Walk.33



「しょ、消太ぐん、じ、じぬ……」
「心配させんな……もう二度と寝んな……」

病院に駆けつけてくれた消太くんは、明らかに病み上がりの人間にする以上の力で私を締め上げた。
見た目は抱き締めているように見えるかもしれないが、このままだと確実に圧死する!!
川の向こうでお母さんたちが私を指差しながらお腹を抱えて笑っている幻覚が見え始めた時、ようやく力が緩められた。
ほっと息をついて、微かに震える消太くんの背中を宥めるようにぽんぽん、と撫でた。

「二度と寝んなは無理かも」
「ん……」

消太くんの鼓動はいつもよりずっと早く、けれど徐々に落ち着いてきた。
本当に、心配かけてばっかりだ。
守り抜くだけじゃ、足りない。
消太くんが安心して見ていてくれるように、私自身、強くならないと。

「よく、耐えたな」
「……うん、トガの時は、ちょっと押さえられなかったけど」
「それでも、よく耐えた」

一歩ずつ、けれど着実に進んでいる。
消太くんに認められた気がして、嬉しかった。
守れたんだ。
消太くんと目を合わせて、微笑む。

「ただしお前、俺の指示に反いたな」
「えっ……」
「上に戻れって言っただろうが」
「うっ、だ、だって、あの時……」
「だってじゃない。現場でプロの指示を聞けないようじゃヒーローにはふさわしくない。反省しろ」
「……はい」

ぽす、と私の上に乗った手は温かくて、優しかった。

「それとお前、覚悟しとけよ」
「ん?」


******


「ィYEEEEEAAAAHH!!」
「う、うわっ!?」
「お前よォ!!心配かけんなよな!!!」

泣きながら飛びついてきたひざしくんの声量で、鼓膜が破れたんじゃないかと本気で耳に手を当てた。
大丈夫、みたいだ。
あ、あぶ、あぶなっ!
病み上がりの人間の鼓膜破るやついる!?

「しかもここ病院だから!!」

消太くんの覚悟しとけよってこれか!
私を抱きしめたまま耳元で泣き喚くひざしくんを、仕方なく甘んじて受け入れた。
5分くらい経つと、ようやく声量を落として、椅子に座ってくれた。
よく5分もそのテンションもったな。
消太くんなんかその間に一回コンビニに飲み物買いに行って戻ってきたぞ。

「あんましよォ、無茶すんなよ。お兄ちゃんいくつ心臓あっても足りないぞ」
「うん、心配かけてごめん、ひざしくん」
「……で!活躍できたのか?」
「どうかな」

へらりと笑えば、消太くんのチョップが降ってきた。

「謙遜すんな。お前は十分活躍したよ」
「だってよ、コトハ」

嬉しくて、あまりにも嬉しくて、二人のお兄ちゃんを心で包み込んで抱きしめた。
シンクロで繋がった心が、きっと二人にも届いているだろう。

「ありがとう……私、もっと、頑張るから」


- 152 -

*前 | 次#

戻る