Walk.51



「……校長、俺捕まらないですか」

両隣を私と三奈ちゃんに挟まれ、珍しく寝袋ではなく布団に潜る消太くんはハンズアップ状態で校長を見た。
その様子を写真に撮った校長は大丈夫さ!と頷いた。
体育館の端っこでお布団にくるまろうとした消太くんの両隣に私たちが突撃したので流石に捕まらないと思う。
その写真が流出したら炎上するとは思うけど。

「ねぇ!先生の恋バナしよーよ!付き合ってる人いるんですか!?」
「さあな」
「好きなタイプは?」
「寝ろ」
「じゃあ歴代彼女のタイプは!?」

私と三奈ちゃんで畳み掛けるように聞けば、なんでお前がそっち側なんだ、と睨まれた。
だって私も気になる。
ねえねえ、と両サイドに詰められた消太くんは耐えかねたのかプロヒーローの機動力で私たちの間から抜け出した。

「あっ!逃げた!」
「お前らもあっち混ざってこい」

私たちの布団を掴むとなぜかひざしくんが主催する女子会のところまで引きずっていった。
代わりにひざしくんが連れて行かれた。
うん、ひざしくんはなんでいるの。
ちなみに峰田は早々に縛られて飯田の横にそっと置かれている。
自業自得だ。
同じ姿でひざしくんが消太くんの横に転がされる。
ちなみにオールマイトは男子に囲まれて男子会の中心にいた。

「おかえりー」
「ただいま」

ちょうどお茶子ちゃんの隣だったので、お布団に潜り込んでお泊まり会だね、と笑った。
お茶子ちゃんは一瞬涙を堪える顔をして、ちょっとだけ下手くそに、感慨深そうに微笑んだ。
ああ、そんなつもりじゃなかったのに。
心の底から安堵したような、そんな表情に、私も涙を堪えた。

「やっとだね」
「うん……お待たせ」

ぎゅ、とどちらともなく手を握る。
伝わる心に、私からも心を返した。
私は幸せ者だ。


******


「俺も入っていいか」
「うわあいつ行きやがった!」
「すげーな……さすが天然記念物……」

焦凍くんが自分のお布団を抱えて女子会にやってきた。
背後の男子うるさいけど確かにとんでもない勇気だ。
勇気を讃えて、というわけではないけれど百ちゃんが快諾して円を広げた。

「そっちの男子もおいでよ!明日休みだし今日はだべろーよ!」

三奈ちゃんの声に、そわそわしていた男子たちが照れながらお布団を持ってきた。
爆豪も切島に引きずられながらやってくる。
仲良いな。
それにしても大所帯だ。
林間合宿の時は男女部屋が別だったから、こういうのも楽しい。
流石に男女隣は、と苦言を呈した委員長に従い、布団群が円形を崩して二列で並んだ。

「男女比!」

14対7なので明らかに男子列の方が長い。
まあ知ってた。
憤慨した峰田は下心満載で女子列の布団に潜り込もうとしてお兄ちゃんズに連れて行かれた。

「コトハ」
「ん?」

正面にお布団敷いた焦凍くんがそっと手を差し出したので、犬のようにお手を求められているのかと首を傾げつつ手を乗せた。
すると焦凍くんは嬉しそうに微笑んで私の手を握った。
可愛いやつめ。
空いている左手でおめでたい髪色をかき混ぜてあげれば、そのまますっと眠りについた。
ね、寝た!?
驚いて隣のお茶子ちゃんを振り向けば、赤ちゃんみたいやね、とこれまた可愛い感想をいただいた。

「焦凍くんは、赤ちゃんだった……?」
「仲良しだね」
「まあ、幼馴染だしね」
「爆豪くんとデクくんみたいな幼馴染もいるから余計仲良しさんに見えるよ」
「は、はは、僕たちはね……」

お茶子ちゃんの正面の緑谷が苦笑する。
私はお茶子ちゃんと緑谷の進捗が気になりますけどね!
言葉には出さず、内心でにっこりとした。

「爆豪って昔からあんな感じ?」
「うん、かっちゃんはあんまり変わってないよ。ガキ大将って感じ」
「うーん、想像に難くない」
「分かるなぁ。轟くんは?昔からクールなん?」
「昔からクールというか天然でマイペースだったけど、いまよりもうちょっと可愛げがあったよ。今も可愛いけどね」

私の手を握ってスヤスヤと眠る焦凍くんが可愛くて撫でた。
お母さんや……と隣でお茶子ちゃんが呟く。
お母さんじゃないです。
お茶子ちゃん私にお母さんを感じすぎでは?
よしよしとお茶子ちゃんも撫でてあげれば、へら、と笑って枕に頭をつけた。

「んー、眠くなってきた」
「寝なよ、今日は色々頑張ったもんね」
「コトハちゃん……おやすみ……デクくんも……」
「うん、おやすみ」

私もそろそろ寝ようかな。
いつもよりちょっと早いけど、今日は流石に疲れたし。
いまだに焦凍くんに捕まったままの右手をそっと引き抜こうとして動かないことに気づいた。
あれ、抜けない……?



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