Walk.64



「あれ、シャチョーから、珍しい……」

なんだか堅苦しい文面で、焦凍くんと爆豪が仮免に受かったよ、ということをメッセージ知らせてくれた。
やった……これで、A組みんな仮免ヒーローだ!
共有スペースにいた私は消太くんの部屋に駆け込んだ。

「消太くん!」
「ノックくらいしろよ……」
「焦凍くんと爆豪が仮免合格だって!」

消太くんの座る椅子に飛び込んで端末を見せれば、消太くんは画面を見て笑った。

「轟はともかく爆豪も合格したようでよかった」
「確かに……よく問題起こさなかったよね……」
「まあ、爆豪も態度こそ悪いが頭が回るやつだからな」

ふと消太くんの端末にも連絡が入る。
私が見て良いやつかも分からなかったので視線を逸らして消太くんに顔を埋めた。
あったかーい。
最近寒くなってきたからか温かいコーヒーを飲む消太くんは心地よく温かかった。

「消太くん……あったかいね……」
「ここで寝るなよ。……いまオールマイトさんから爆豪と轟が強盗犯を取り押さえたと連絡があった」
「……ん?」
「仮免取得早々ヴィラン遭遇とはな」
「は?えっ、だって、え?さっきシャチョーから第一報だよ?マジで取ったばっかじゃん!?」

何やってんだあの二人……。
いや、まあ、仮免持ってるし、いいんだけど。
それにしたってちょっと早すぎなのでは。
私と消太くんは顔を見合わせてため息をついた。

「それシャチョーに言っていい?」
「ああ、どうせすぐ報道されるしな」

消太くんに了承をもらって先ほどの仮免合格の連絡に礼を言いつつ、返信をする形で初活躍をお知らせした。
すぐに既読がついて、ため息のスタンプが送られて来る。
意外とスタンプとか使うんだ。
ギャングオルカをデフォルメした可愛いイラストに子供ウケ狙いの一環だろうかと首を傾げつつ、あまりにも可愛かったのでスタンプを即購入した。

「そういえばさ、お風呂で遊ぶファットガムのビニールバルーンみたいなの分かる?エリちゃん用に置いてあるやつ」
「ああ、送られてきたのを俺が受け取った。どうかしたか?」
「あ、いや、エリちゃんがこの前それで遊んで楽しそうだったから買ってくれた人に伝えようと思ったんだけど、誰から送られてきたの?」
「ファットガム事務所」

なるほど。
思わず笑って切島にメッセージを送った。
グッズいっぱいあっていいなー。
切島からすぐに「伝えておく!」と返信がきた。

「消太くんのグッズないの?」
「誰も買わないだろ……」
「えっ、私欲しいよ?」
「それはお前だけ」
「えー!!そんなことないよ!エリちゃんも喜ぶって!私もイレイザーモチーフのメガネとかアクスタとかトレカとか欲しい!!」

消太くんはうるさそうに私を押し退けてコーヒーを飲んだ。
カフェインばっかり取って!!
構ってくれないモードに入ったので仕方なく部屋を出た。
グッズがゼロってことはないと思う。
メディア露出が全くないとは言え仮にもヒーローだし。

「今度緑谷に聞いてみるかー」


******


焦凍くんたちの帰りを待つついでにA組寮の共有スペースにいた緑谷に声をかけた。

「イレイザーヘッドのグッズ、かぁ……」

ブツブツ呟く緑谷はいつもより歯切れ悪く考え始めた。
ヒーローオタクの緑谷が考え込むとは……。
これは本格的に無いかもしれない。

「まあ、ないよね」
「あ、いや!あるよ!雄英出身ヒーローだけのトレーディングカードが昔出たんだけど、それにイレイザーヘッドも入ってたから!」
「マジか。調べてみようかな」
「あー、うーん、うん、それがいいかも。僕もちょっと見てみるね」
「ありがたー」

うーん、あとはひざしくんに聞いてみるか。
本人より詳しそうだし。

「コトハ」
「うわ!しょ、焦凍くんおかえり!?」

驚いて一歩下がると、焦凍くんの胸に当たった。
真後ろに来る前に声をかけて欲しかったな。

「ただいま。何の話してたんだ?」
「イレイザーのグッズがないかなって聞いてたんだよ」

焦凍くんは首を傾げた。
子供みたいで可愛い。
オタクではない焦凍くんには伝わらないだろうか。

「相澤先生のグッズが欲しいのか?」
「うーん、相澤先生っていうか、イレイザーの。みんなにとってのオールマイトが、私の場合はイレイザーヘッドとプレゼントマイクって感じかな?」
「あ、そっか。あれ、久地楽さん、プレゼントマイクはいいの?」
「……プレマイグッズは売るほどある。寧ろ自分から持ってくるから貰って欲しい……サイン入りのキラキラしてるトレカあるけどいる?」
「いいんですか!!!???」

ヒーローオタクすぎんか?
英語担任なのにそこまで興奮できるのもそれはそれで凄い。
まじまじと私をみる焦凍くんにどうしたのかなと首を傾げれば頷かれた。
うん?

「イレイザーのグッズ、探してみる」
「おー、ありがとう。プレマイのトレカは今度持ってくるね」
「このご恩は一生……!」
「あはは、大袈裟だなぁ」



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