Walk.59



「救難信号!」

切島の白とあらかじめ渡しておいた黒い心を使ってドームを張った。

「っしゃあ!行くぜ!」

上鳴が蔓を踏んで連れて行かれた。
梅雨ちゃんと上鳴の作戦通りだ。
その間に心操くんが潜み、私たちとは別に進む。
上鳴の直線放電は鱗の鱗銃によってポインターが外され、的を射れなかったのが遠くに見える。
でも、こっちの手はそれだけじゃない。
蔓の動きが止まった!
心操くんだ。
脅威は取り除かれた。
もう身を隠す必要はない。
配管の隙間から飛び出して切島を守る黒のドームを解いた。

「乗って!!」

ドームの余りを使って切島を乗せる獣を作り、走らせる。
茨ちゃんは梅雨ちゃんが抑えた。
宍田には切島を向かわせた。
あとは……。

「君だけだね、鱗。私、結構タイマン強いよ」

鱗は宍田を茨ちゃんの救出に当てたいようだったが、洗脳を警戒した宍田は話を聞かずに心操くんを追っていってしまった。
強いよ、心操くん。
存在だけで場をかき乱すなんて、そうそうできることじゃない。

「へっ、タイマンで女の子に負けちゃ、面子が立たねぇ、えええ!?」

梅雨ちゃんの舌が鱗を捕まえて私に差し出した。
人数有利あるのに本当にタイマンに持ち込むと思ったのだろうか……ちょっと騙されやすそうで不安になる。
まあ、これは勝負なので。
鱗の肩に触れて心を押しわたす。
あっちは切島も上鳴も向かったし大丈夫でしょ。
一応洗脳が解けてもいいように茨ちゃんも心を渡してダウンさせておく。
一際大きな電気が走ったかと思うと、すぐに戦闘音が止み、土埃の奥から切島たちが宍田を引きずってやって来た。

「おーっす!お待たせー!」
「ケロケロ、みんな無事のようね、よかったわ」
「お疲れー」

みんなでハイタッチしてB組を私の作ったマンタに乗せた。
う、ちょっと重い。
けど引きずるのも可哀想なので少し勿体無いが心を追加した。

「久地楽、ありがとな。あのドームなかったら捕まってたぜ」
「シンクロしててよかったね。ドーム解除してすぐ動いてくれて助かった」
「シンクロつえーよなー、遠隔で個性を使えるなんてすげーわ!」
「んー、まあ、切島としかシンクロしたことないし現場では使えないけどね。それで言ったらやっぱ心操くんが強かったよ」
「そうね、遅れてるどころかとっても強力よ、心操ちゃん」
「全然まだまだだ……おんぶに抱っこじゃダメなんだ。俺自身の実力でプロにならなきゃ」

反省、してるけど落ち込んでない。
私は笑って心操くんのもさもさ頭をかき混ぜた。

「かっこよかったよ!見た!?B組の慌てっぷり!ね、上鳴!」
「そーそー、つーかさ、ガチ戦闘訓練で怪我当たり前なのによく動けたよな、俺助けられちゃったもん。馴れ合う気ないとか言ってたけどさ、俺好きだぜ!しっかりヒーロー志望だ!」

心操くんは照れくさそうにマスクに触れて「別に……」と呟いた。
人見知りしてる?


******


「反省点を述べよ」

うっ、反省点しかない……。
消太くんの視線を受けて切島が頷いた。

「相手に喧嘩する気がねぇと俺の個性は役立てづれぇ。塩崎の蔓ともやりあえるかと思ってたけど、久地楽のフォローがなきゃ結局捕まってた」
「私は、みんなに意識向けすぎて、自分のことが疎かになってた。宍田から二撃も喰らった……」
「俺はよかったっしょ!?」
「初動、不意を突かれちゃったわ。コトハちゃんも切島ちゃんも、投げられた時点、いいえ、もっと早く気づければ助けられたのに」
「教わったことの1割も実践出来なかった。悔しいです」
「いきなりできたら苦労しない。それを使いこなすのに俺で6年かかってる。その悔しさを忘れず次に臨め」
「はい」

消太くんは一つ頷いてそれぞれを見回した。
怒ってないし、呆れてもいない。
肯定的な視線だ。
反省点はあれど、消太くん的には満足いっているのだろう。

「切島は正面戦闘を誘えるセットアップを意識すること」
「押忍!」
「久地楽は自覚通り、自分が安全な状態で仲間に指示を出せ。指揮が乱れれば崩壊に繋がる」
「はい」
「上鳴!序盤の緩み!仲間がやられないと力が発揮できないのか?」
「ウェイ……」
「蛙吹、ミスよりもミスをカバーできる迅速な対応を」
「ケロ」
「以上、解散。久地楽はダメージが残ってるなら五戦目までにリカバリーされてこい」
「はーい」

どうしようかな。
リカバリーされると疲れるしなぁ。
殴られた脇腹を撫でて、まあ、支障ないだろうと緑谷たちのチームに混ざった。

「コトハちゃん保健室行かなくて大丈夫なん?」
「うん、大丈夫。次の試合も気になるし」
「確かに」

次は、百ちゃんと一佳ちゃんのチームだ。
どちらもそう簡単には行かない。
B組の個性はあまり知らないけれど、こっちは体育祭もあっておおよそ割れてる。
その条件差がどれほど影響出るか、ってところかな。

「頑張れ、百ちゃん!」



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