Walk.37



「餅?」
「うん。お餅パーティーしたんだ。これ、みんなから先生たちに」
「何で餅……?」
「この時間に大量の炭水化物……?」

大皿にこんもりと盛られた各種もちもちに先生たちはぱちぱちと目を瞬かせる。
決して余ったわけではない。
決して。

「ありがとう久地楽!A組の奴らにも礼を言っといてくれ!」

ブラキン先生が素直に感動して受け取ってくれた。
うん、本当に余ったわけじゃない。
本当に、本当。
若干の罪悪感があるけど、善意だから。
謎の大量の餅を前に先生たちは困惑していたが、みたらしやらこし餡やらごまあんやらきなこやら、寮で作っておいた各種トッピングを用意すれば、興味が湧いたのかいそいそと集まり始めた。
消太くんはいないみたいだ。
残念。

「オールマイト何がいいですか?取りますよ」
「ありがとう、久地楽さんのおすすめはどれかな?」
「お茶子食べログ一位をとったコチラです。みんなで交代で作ったお餅ですよ。おすすめはあんこですね」
「じゃあそれをいただこうかな」
「はーい」

紙皿にスーパー美味しいお餅と百ちゃんが用意してくれたスーパーお高いあんこも乗っけて渡した。
ちなみにこのあんこはみんなで食べ尽くしたためほぼ残っておらず、先生たちでありつけるのは3人が限度だろう。
あとは普通のお安いあんこだ。
食べ比べをしたらやはりお高い方は舌触りから何から全てが違った。
お茶子ちゃんがスペキャ顔になっていたくらいにはお高い。

「コトハ!俺にもおすすめをplz!!」
「はいはい待ってね」

ひざしくんは砂糖醤油派なのでさっと混ぜてもちもちお餅と別にお皿を渡してあげた。

「サンキューマイシスター!!!」
「シスターじゃないけどね。はい、お箸」

エクトプラズム先生やパワーローダー先生にも配っていると、教師寮の玄関が開いた。

「あっ!消太くん!」
「何やってんだ?」
「もちパ!」
「もちぱ?」
「お餅パーティーだよ!みんなが私の復帰とインターン組のおかえり会を開いてくれたんだ」
「ああ、それのあまりか」

腹パンした。
なんてこと言うんだ!
みんな薄々気づいて何も言わなかったのに!
迷惑そうにお腹を撫でた消太くんは私の手から皿と箸を取ってひざしくんの隣に座った。
絶対そこ座ると思ってたけど仲良しだなぁ。

「どれがうまいの」
「あんこがイチオシ」
「ん」

さっき私の手から奪って行った皿と箸を差し出してきた。
もー、じゃあ最初から大人しく座っててよね。
けどまあ、分かっていたので差し出されるがままに受け取って一番良く出来たお餅に高級餡子を乗せる。
ついでに可愛くできたハート型の白玉が残っていたのでそれも皿に乗せて渡してあげた。

「はい、どーぞ」
「ん」

消太くんは早速お餅を食べると長いこと咀嚼してから飲み込んだ。
え、そんな固くないよね。

「うまい」
「でしょー!」

私もお餅をとって消太くんの隣に座った。
ミッドナイト先生が自分と戦いながらお汁粉を飲んでいる様子を見てくす、と笑う。
確かにこの時間の糖分&炭水化物怖いよね。

「それ、こっちと違うのか?」
「ん?ああ、あんこね。こっちは普通のあんこで、消太くんにあげた方は百ちゃんが用意してくれた高級あんこなんだよ」
「ふーん」
「食べ比べしたい?あげようか?」
「ん」

お餅に餡子を乗っけて差し出すとそのままパクリと全部食べてしまった。
いっ、いっぺんに食べなくても!

「やっぱ高い方がうまいな」

もごもごしながら言う消太くんにそりゃねと頷く。
お腹空いていたのだろうか。
それにしたって、とお茶を手渡そうとすると、消太くんは私の皿にハートの白玉を移して、代わりのように自分のおもちが乗っているお皿を出した。

「ん?」
「こっちの方がうまい」
「ん?」
「うまい方食え」

ちょ、っと、動揺した。
い、イケメン……。
頬袋パンパンでずっともぐもぐしている消太くんの肩に額を乗せる。
急なイケメン摂取に死ぬかと思った。
軽く息は止まったし、何なら心臓も2鼓動分くらい止まった気がする。
ハッとここが教師寮のエントランスだと言うことを思い出して消太くんの肩から顔を上げると、にっこにこの13号先生と目があった。

「たんとお食べ」
「は、はい」

生徒寮で食べてきたからたんとは食べれないんだけど、と恐縮しながらあまり味のわからないお餅に口をつけた。
よかった、13号先生以外には見られていなかった。
肩に頭乗っけるくらい、別に兄妹でもやることのような気がするけど、今更どうにも恥ずかしくなってしまう。
ひざしくんも、見てない……というか、ひざしくんを筆頭とする多くの先生が酒盛りに移行していた。
これだから大人は!
ごくんとお餅を無事に飲み込んだ消太くんも呆れた様子で喧騒を見た。

「消太くんも飲む?」
「いや。これなに?」
「白玉だよ。ハート可愛いでしょ」
「ふーん」
「13号先生飲みます?なんか持ってきますよ」
「いや、僕も大丈夫。ありがとう」

あー僕っ子可愛いな。
お餅食べます?と聞けばこちらには頷いてくれたので取り分けてあげた。

「消太くんもお餅食べる?」
「愛されてますね、先輩」
「ん?」
「ふふ、ハート型。真っ先に先輩に取ってたもんね、久地楽さん」

かあ、と顔が真っ赤に染まったのが鏡を見ずとも分かった。
あ、あからさまにもほどがあった!?

「ち、ちが、うまく、上手くできたから!可愛くて!だから!です!!」
「磯辺焼き」
「感情ゼロか!?」


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