Walk.24
「ナイトアイ、大丈夫ですか」
「ああ。心配をかけた」
会議が終わり、部屋から人が出ていったのを見計らって駆け寄った。
悲しみの黒い心を少しだけ盗んで、白い心を渡す。
思い詰めた様子に、言葉が出ない。
「もういい、ありがとう。君も行きなさい」
「はい……あの、可能性は、ゼロじゃないですから」
私の言葉に、ナイトアイは困ったようにほんの少しだけ笑って頷いた。
無理をしている。
「分かっている。君もイレイザーのことも、信じていないわけじゃない」
私と会議室の扉前で待っている消太くんを、ナイトアイは順番に見て頷いた。
未来を変えられるのかが分からないのだろう。
声を掛けることもできず、私は消太くんに促されて部屋を出た。
沈黙のままエレベーターに乗り込み、一階のエントランスに着く。
「どこもかしこも、通夜でもしてんのか」
雄英生徒が暗い雰囲気でテーブルを囲んでいた。
あ、ずっと消太くんのそばにいてみんなと合流するタイミングを逃していたがまずかっただろうか。
しかし消太くんは気にした様子もなく生徒たちの視線を受けながらテーブルへと近づいていった。
梅雨ちゃんの隣で一つ空いている席に呼ばれてひとまず生徒として座る。
「いやァしかし……今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがな……」
「ええ!?今更なんで!!」
ガタリと立ち上がった切島に、消太くんは連合が関わってくるなら話は別だと端的に伝える。
連合。
左腕を握り、USJの一件を心の底へと沈めた。
あまりにも強い怒りと憎しみを、いまだに私は見つめられずにいる。
もし、もしも、死柄木にあった時、私は冷静でいられるだろうか。
消太くんは「ただなァ」と言葉の最後に逆接をつなげた。
「緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ」
緑谷の前にしゃがみ込み、消太くんは緑谷と視線を合わせる。
「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと、俺は確信してしまった」
正直なところ、1-Aのクラスメイトたちはみんな、緑谷の危うさを知っている。
ヒーローという根幹のためなら、人のためなら、立ち止まれない、立ち止まらない。
神野の時も、きっとそうだった。
「俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう、緑谷」
ぽすりと消太くんの拳が、緑谷の胸に当たる。
「分かったか問題児」
私たちも、消太くんも、緑谷も、きっと心は同じだ。
ヒーローとして、なすべきことをしたい。
消太くんは立ち上がって私たちみんなに声をかけた。
一人の女の子を助けるために。
「前向いていこう」
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