Walk.39



「文化祭があります」

息を呑んで、立ち上がった。

「ガッポォオオオイ!!」

私の大切な人が夏から秋へと変わるにつれ、日に日に芋虫に近づいて行ってるような気がするけど、今はそれも気にならなかった。
黄色い寝袋の芋虫が説明をしながら教壇の端へと捌けて、飯田八百万の学級委員コンビへと主導権を渡した。
それにしても、文化祭かぁ!
楽しみだ!!
何がいいかなぁ!
みんなでやるならなんでも楽しそうだけど!
くる、と焦凍くんが振り向いた。
そして、私の顔を見て満足そうに微笑んだ。
えっ。

「楽しみだな」
「あ、うん」
「やりたいのあるのか?」
「い、いや、まだ何も思いついてない」
「そうか」

焦凍くんは頷いて前に向き直った。
な、何だったんだ今の!
焦凍くんって今までも結構読み取りづらいこと多かったけど最近特に分かんないぞ!!
いや、それより今この流れに乗らなければ!
みんなが次々と手を上げて学祭の出し物としてやりたいことを挙げていく。

「ハイ!水族館!!」
「和やかだ!」

飯田に一言コメントをもらい、百ちゃんが黒板に書いてくれた。
わいのわいのと騒がしい中で、一通りの案が出てきたが、まあ、案の定あまり纏まらなかった。
飯田、君が悪い訳じゃないよ。
しかし、この結果に対して、そこで不穏な空気を醸し出す芋虫は何を思うだろうか。
チャイムがなり、芋虫が消太くんを吐き出した。

「実に非合理的な会だったな。明日の朝までに決めておけ」

ゆらりと立ち上がった消太くんは私たちを一瞥する。
ひえっ!
私と三奈ちゃんの声が小さく漏れた。

「決まらなかった場合、公開座学にする」
「コウカイザガク!!!」

だめだ!絶対にだめだ!!
今日中に何としてでも決めなければ。
クラスの気持ちが一つになった。


******


「ほ、補習だぁ……三奈ちゃん……!」
「コトハの分も私がマジで楽しいやつに決めとくから!頑張ってこい!」
「お願いします……!!」

息巻いていたのに話し合いに参加できないなんて……!
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんに引きずられて泣く泣く補習へと向かった。
仕方ない、あとは三奈ちゃんに任せよう。
補習室ってやな響きだな。

「席決まってる?」
「決まってないわ。よかったらお隣どうぞ」
「わーい、ありがとー!」

梅雨ちゃんの隣に座って教科書とノートを開く。
座学は得意だから問題ないとは思うけど、最近レベルが高くなってきているので油断できない。
特にエクトプラズム先生の授業が時々やばい。

「久地楽、号令」

入ってくるなり教壇に立つ前に言うものだから一瞬反応が遅れた。

「あ、きりーつ、れーい、よろしくお願いしまーす」
「伸ばすな。はい、よろしくお願いします。着席。補習の前に少しいいか」

消太くんは前置きをすると、エリちゃんのことだ、と現状について話し始めた。
いまだ病院で経過観察をしているエリちゃんが、私と緑谷、通形先輩に会いたいと言っているらしい。
どうする、と聞かれて、私と緑谷は一も二もなく、行きますと答えた。
ほぼ毎日消太くんがエリちゃんのところへ行っているのは知っているけれど、かと言ってエリちゃんの詳細な様子が分かるわけでもないから。
会えるなら、会いたい。



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