Walk.16
「ギャングオルカから、話は聞いている。インターンの件だが、私は君を歓迎する。こんな話の後で、すぐに返答はできないだろうから焦らず考えてほしい。本当に、今日は私の個人的な私情で呼び出して、すまなかった」
ナイトアイと別れて、私は消太くんと街を歩いていた。
雄英に戻ろうと言わないのは、消太くんの優しさだろう。
「黙ってて、悪かった」
「いいよ、聞かなかったし。正直、まだあんまり聞きたくない」
「そっか」
少し黙って、平日の昼間の街を歩く。
人は多くない。
消太くんの手を握ってみると、案外振り払われなかった。
「どう、思う?」
「インターンか?」
「うん」
「好きなとこ行っていいよ。ナイトアイ事務所である必要はない。体育祭で勝ち取った指名は、他にもまだあるだろ」
「……うん」
私の予知は、私に起こる未来を予知する。
予知は、変えられるけれど、それが、幸せな未来へと変わるとは、限らない。
「予知を変えれば、より悪い未来が来る」
爆豪との戦いで、私は重傷を負った。
ちらりと見えた未来で、私は爆豪に勝っていたと思う。
確かではなかったから、思い返そうともしなかったけれど。
爆豪が変えた未来は私にとっても爆豪にとっても、悪い未来だった。
ふと立ち止まった消太くんは、辛そうに瞬きをした。
「消太くん……?」
「いいや、何でもない」
「何でもないって顔じゃないよ。お母さんの予知のこと?」
「……ああ」
消太くんは一拍おいて頷いた。
私に言いたくなかったことが、まだあるのだろう。
手を握って、私は大丈夫だからと視線を合わせた。
珍しく消太くんの目が泳ぐ。
「言っていいよ、聞きたくないって言ったけど、聞きたい」
ゆっくりと息を吐いて、消太くんは私と視線を合わしなおした。
「……お前の、未来を、お母さんの予知を変えたのは……お前の、お父さんだ……」
血を吐くように、泣きそうに、消太くんは私の肩に手を置いて言った。
予知を変えたって、お父さんは、お母さんと一緒に死んじゃったのに……なんで。
消太くんは言うべきかもう一度だけ悩んで、一つだけ涙を落とした。
「予知では、お父さんは亡くなっていなかった」
ああ……未来は、変えるべきじゃなかった。
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