Walk.12
「えっ、謹慎!?」
昨日ちらりと見た傷だらけの2人がまさか謹慎とは。
「喧嘩したんだって」
「ああ……なんとなく理解……」
「ねー、馬鹿だよねぇ」
私は苦笑して肩を竦めた。
まあ、雨降って地固まるじゃないけど、一度ぶつかり合った方が上手くいくのかもしれない。
鬱屈した爆豪の黒い扉を思い出して少しもやりとしたが、私が関わることでもないだろうと飲み込んだ。
始業式へと向かう道すがら、物間くんが絡んできた。
こちらも相変わらずだなぁと笑う。
「一佳ちゃんたちも合格してたんだね、おめでとう」
「そっちこそ、おめでと」
B組、久しぶりだ。
林間合宿みたいに、また合同訓練もあるみたいだし今から楽しみだなぁ。
「じゃ、またね、コトハ」
「うん」
物間を引きずりながら一足先にグラウンドへと向かうB組女子たちに手を振りかえした。
「あ、体育祭で緑谷と戦った人」
「ん?」
響香ちゃんの言葉に振り返ると、普通科の列がつっかえていた。
ああ、あの先頭の人か。
ふーん、とあまり興味なく頷きを返した。
グラウンドに出ると校長先生と教師陣が列の前にいた。
な、なんかハウンドドッグ先生唸ってない?
みんなが列に並んで静かになるのを少し待ってから、校長先生が登壇した。
それからはびっくりするほど長い演説が始まった。
私は一番後ろなので誰からも見えないだろうと小さくあくびをする。
百ちゃんの髪の毛サラサラだなぁ。
ぼんやりと眺めていれば、私の髪を切った時のことを思い出した。
そうだ、決めたんだ。
あの時、ヒーローになるのだと。
そして、もう一つ決めた。
ちら、と消太くんを見た。
この左腕に誓った。
未だ私の中に残る、敗北の証。
消太くんの割れたゴーグル。
新学期からも、気合を入れていかなきゃ。
******
「さっき始業式でお話に出てた『ヒーローインターン』ってどういうものか聞かせてもらえないかしら」
ん!?
そ、そんな話してたっけ!?
バッと顔を上げたからか、焦凍くんが振り返った。
「聞いてなかったのか?」
「しーっ!」
消太くんに怒られるからそんなあからさまに聞かないで!
梅雨ちゃんの言葉に続くように、百ちゃんが重ねて聞いた。
み、みんなよくあの長い話を真面目に聞いてたな……。
私がぼんやりしすぎなのか?
「平たく言うと、校外でのヒーロー活動。以前行った職場体験の本格版だ」
なるほど……仮免とったから、公的にヒーロー活動ができるようになったのか。
「体育祭の頑張りはなんだったんですか!!?」
珍しいお茶子ちゃんの叫びにびっくりしてそちらを見た。
麗かじゃない。
「校外活動は体育祭で得た指名をコネクションとして使うんだ。これは授業の一環ではなく生徒の任意で行う活動だ」
任意……。
でも、参加しない通りはない。
使命をコネとして、と聞いて真っ先に思い出したのはシャチョーだ。
よし、インターンの話が本格化したら電話してみよう!
「それと久地楽、悪いが昼休みにちょっと顔出してくれ」
「ん?あ、はーい」
なんかしたっけ、と思い返せば思い当たる節はたくさんあった。
え、こわい。
お、怒られる気しかしない。
一体何について怒られるのかと2限終わるまで嫌な意味でドキドキしていた。
「やーい呼び出し呼び出しー!」
「やめてよー!思い当たる節しかないんだからぁ……」
三奈ちゃんが指を刺して笑うが、正直私が呼ばれるなら三奈ちゃんも呼ばれるべきだと思う。
私がやらかしてることは大体三奈ちゃんもやらかしてるんだから。
期末補習組の名は伊達じゃない。
「一緒に行こうか」
「行かない!」
体の前でバツを作る三奈ちゃんの腕をとってにっこり微笑む。
「ひっ!人攫い!!」
「私が怒られるってことは、三奈ちゃんも怒られるんだよ」
「なにそれ!おかしいよ!!」
「やだよぉ!1人で行きたくないよぉ!絶対怒られるもん!!」
「怒られてきなよぉ!」
「おい、廊下で騒ぐなよ」
「ぴえっ」
まるで消太くんのような口ぶりに、私と三奈ちゃんは本能的に縮み上がった。
けど、別人だ。
声が違った。
「あれ、なんだっけ、えと、緑谷と戦った人」
「シンソーだよ」
「心操だ」
「あ、うん、久地楽コトハ」
「久地楽さん、相澤先生に呼ばれてるって聞いたけど」
「えっ」
それはそうなんだけど、何で心操くんが知ってるんだ?
三奈ちゃんと首を傾げれば、心操くんは少し言いづらそうに口籠もって、口を開いた。
「俺もなんだ」
「えっ」
意外だ。
って言えるほど心操くんのことは知らないけど。
普通科なのに消太くんに呼ばれるなんて、よっぽど素行が悪いのかな。
三奈ちゃんはにっこり笑って私の手を引き剥がすとそのまま心操くんになすりつけた。
「んじゃ!あとは若いお二人で!」
「んなぁあああ!?裏切り者ぉおお!」
「さっさと行こうよ」
「はい……」
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