Walk.04




訓練の日々は流れ、ヒーロー仮免許取得試験、当日!!

「降りろ、到着だ」

消太くんの声で、皆がバスから降りていく。
私も短く息を吐きだして、緊張を回収しながらバスを降りた。

「コトハ、緊張ほぐしてー!」
「三奈ちゃん緊張してるの?」
「するよー!!失敬な!」

くすくすと笑いながら三奈ちゃんの手を取って少しだけ緊張をもらった。
それだけでよし!と意気込む三奈ちゃんにやっぱり緊張してないのではないだろうかと笑いがこみ上げる。
プラシーボ効果ってやつかな。

「試験って何やるんだろう……ハー仮免取れっかなァ」
「峰田、取れるかじゃない。取って来い」
「おっもっ、モロチンだぜ!!」

だらりと上体を倒して峰田と視線を合わせた消太くんは睨みつけるようにそう言って皆に向き直った。
自然と注目が集まり、みんな口を閉じる。

「この試験に合格し、仮免許を取得できればお前らタマゴは晴れてヒヨッ子……セミプロへと孵化できる」

ごくりと生唾を飲み込み、小さく頷く。
ヒーローへの一歩を、また大きく歩み出すのだ。

「頑張ってこい」


******


なんか変なのに絡まれた!!
絡まれたって言うか、何か……嵐のように来て嵐のように過ぎ去って行った……。
夜嵐イナサ、かぁ。

「変だが本物だ。マークしとけ」

消太くんの言葉にみんな夜嵐の後ろ姿を視線で追った。
テンションがヤバい人だとしか認識できなかったけど、西の士傑と言われているぐらいだから、きっと彼に限らず全員がすごく強いのだろう。
不思議と、臆するどころかわくわくしてきた。
試験、楽しみだ。

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」

ハッと振り返った。
この、声は!!

「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!!」

消太くんがすごい顔したけどもうそれに構っていられないくらい体が震えた。
あ、ああああ!!!

「あの人は……!」
「Ms.ジョーク!!」
「えっ、コトハ!?緑谷より先に言うなんてどうした!?」

三奈ちゃんが振り返ったけれど、ちょっといま処理しきれないから待って。
待ってホントに。

「結婚しようぜ」
「しない」
「しないのかよ!ウケる!」
「相変わらず絡みづらいな、ジョーク」

ちら、と消太くんがこっちを見たけど、嫉妬なんてしない。
むしろ、ジョークと消太くんが結婚するなら養子になる。
えっ、待って、名案じゃない……!?
結婚してよ!?

「あの!Ms.ジョーク!!私すっごいファンなんです!握手してください!」
「おう、いいぞー!」

差し出した手をぎゅ、と握られて白い靄が溢れだした。
むり……幸せに殴り殺されてる気分……。
ジョークずっと笑ってる……!
半径1m以内に憧れの人がいることに耐えられず、ぱっと手を離された瞬間三奈ちゃんの横に戻った。

「にしても、私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ」
「その家庭幸せじゃないだろ」

消太くん、私は幸せだよ……。
また噴き出して笑ったジョークを拝みながら内心でそっと囁く。
あわよくば結婚してくれ。

「何だ、お前のとこもか」
「そうそう。おいで皆!雄英だよ!」

あ、そっか、そっか!!
ここにいるってことは、ジョークも先生なんだ!!?
せ、先生!?
ジョークの授業受けられるの!?
交換留学生とか無いかな……割とマジで。

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ち、よろしくな」

う、うわあ!!受け持ちだって!やばい!うらやましい!私も一回言われたい!!
たたっと駆けだしてぺこりと頭を下げた。

「雄英高校1年、久地楽コトハです!Ms.ジョークの指導下で2年だなんてうらや―――素晴らしいですね!胸をお借りするつもりで頑張ります、先輩方!」
「ほう、俺の指導では不服と見えるな」
「そ、そんなことは無いんですけどもね」

消太くんにがしりと頭を掴まれ、三奈ちゃんに放り投げられた。
待ってあまりにも乱暴。
ナイスキャッチしてくれた三奈ちゃんは「あんたそんなキャラだっけ」と首を傾げた。
ごめんね!テンション上がっちゃった!!

「いやいや、僕らこそ胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ。俺は真堂、よろしくね」

な、なんか見た目と心の色があってない人だな。
心が何となく透けて見える私は物間に近いものを感じて一歩引いた。

「中でも神野事件を中心で経験した爆豪くん。君は特別に強い心を持っている」

す、と差し出された手を爆豪は振り払った。
またこいつは……と思ったものの、爆豪は存外冷静でじっと真堂を睨みつけている。
あれ、意外だ。

「フかしてんじゃねぇ。セリフと面があってねぇんだよ」

感じ取っていたんだ。
爆豪がそういうということは私の勘違いというわけでもなさそうだ。
真堂を見て、少しだけ目を細める。
うん、黒くはないけど、それに近い色が混ざってる。
悪いやつじゃないんだけど、物間タイプの人間。
切島がフォローに入っていたが、爆豪は相変わらずの目つきの悪さで傑物を睨んでいた。
気持ちは分かるけど別に今から敵対しなくても良いのでは……。

「おい、コスチュームに着替えてから説明会だぞ。時間を無駄にするな」
「はい!」

消太くんの声に皆で返事をして会場の方へと移動する。
なんか、結構見られてるな。
さっさと先に行ってしまう爆豪に続くように列をなして更衣室へと向かうが、やはり見られている。
最初は体育祭や神野の一件のせいで顔が割れているからかと思ったが、この感じ、少し違う。
これを皆に言うべきか逡巡し、口を閉じた。
消太くんが言わないのであれば、それなりの理由があるはずだ。
更衣室でヒーロースーツに着替えながら、決意を固める。
人知れずぐっと握った拳を、三奈ちゃんに握られた。

「がんばろーね」

緊張と焦燥、そして、奮い起つような強い決意の心。
三奈ちゃんにしっかり頷いて、笑顔を見せた。

「うん!」
「よっし!じゃあ行こうか!!」



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