Walk.46


「忘れてた……私、白い心だけだと安定して動かせない」
「は?」
「はあ?」
「ごめんなさい!!鯨みたいに半々くらい、いや、せめて三分の一くらい黒も入れれば……」
「ダメだよ!黒い心混ぜたら冷めちゃうでしょ!」
「そーだそーだ!今ここで限界を超えろ!プルスウルトラー!」

三奈ちゃんと透ちゃんが詰め寄って来る。
うう、面目ない。
試しに白い心だけで鳥を作って羽ばたかせるが、数秒もすれば端から形が崩れていく。
もっと集中してやってみる?
目を閉じて、鳥に私そのものを重ねるようにして形を作る。
両翼は空を羽ばたき、どこでも好きなところへ行けるように。
鳥のイメージを深くして、より精密な白い鳥を作る。
目をひらけば、俯く私が見えた。
あれ、これって、もしかして。
バサリと翼を広げてみんなの頭上を飛んでみる。
体は崩れない。

「飛んでるよ!コトハ!とんで……コトハ!?」

私の眼下で、私の体が崩れ落ちた。
私に抱きついた三奈ちゃんがハッと私の息と鼓動を確認した。
流石に動いてると思うけど……。

「コトハ!ヤバい!葉隠!切島と相澤先生呼んできて!!呼吸と脈拍あるけど意識ないって!!」
「わ、分かった!」

ま、待って待って!!
私は慌てて三奈ちゃんの頭に乗ってぴいぴいと鳴いた。
声帯!声帯を作らないと!

「み、な!」
「コトハ!?」
「みなちゃ、だいじ、ぶ!」
「葉隠待った!!」
「とお、ちゃ、まって!」

三奈ちゃんの頭の上で叫ぶと、透ちゃんが戻ってきて鳥の体を両手で抱き上げ、透明の頬に頬擦りされた。
三奈ちゃんは私の本体をソファに寝かせて回復体位にした。
わお冷静。

「うわあああん!コトハちゃん!ごめんー!頑張らなくていいから死なないでー!!」
「しんで、ない!」
「コトハ大丈夫なの?林間合宿の時みたいな感じじゃない?」
「だいじょうぶ!たぶん、すぐもどれる!」

私は水面から顔を上げるイメージでゆっくりと心を鳥から離した。
鳥が弾けたのが何となく感じた。
目をゆっくりと開く。

「コトハ!」
「うわ!びっくりした!」
「こっちのセリフ!!急に倒れんなバカ!また心臓止まったかと思った……」
「ご、ごめん、林間合宿の時とは違うから大丈夫。なんか、出来そうなんだ」

三奈ちゃんと透ちゃんに謝って、もう一度白い鳥を作った。
心配そうに見る二人に大丈夫と重ねて言い、鳥にシンクロする。
さっきは集中しすぎて100%近いシンクロをしてしまったけれど、意図的にシンクロしようと思えばパーセンテージはコントロールできる。
他人とのシンクロよりずっと楽だが、逆に引っ張られる。
体が崩れないギリギリで、ようやく鳥が私の手から離れてもそのままの形で動かせるようになった。

「コトハ?」
「ん、んん……動かせる、けど、動けないな……」
「体は大丈夫そう?」
「うん、全く問題ない!」

三奈ちゃんたちはようやく安心した様子でへにゃりと笑った。
広範囲に星屑を散らせるように鳥を弾けさせれば意識が私自身に戻って来る。
実用できそう!
動けないのは問題だけど、これなら索敵もできる。

「コトハ、これやったあとってすぐ動ける?」
「うーん、たぶん。感覚さえ慣れればって感じかな」
「でも出してる間は動けないんだもんね」

頭を悩ませる三奈ちゃんと透ちゃんの間で申し訳なく思いながらも、自分の新しい可能性に少なからず胸が高鳴った。

「うーん!緑谷に引き続き、コトハもクビ!」
「ぅえっ!?」



- 165 -

*前 | 次#

戻る