Walk.11



「ハッ!」

疲れと楽しすぎで寝てた!
机から顔を上げるとひざしくんも机に突っ伏して寝ていた。
かけられていたブランケットをひざしくんにかけてあげる。
コーラの後ビール飲んでたからかな。

「お兄ちゃん、ベッドで寝よ?」
「んぐ、コトハ……よくやった……」

寝ぼけたまま私を探りあてて頭を撫でた。
ああ、幸せだなぁ。
白い心だけで羊を作ってひざしくんを乗せた。
いつもなら白黒混ぜてバランスを取るけれど、なぜか今は白だけで動かせた。
幸せ、だからかな。
ひざしくんをベッドに寝かせて、テーブルの上を少し片付ける。
洗い物は明日の朝でいいか。
水の音でひざしくんを起こすのも忍びないのでそっと部屋を抜け出した。
そういえば消太くんは先に部屋に戻ったのかな?
消太くんの部屋に寄ってから戻ろうかそれとも直で自分の部屋に戻るか悩みながら歩いていると、医務室の方から物音が聞こえた。
誰か怪我したのかな。
手当てを手伝おうかと医務室に向かえば、中から消太くんの声がした。

「えっ!?ちょっと消太くん!?どこ怪我し──」

医務室に駆け込んで、しまったと察する。
咄嗟に口を押さえてしまったのも悪手だった。
爆豪と、オールマイト、そして、唯一事情を知らない緑谷。

「ね、寝ぼけてました!すみません!お邪魔しました!」

ボロボロの緑谷たちとオールマイト、消太くんという謎の組み合わせだが、まあ、大方2人が何かやらかしたのだろう。
そそくさと医務室から出て自室に走る。
やってしまった。
私と消太くんが保護者と被保護者というのは、正直バレても良いと思っている。
が、私のこの感情が、不要なやましさを抱かせてしまうかもしれない。
ひざしくんにすら言っていない。
私と消太くんだけの、秘密。
う、わ、なんか、なんか……!
すっごいいけないことしてるのような気が……!!
私はベッドに飛び込んで枕に顔を伏せた。

「う、うぅ……」

ヒーローになるまで、この気持ちは封印したほうがいいのかもしれない。
じゃなきゃ私。

「やってくれたな」

ぽす、と力の抜けた手刀が私の頭に振ってきた。
入ってきたの気づかなかった。
ベッドに座ったのか、僅かに軋む音がした。

「ご、ごめんなさい……」

私は真っ赤になっている顔を見られたくなくて枕に顔を伏せたまま応えた。

「まあいいよ。俺はお前が可愛いからって採点を甘くしたりはしてないしな。疚しいことはない」
「や、やましいよ!なんか!だって、お兄ちゃんと妹じゃないんだよ!?」
「うん。旦那と嫁だな」
「そこまでは言ってないけど!!?」
「卒業したらそうなるだろ」
「そうなの!?」
「まあ、すぐって訳にはいかんがな」

消太くんの影が枕に落ちた。
え、と思って振り返れば、額にキスされる。
む、むり、ほんとうにむり……!

「どきどきで、死ぬ……」
「死なないよ。俺が保護者だっていうのはお前の判断で言っていい。元々、管理課とその他諸々の関係で秘密にしてた面が大きいからな」
「……うん、でも、秘密にしとく……」
「分かった。じゃあ、おやすみ」

わしわしと頭を撫でて去っていく消太くんの腕を掴んで引き留めた。

「ん?」
「お、おやすみ……」

この心は、一度封じ込めないと。
じゃないと私、保たない。
心を落ち着けて、灰のベールで包み込んでゆく。
光り輝く感情が、溢れて漏れ出さないように厚くカバーをかけて、鎖をかけて閉じ込める。

「ん」

また、額に消太くんの薄い唇がふれた感触がした。
封じ込めようとした鎖が側から壊れていく。



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