Walk.55



「近いうちにまた会えるどころか!!」

先輩たちに囲まれるエリちゃんを見て驚く緑谷に苦笑しつつ、教師寮にやって来たA組に手を振った。
エリちゃん救出のメンバーだ。

「ちょっと話してくる」
「うん」

私の肩をポンと叩いて消太くんは通形先輩とA組を連れて寮の外に出た。
病院から出てからエリちゃんは私の部屋の隣に引っ越して来た。
授業のある時は通形先輩が、授業のない時は私と消太くんが見ているけれど、暴走を起こしたとは思えないほど、最近はとても落ち着いている。
まあ、それをいうなら私も同じ立場なのだけれど。
波動先輩にツインテールにしてもらったエリちゃんは私の方を振り向いて感想を待っている。

「か、かわいい……」

最近もう私の方を向けば可愛いと言われると認識しているのではないだろうか。
可愛いから漏れるように出てしまうのだけれど、そろそろエリちゃんが自分の名前をかわいいだと誤認してもおかしくない。

「可愛いって!やったねエリちゃん」
「あ、ありがとう……」

波動先輩の手を握って髪を縛ってくれたお礼を言うエリちゃんに私はにっこり微笑んだ。
かわいい。
ちゃんとお礼言えていい子だ。

「ありがとう」

私にもお礼を言ってくれたエリちゃんの尊さにソファから転がり落ちる。
か、かわいい。

「おい、話終わったからお前も寮に行きなさい」
「あっ!プッシーキャッツ!エリちゃん私ちょっと出てくるね!先輩方よろしくお願いします!」
「いってらっしゃい。ほら、エリちゃんも」
「い、てらっしゃい?」
「行ってきます!」

通形先輩に促されて手を振ってくれたエリちゃんに微笑み、手を振りかえす。
けれど時間もないのですぐに靴を履いて走った。
教師寮とA組の寮はそれなりに遠い。
寮に駆け込んだときには既に靴がいくつか玄関に並んでいた。

「ワイルド・ワイルド……」
「プッシーキャッツ!」

ちょうど決めポーズの瞬間だったので、洸汰くんをライオンキングの如く掲げて真ん中後ろで参加した。
ハッと我に返った洸汰くんが驚きの硬直から復活する。

「おろせ!」
「ご、ごめん咄嗟に……!」

流されてうっかりポーズを決めてしまう洸汰くんも大変可愛い。
顔を真っ赤にして照れる洸汰くんにもう一度謝ってみんなのところへ混ざった。

「にくきゅーまんじゅう!」

お土産の肉球まんじゅうを掲げる女子たちに苦笑しつつプッシーキャッツにお茶とコーヒーどちらがいいかと聞くと、マンダレイが首を振った。

「ああ、ごめんね、お構いなく!挨拶に来ただけなのよ」
「挨拶?」
「復帰のね」

ハッとA組のみんなと顔を合わせてラグドールを見た。
復帰、って、プッシーキャッツ4人全員揃いで?
でもラグドールの個性はまだ……。

「ラグドール、戻ったんですか?個性を奪われての活動見合わせだったんじゃ……」
「戻ってないよ!アチキは事務仕事で3人をサポートしていくの!OLキャッツ!」

タルタロスに収監されたというオールフォーワン。
まだ奴に奪われた個性は戻っていない。
私は直接相対してもいないし、神野の件は色々とあったせいであまり情報を得られていなかったが、それでも知っている、最悪の敵。
ぞわりと鳥肌を立てた私に気づいたのか、ラグドールはにっこり微笑んで私の手を握って心配ないと白い心を渡してくれた。
きっと、辛いはずなのに。

「ヒーロービルボード下半期、私たち411位だったんだ」
「全く活動してなかったのにも拘らず3桁ってどゆこと!」
「待ってくれている人がいる」
「立ち止まってなんかいられにゃい!」

個性を、力を奪われてなお不屈の炎が如くきらりと輝くヒーローたちに、私たちが目指す先を見た。
だからこそ、たくさんのヒーローたちを踏み躙ったヴィランを、私は許せない。
未来に注ぐ美しい光かそれとも凍てつくほど低温の悍ましい黒か、どちらか分からぬ炎が私を焼いた。



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