Walk.30



「コトハちゃん!コトハちゃん開けて!!」

お茶子ちゃんの声で、ハッと、我に返る。
白黒まだらな心で作った繭を解いて、私を庇ったナイトアイを見た。
まだ、死んではいない。
けれど、死んでいないだけだ。
頭からは血を流し、腕も、足も、ズタボロで……。

「な、ナイトアイを、病院に……お願い……!」

心の膜で出血を止め、お茶子ちゃんにナイトアイを託した。
今更通路を戻っている暇はない。
行けるとしたら、あの天井から、地上に出るしかない。
あとは、地下に残った人たち……。

「フロッピー、要救助者をここに集めて!まとめてここから上がるわ!」

リューキュウの指示で、梅雨ちゃんが走っていく。
待って、正確な場所を……!
ツバメをとばして位置を伝えた。
梅雨ちゃんが一度振り返って、力強く頷く。

「ケロ!ありがとうハーティ、必ず助けるわ!」


******


「ハーティ!」

消太くんが来てくれた。
よかった、かすり傷だけだ。
後ろにはみんなを連れてきてくれた梅雨ちゃん、天喰先輩に担がれる通形先輩、ロックロック、警官たちがいた。
みんな、生きてる。
地上から何度も激しい戦闘の音が聞こえたけれど、鼓動も、心も途絶えていないから、きっと大丈夫。
一際大きい轟音の後、緑谷がホッと一息ついた感覚が、守るために纏わせた私の心に伝わってくる。
ああ、よかった。
きっと倒したんだ。
その時、エリちゃんの悲鳴が逆流してきた。
な、に!?
消太くんがおぶってくれようとするのを何とか避けて、地面に横たわったまま伝わる心に集中する。
エリちゃんがこんなに恐怖するだなんて、いったい緑谷は何をして──

『いや!止まって!この人が!死んじゃう……!!』

覚えのある感覚。
自分では止められない、個性の暴走。
消太くんが、消太くんだけが止めてくれる!

「う、うぅ……!」
「大人しくしろ。いまリューキュウが上に……」
「エリ、ちゃ、ん……を……!」

消太くんの影から、蛇を呼び出して穴の上へと、とにかく高くぶん投げた。
消太くんなら分かってくれる。
エリちゃんから逆流してくる心の流れが、程なくして止まった。
それと同時に、また心にぽっかりと穴が空いた。
無気力感に全てがどうでも良くなってしまい、皆に纏わせていた心を解いた。
あれ、わたし、なにしてんだ。
なんか、つかれたなぁ。



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