は、コトハさんの進路に同意なされていますか?」
「はい。コトハとも話し合いをしてこの子の意思をしっかりと聞きましたので」
私が事前の面談で家族に伝えてないと言っていたせいか先生の心配はそこだったらしく、消太くんの頷きに相好を崩した。
「そのお言葉を聞けて安心しました。コトハさんからは、自分の個性はヒーロー向きではないから反対されるかもしれないとおっしゃっていたので……」
消太くんは少しだけ驚いた様子で私を振り返った。
「うん、だから、消太くんが私の個性はヒーロー向きだって言ってくれたとき、すごく嬉しかった」
プラスの感情を与えられる白い私だけじゃなく、黒い私も受け止めて、認めてくれたのは、消太くんだけだったから。
消太くんは照れくさいのか私から目を反らして、先生に頭を下げた。
「私は現職上、コトハの面倒を見てやることが出来ません。手のかかる子ですが、卒業までよろしくお願いします」
消太くんの腕が伸びてきたかと思うと、私の頭をがしりと掴んで先生に頭を下げさせた。
ぐんと勢いよく迫った机に内心恐怖しながらも、消太くんの意図するところをようやく察して、私も両膝の上で手を握り、自分の意思で頭を下げた。
「お願いします」
私たちが頭を下げると、先生は途端に狼狽して頭を上げてくださいと懇願に近い言葉で繰り返した。
すぐに顔を上げれば安心したように肩をすくませて苦笑した。
「こんなことを言うと、無責任だと取られるかもしれませんが、誤解を恐れずいうなら、私はコトハさんがヒーローになれると確信していますよ。少しやんちゃな面はありますが、彼女はクラスメイトを助けるとき、二の足を踏むことは一度もありませんでした。それは誰にでも出来るわけじゃありません。普通なら、経験を積んで、行動の筋道を立てて、やっと動けるものです」
ですから、と続けて、先生は佇まいを直した。
「私は彼女の担任として、微力ながらコトハさんの夢を応援させていただきます」
- 11 -
*前 | 次#
戻る