Walk.61



「いえーい!!」

三奈ちゃんとハイタッチをして勝利の喜びを分かち合う。
緑谷が心操くんを、お茶子ちゃんが物間を抑えてくれたおかげで、私と三奈ちゃんと峰田で庄田たちを捉えることに成功した。
心操くんはもちろんだけど、物間を先に捕まえられた功績は大きい。
お茶子ちゃんを撫でまわし、今回暴走した緑谷に近づく。

「緑谷、大丈夫?」
「う、うん!心配かけてごめん!」
「あのさ、その人たち、邪魔になったら私が何とかできるかもしれない。ヤバくなる前に相談して」

こっそりと囁けば、緑谷は慌てたように首を振った。

「邪魔とかじゃないよ!もう大丈夫!怖いものじゃないって分かって……力にできそうなんだ」

緑谷はぐっと手を握った。
ちょっとだけ、不安定で怖いその姿に、私は仕方がなく頷いて緑谷の背中を軽く叩いた。

「お茶子ちゃんに感謝しなよ?体張って必死に止めてくれたんだから」
「そそそそうだよね!う、うん!もっかいお礼言ってくる!」

私が頰をなぞって見せれば緑谷はお茶子ちゃんの頰についた傷を思い出したのか、あわあわと青ざめて赤くなって走っていった。
うーん、両想い。
スーパー可愛い光景に頰を緩ませ、茶化そうとした三奈ちゃんの口を塞いで羽交締めにする。
今は大人しくしてようね。
偏向実況の末に更迭されたブラキン先生に代わり、ミッナイ先生の声で戻ってくるように放送が入った。
皆のいる所へと戻り、講評を受ける。

「えー、とりあえず緑谷、何なんだお前」

消太くんの言葉を皮切りにざわめきが広がった。
私は沈黙し、緑谷をチラリと見る。
先ほども緑谷と少し話したけれど、私にはあの奇妙な存在感が必ずしも味方であるとは思えなかった。
けれど緑谷は存在を隠すように本質には触れず、自分にも分からない、恐ろしいと思った、と嘘にならない言葉だけを紡ぐ。

「でも、麗日さんと心操くんが止めてくれたおかげで、そうじゃないってすぐに気づくことができました」
「ホントね!緑谷くんの暴走に対して心操くんはもちろん、久地楽さんの迅速な判断も素晴らしかったわ!そして麗日さんの友を落ち着かせる為に体を張って前に出る行動!そうよ!そういうのでいいのよ!好き!!」

ミッドナイト先生が暴走してる。
苦笑しつつ、お茶子ちゃんを茶化す三奈ちゃんを締めた。
すぐ茶化すじゃん!
もうちょっと静観しようね。

「か、考えなしに飛び出しちゃったので、もうちょい冷静にならんといかんでした……」

真っ赤になって、もじ、と指を組むお茶子ちゃんににっこり微笑み、大人しくなった三奈ちゃんを解放する。
可愛いが過ぎる。

「でも、何も出来なくて後悔するよりは良かったかな」
「いい成長をしてるな、麗日」

消太くんがお茶子ちゃんの成長を喜ぶように、褒めるように、僅かに微笑んだ。
関係のない私までもが嬉しくなる。

「俺は、久地楽さんに言われて動いただけで……全然動けなかった。俺がもっとまわりを見れてれば……」

心操くんはちら、と私を見て、視線を戻し、緑谷のためだけじゃなく、B組が勝つのに必要だったから、緑谷と戦って勝ちたかったから、偶々、と言葉を重ねる。
それでも、私は助けられたし、緑谷も、お茶子ちゃんも、きっと心操くんがいなかったら大変なことになっていた。
脳で考えて動いたことがどうこうじゃなくて、悲鳴に応えてくれたことを、誇って欲しい。
私は声をかけようとして、消太くんが歩み寄ってきたので私から言う必要はなさそうだと口を閉じた。

「!?」

キュ、と消太くんが心操くんの捕縛布を締めた。

「ちょっ、首しまっ!?」

すぐに手を離したけれど、何で言葉より先に手を出すんだと心操くんを庇うように前に出れば、ぽす、とダメージのない手刀が降ってきた。
なんで?

「心操、誰もお前にそこまで求めてないよ。お前に指示を出した久地楽含め、ここにいる皆、誰かを救えるヒーローになるための訓練を日々積んでるんだ」

消太くんは心操くんをしっかりと見て言う。

「お前の動きは、充分及第点だった」

心操くんから、じわ、と立ち上る白い気配に笑った。



- 180 -

*前 | 次#

戻る