Walk.57
2日後。
エンデヴァーが九州から帰ってきた。
冬美さんから連絡をもらった焦凍くんは、すぐに外出許可をとった。
連合の件もあって許可が降りるだろうかと心配していたが、消太くんが頑張ってくれたらしく、焦凍くんから外出許可を受け取る前に、既に話をつけていた。
「行ってくる」
そう言って、焦凍くんは寮を出た。
私について来てほしいと、焦凍くんは言ったが、私の外出許可は降りなかった。
けれどそれを言う必要はないので、上手く誤魔化して家族のことだから、と彼の背中を押した。
大丈夫、もう1人で向き合えるでしょ。
私の言葉に焦凍くんは一度だけぎゅ、と私の手を握って頷いた。
「久地楽さん?」
「ああ、ごめん」
心操くんを踏みつけていた足を退ける。
謝罪がわりに手を差し出せば、心操くんは少しだけ私を心配するような顔でその手を取った。
「どうかしたの」
「友達の、ことがちょっとだけ心配でね」
「……それって轟?」
「あ、そう!すごいよく分かったね」
「有名人だし、今朝もテレビでやってたし。そりゃ、心配だね」
「うん、でも多分大丈夫!ごめんね、続きやろう!」
「よろしく」
心操くんは言うが早いか私から距離を取った。
そして捕縛布を広げる。
ふん、まだまだ甘いな心操くん。
消太くんの捕縛布は怖いけど、君のはまだそれほど精度も力も強くない。
広げた分だけ、捕まりやすくなるよ!
私は開けられた距離を詰め、布を掴んで思い切り引いた。
反射的に力む癖のある心操くんは引きずられ、る、と思った。
が、むしろ布を掴んだ私の腕を巻き取り、そのまま引き寄せられる。
「やるじゃん!」
「まあね」
咄嗟に近くの木を蹴って、引き寄せられながら体勢を整える。
その勢いのまま心操くんに蹴りを振りかぶった。
「大上段。久地楽さん、拳より足が出るタイプだよね」
いつの間にか緩んでいた右手の拘束が、私の蹴りを防いだ。
そしてそのまま私の足を絡めとる。
やば……体勢が、立て直せない!
拘束された右足を軸にぐるりと体を回し、心操くんの手を避ける。
攻撃じゃない。
私を捕まえるつもり?
舐められてる!!
布の硬い部分に力を乗せ、拘束を逃れる。
顔面を地面に叩きつけてやろうとして、迫る布に一旦距離を取った。
「距離、取ったね」
言われて、心操くんの布を警戒したことに遅れて気づいた。
「確かに。ちょっと怖くなって来たかも」
心操くんは嬉しそうに口角を上げた。
「でも!さっきの私を捕まえようとしたでしょ!あの瞬間攻撃の速度だったら私に一発入れられてたのに!捕まえられると思ったの?流石に舐めすぎだよ」
「舐めてない。攻撃なら入るって確信した。だから、捕まえようとした」
するすると布が心操くんの首元に戻っていく。
「俺の、越えるべき壁だから。可能性が低くても、挑戦したかった」
「そっ、か……」
ぞわ、と全身に鳥肌が立つ。
心操くんの心は、いつだって燃えている。
焦がされるように、私の心にも光が燃え移った。
「もう一本、お願いします」
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