Walk.36
「どれかわかんねぇ」
「ん!?」
キッチンの影でひっそりとお茶子ちゃんを撫で撫でしていると、空気を読まない焦凍くんがお皿に白玉を乗せてやってきた。
もー!全くこの子は……!!
「ちょ、ちょっとお餅食べ過ぎちゃったみたいやから外で風浴びてくるね!」
お茶子ちゃんはパッと笑って見せて玄関のほうへと走っていった。
「餅食べ過ぎたら風あたりたくなるのか?」
「焦凍くん……もう少し空気読めるようになろ……がんばろ……」
「わりぃ、邪魔したか」
「うん……まあ、ちょっとね……」
そうか、とお茶子ちゃんが去っていった方を眺める焦凍くんは相変わらずの無表情だ。
「どうかした?」
「ああ……これ、どれがお前の作ったやつだ?」
丸い白玉をお皿に乗せて首を傾げる焦凍くんに私も首を傾げる。
いっぱい作ったから分かんないな。
ってかどれでもそんな変わらんよ。
「ん、んー、この辺?たぶん」
「そうか」
キッチンにまできて聞くことなのかと肩をすくめて、お茶子ちゃんから引き継いだ急須にお湯を入れる。
とりあえず急須に入れて持って行って誰かしら飲みたい人に配ればいいだろう。
「焦凍くんも飲む?」
「おう」
麦茶が入っていた紙コップを一気飲みして差し出してくれた。
別に急がなかったんだけど、まあ、焦凍くんがいいならいいか。
軽く急須を揺らして紙コップに入れてあげれば、焦凍くんは何かを思い出したのか、後ろのポケットから端末を取り出した。
お茶を飲みながら、端末を操作してカメラロールを私に向ける。
「ギャングオルカ」
「ギャングオルカ!!」
「好きだったろ」
「好き!どうしたの!?」
「仮免の補講がギャングオルカだった。許可もらって写真撮ってきた」
「う、うわあ、いいなぁ!シャチョー厳しい?」
「ぶん投げられた」
「だよねぇー!」
いま送る、と何枚か撮ってきてくれたシャチョーの写真を焦凍くんが送ってくれた。
自分の端末に送られてきた写真を保存してお気に入りフォルダに突っ込む。
か、カッコいい!
いつもよりちょっと気を張っている感じが無限にかっこいい。
推せる……。
それにしてもそうか、補講があったからインターンダメだったんだね。
仮免のヴィラン役だけじゃなかったんだなぁとプロテクターのついていないシャチョーの写真を眺めた。
職場体験でお世話になった訓練の日々が思い起こされる。
いやあ、あれは楽しかったなぁ。
うんうんと頷いて急須を片手にエントランスに戻ろうと焦凍くんの背中を押した。
「シャチョーは子供大好きだから、いっぱい投げ飛ばしてもらうといいよ」
「投げ……?」
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