Step.16



一週間後、日曜日。
非番の消太くんは今日も今日とて爆睡なうだ。
朝ごはんをどうしようか考えながら、マンションの下に降りて郵送物を確認する。
一つだけ投函されていた封筒を持ち、エレベーターに乗って数秒固まった。

「雄英からだ……!」

家に戻ってからなんとなく、こっそりと消太くんの部屋を伺う。
まだ起きていない。
落ちては、いないと思うけれど、確固たる自信を持ってそう言えるわけでは無いから、出来れば消太くんが起きる前に見ておきたい。
そっと音を立てないように自室にこもって封筒を開けた。
リング型の投影機を机の上に置いて、いつの間にか現れていた白を抱きしめ、黒に抱きしめられる形でベッドに座った。

『やあ!雄英校長の根津だよ!早速だけど、久地楽コトハさん、君にヒーロー科合格を言い渡します!』
「えっ!そんなあっさり!?」
「大丈夫か、この人……人?」
「やったー!お姉ちゃんヒーローだ!」
「まだだけどね」

根津校長の後ろにあるモニターに、おそらく順位表のようなものが映った。
ヴィランPに、救助P……?
ハッと思いいたり、もしかして、それなら、と名前を辿ってヴィランPが0にもかかわらず救助Pが60もあり、8位にランクインしている緑谷出久の名前に彼だと確信する。
それに、表の中にお茶子ちゃんの名前も見つけてほっと胸をなでおろした。

『見てわかる通り、採点には2つのポイントがあったのさ!純粋な戦闘能力を計るヴィランPに加え、ヒーローとして避けられない人を助けるための救助Pがね!君はそのどちらもまんべんなく満たしている』

あ、と思わず声が漏れた。
そうだ、一番に確認するのは、私の名前じゃないか。

『ヴィランP32、救助P45。実技は計77Pで爆豪勝己くんと並んで首席さ!相澤くんもすごい秘蔵っ子を隠していたもんだね!おめでとう!』

首席、だけど。

「バクゴーって誰だろうね」

救助Pが0ってことは、ただひたすらに戦闘能力が高い人なのだろう。
白が首を傾げるが、つっこむところはそこじゃない。
だって、いま、相澤くんって。

『さて、ここからは少しばかりプライベートな話になることを許してほしいんだ。なぜなら君の保護者である相澤くんは――』

心臓が止まるかと思った。
いや、実際に止まったのかもしれない。
無意識に息を吸いこみ、止めていたのを黒に撫でられて意識的に吐きだす。

「うそ……」
『そう、雄英の教師なんだからね』
『俺もだぜ!コトハ!』

画面外から消太くんを押し込むようにひざしくんが校長の隣にならんだ。

「ひざしお兄ちゃんだ!」

消太くんはうるさそうな顔をしているが、ひざしくんの腕を避けるだけで画面外に出る様子はない。

『イェエエイ!おめでとーう!!特にあの鯨がサイコーだったぜ!!』
『……よくやった』
「こ、幸福の暴力」

白い感情が渦巻いては卵に入っていった。
悶える私とは対照的に嬉々として映像に手を振る白をなだめながら、今までのことを思い起こす。
つまり、ひざしくんがMCをしていたのは外部講師というわけでは無くて、本当に教師だったんだ。
それに、消太くんが手伝わないって言った本当の意味も。

『家族が雄英にいるからって気を揉む必要はないよ、君は自分の力で、首席を取ったんだ』

校長は居住まいを正してにっこり笑った。

『これから幾多の困難が君を待ち受けるだろう。けどね、そんな時こそ、雄英の校訓を思い出してほしいのさ!PLUS ULTRA、更に向こうへという意味さ!』

校長はもう一度言おう、と言葉を続けた。

『合格おめでとう』

投影が終わり、3秒ほどぽかんと虚空を見つめていた私たちは、すぐに部屋を飛び出して、消太くんの部屋に突撃した。

「消太くん!!」

勢いのままベッドに滑り込み、うつぶせで携帯に手を伸ばしたまま力尽きている様子の消太くんの右横に陣取る。
黒は左に、白は消太くんの背中に飛び乗った。

「白、それはだめ」

私と黒が黒い蛇で消太くんに重みがかからないように白を持ち上げた。

「しょーたおにいちゃーん!!」
「うるさい……」
「お兄ちゃん起きてー」
「消太くーん」

消太くんはイライラしているのかうるさそうに身じろぎすると仰向けになって、蛇につかまっている白を胸の上に下ろした。
左右にいる私たちの頭を撫でて、目を閉じたまま祝いの言葉を述べた。

「おめでとう」
「んんん……幸せすぎて辛い……!」
「呼吸が苦しい……!」
「わーい!!ありがとうしょうーたおにいちゃん!」

精神年齢最低が一番上手に感情を処理してるってどういうことだ。
もういい、今日は昼まで寝よう。ここで。
昼、完全に目覚めた消太くんは現状が理解できずに二度寝することを決めるのだった。



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