Walk.62



「久地楽さん、ごめん、呼び出して」
「全然いいよー」

捕縛布に触りながら言った心操くんに首を振った。
そりゃ実戦積んだら調整したいよね。
合同訓練のあと、心操くんから放課後訓練に付き合ってほしいと言われ今に至る。
そういえば消太くんに体育館の使用許可をとりに行った時、いつも使っている体育館は別の使用申請が出ているからとその隣の鍵を渡されたが、他にも誰か訓練しているのだろうか。
放課後反省会を兼ねてB組の一部がA組の寮に来ると言っていたので、一体誰がコソ練しているのだろうと内心首を傾げた。
その時怒鳴り声と爆発音が隣の体育館から響いた。
誰か分かったわ……。

「じゃ、始めようか」

私はたくさんの猫を出して心操くんに差し向けた。


******


「使用許可撤回すんぞ」
「あ、センセー」

聞き慣れた声に振り向けば、消太くんが見にきてくれたのか入り口に寄りかかっていた。
私の出した猫まみれになっている心操くんを見て呆れたようにため息をつく。

「違う違う、いま休憩中だから。はい、猫ちゃん吸って」
「敬語」
「はーい」

消太くんに猫を一匹押し渡せば、吸いはしないものの大人しく抱えた。
猫好きだよね。

「心操、調整は出来たか?」
「一応」

心操くんは猫を避けて立ち上がった。

「明日、お前の編入会議がある。お前はやれるだけのことをやった。絶対に大丈夫とは言わんが、期待してろ」

心操くんからキラキラの白い心が溢れて出した。
早い早い。
白黒まだらな猫たちが白い心に反応して宙へ戯れつくのを見た心操くんは照れくさそうに顔を逸らす。

「久地楽さん、それ、消して」
「んふふ、はーい」

消太くんの腕の中にいる猫だけを残して消してあげると、消太くんももう満足したのか猫を下ろした。
楽しみだな、心操くんと授業受けれるの。
いや、まだA組とは限らないけど、でも、消太くんの弟子みたいなもんだし多分A組でしょ。

「んじゃ、帰るぞ。片付けろ」
「えっ、せんせー訓練見に来てくれたんじゃないの?」
「敬語。施錠しに来ただけだ。もう時間ギリギリだぞ」
「はーい」
「久地楽さん、付き合ってくれてありがとう」
「ん、いつでも呼んで」

片付けるものも無いので、消太くんに追い出されるまま外に出た。
んー、意外と暗い。
季節が徐々に冬へと変わりつつあるのを感じ、肌寒さに息を吐いた。
ふと、隣の体育館から人が出てきた。
爆豪だ。

「見て心操くん、爆豪がコソ練してるよ」
「俺らもじゃん」
「確かに」
「爆豪……?」

消太くんが不思議そうに声を漏らした時、爆豪の後ろからオールマイトと緑谷が出てきた。

「えっ!?」

私の声に3人が振り向く。

「緑谷と爆豪って仲良かったの!?」
「仲良くねーわボケカスコラ!!」
「あわわわ久地楽さんと心操くんと相澤先生!?きききキグーデスネ!!?」
「相澤くん!こここここれはその……!!」

三者三様というか、三者ニ様の反応に私も心操くんも首を傾げる。
コソ練がバレるの嫌だったのかな?
何をそんなに慌てて……。

「ハッ!し、心操くん、つまりあれはそういうことかな!?」
「そういうこと?」
「だ、だから、ほら、爆豪と緑谷って普段あんま仲良い感じじゃ無いんだけど、それって実は付き合ってるのをバレないように……」
「違うと思うけど」
「そっか!二人の仲はオールマイトだけが知ってたってこと!?だから蜜月なの!!?」
「気色悪い妄想してんじゃねェ!!」
「私はお茶子ちゃん推しなのに!!!ごめん応援できない!!!」

シンプルに殴られた。
個性とかじゃなくてシンプルに。
しかも顔ってお前。
こっちは女の子だぞ。

「久地楽さん!?かっちゃん何やってんの!?」
「うぅ、目の前で暴行ですよ先生!!」
「今のはお前が悪い」
「俺もそう思う」
「だってガチかと思って」
「余計悪いわ!!!」

流石に二発目は守ってくれる気になったのか、ぼすぼす、と手元で爆発を繰り返す爆豪を捕縛布で捕まえて消太くんはオールマイトに歩み寄る。

「心操を寮まで送って来るので久地楽を寮までお任せして良いですか?」
「あ、ああ、いいよ!もちろん!」
「俺一人で戻れますよ」
「いや、話あるから送る。久地楽、10時以降は……」
「分かってまーす」

消太くんは相変わらず申し訳なさそうな顔をして心操くんを送っていった。
そんな顔しなくて良いのに。
消太くんに手を振って、オールマイトのそばに駆け寄った。

「冗談はさておきコソ練?隅におけないねー緑谷も」
「う、うん……」
「てめーもコソ練してんじゃねーか。あの洗脳ヤローと」

あれ、珍しい。
爆豪の方から話に入って来るなんて。

「まーね。心操くんとは今までも結構コソ練してたし。捕縛布とか最初の頃はぐちゃぐちゃに絡まってたんだよ。写真見る?」

あまりにも面白い体勢で自身を絡め取っている心操くんの写真を見せれば、自分から話を振ってきたのに興味なさそうな爆豪は鼻で笑った。
仕方ないので緑谷とオールマイトに見せる。

「その捕縛布って相澤先生と同じ?」
「うん、結構扱い難しいみたいだよ」
「よく頑張っているんだね」

緑谷はまた分析が始まったのか、私の端末の画面を見てどこからか取り出したノートにブツブツと書き取り始めた。
君もそういうとこあるよね。

「相澤くんの秘蔵っ子は優秀だ」
「心操くんは意外と熱いやつなんですよ。秘蔵っ子といえばオールマイトの秘蔵っ子の緑谷はともかく爆豪といるの珍しいですね」
「えっ!?あ、う、うん、いや、秘蔵っ子というわけでは!」

あれ?あんまり突っ込まれたく無い話だったかな?
先ほどまでの柔らかな微笑みを崩して慌て始めたオールマイトに首を傾げる。

「おい、B組の連中きてんぞ」

爆豪の声に灯りの漏れる寮を見れば、窓から一佳ちゃんが見えた。
その隣に唯ちゃんもいる。

「あっ!一佳ちゃんも来てたんだ!私先に行くね!」

のんびり歩く緑谷たちに手を振って少し遠い寮に走った。
なんだなんだ!鉄徹とか男子が来るのかと思いきや女子も結構来てるじゃん!



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