Walk.19



「あ、あれ!?緑谷!?通形先輩も!?」
「久地楽さん!?」
「サーが言っていたもう一人って君のことだったんだね!」

ナイトアイの事務所で見知った顔と出会って驚いた。
てっきり自分一人だと思っていたから、まさか雄英生がいるなんて。

「久地楽は私が指名して呼んだ」
「えっ!?凄い!」
「い、いや、実力というかご縁というか諸事情で……」

なんか身内のコネみたいでちょっと抵抗あるなぁ。
緑谷の純粋な尊敬の眼差しが痛い。
パトロールに出かけた通形先輩と緑谷を見送って、書類の提出やら記入やらがある私はナイトアイの事務室に残った。

「先日はすまなかったな。君の家庭に土足で踏み入るような真似をして」
「いえ、大丈夫です。私も知らなかったことを、知れたので」
「そうか……お詫びじゃないが、君にこれを渡そうと思っていたんだ」

ナイトアイは一枚の写真を取り出した。
まさか。

「大学の時の写真だ。三崎さんと、久地楽くんが写っている」

私の両親だ。
ナイトアイから写真を受け取り、すぐに分かった。
私が持っている写真より幾分若い頃の写真だ。
思い起こされる、小さい頃の記憶。
白い心が漏れ出した。
幸せだった。
守り切り開いてくれた今も、幸せだった。

「ありがとうございます……大切にします」


******


死穢八斎會。
いわゆるヤクザというやつだ。
大昔に大解体されて、今はほとんどないはずだが、件の組織はまだ燻っているらしい。
それにしても。

「凄いエンカウント率だね」
「ほ、本当にね……」

若頭の治崎とエンカウントした緑谷・通形先輩が事務所に戻ってきた。
ナイトアイとバブルガールはパトロールに向かってしまったので、本来はそちらについて行くはずだった私も先輩たちとお茶している。

「あの子……震えてました」

緑谷は手元に視線を落として、悔しそうにつぶやいた。

「……うん、でも、あの場では助けられなかったんだよね」
「はい……」

緑谷も通形先輩も俯いてお通夜モードだ。
う、でも、私は緑谷に心を渡せないしなぁ。
私がこの雰囲気をどうにかすべきかと悩んでいると、通形先輩がバッと顔を上げた。

「ま!考えていても仕方がないよね!サーもこのままにしておくわけじゃないから、俺たちは今できることをしようね!」
「はい……」
「そ、そうですね!緑谷、モヤモヤすんのも分かるけど、いつか治崎をぶん殴れるから、今は一旦切り替えよ!」
「はは、流石にぶん殴れはしないんだよね!」

通形先輩の底抜けに明るい雰囲気に思わず笑った。
つられて緑谷も顔を上げた。
やっぱり笑顔のヒーローってかっこいいよなぁ。
通形先輩にオールマイトの姿を重ねて、消太くんが言っていた『最もトップに近い男』という表現に内心で頷く。
強いだけじゃない。
もっと根幹の部分、眩しいほどの心に目を細めた。



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