Step.24


個性管理課の経過観察という名の軽い質疑応答は、消太くんもいる中、国本によって行われたため、ほぼ私の信教としては世間話に近いものであった。
少し個人的な話をした後は、どんなヒーローが好きだとか、さっき見ていたDVDに消太くんがチラッと映っていたとか、本当にとりとめのないことを話していた。
そういえば、消太くんと国本が戻ってきた時に、黒に何があったのか聞いたけれど、お兄ちゃんとの約束だからの一点張りで、やけに機嫌の良い黒は何も教えてくれなかった。
別にいいけど、消太くんも黒も私を放ぽって仲良すぎじゃない?
あの後全ての手続きを終えた私たちを、国本は車で送ってくれた。
黒塗りの高そうな車は、公用車なのだという。
税金の無駄遣いだ。
翌朝、消太くんはいつもより早く家を出た。
色々な手続きに追われているらしい。
短くため息をついて、軽く伸びた。
A組に編入すること自体には別に異論ないけれど、焦凍くんと同じクラスになるのかと思うと少しだけ憂鬱だった。
焦凍くんが悪いわけではない。
私があんな、啖呵を切るような真似をしたから気まずいだけ。
いつもより味の薄い朝食を一人で済ませて、一人で片付けて、いつも通りの道を一人で歩いて、いつもより少しだけ早く、教室についた。

「お、えっと、誰だっけお前」
「久地楽コトハよろしくね」
「おう!悪いな、俺は鉄哲徹鐡だ!」

て、てつ?
いまてつって何回言った?

「そ、か。鉄哲は早いんだね」
「今日はたまたまな。ってかお前には言われたくねぇわ」
「私も今日はたまたまね」

昨日は話せなかったが、鉄哲も話してみると良いやつで、何より切島と性格が似ていて個性も似ていて、もしかすると言い親友になるのかもしれないと勝手に思う。
朝話していたおかげで鉄哲と一佳ちゃんたちの間にも交流が生まれ、そこから輪が広がるように女子と男子の交流が広がった。
なんとなく印象に残ったのは物間くん。多分心病んでるな、あれは。
おそらくB組所属としては最後になるだろうランチに誘われたが、タイミングの悪いことに校長室に呼ばれていたためやむなく断念した。
そのランチというのも、警報が鳴った騒動のおかげで、食べる気分じゃなくなってしまったが。
ちょうど校長と面談をしていた時だったので、警報が鳴った瞬間も、校長先生に「ここは安全だから落ち着いて報告を待とうね」と言われたおかげで何の焦燥も危機感もなく過ごした。
後から聞くところによると報道陣の侵入とかで、校長の落ち着きも納得のいくものだった。
午後は中途半端だった個性把握テストを13号先生のもとで行い、それが終わり次第B組と同じ授業に戻った。
そんな激しくもとくに味気のない一日が終わり、今日も今日とて一人で帰路につく。
はずだったのだけれど。

「コトハちゃん、だよね!?」
「そだよ、お茶子ちゃん」

私がひらりと手を振って見せれば、ぱあ、と顔を輝かせたお茶子ちゃんがすぐ傍まで走ってきた。
相変わらず動作がいちいち可愛い。

「受かっとったんやね!よかったー!」

はい、可愛い。
自分のことのように喜んでくれるお茶子ちゃんに、思わずこっちも笑顔になった。
いままでタイミングが悪かったのか、一度もすれ違ったことすらなかったので、お茶子ちゃんも私が合格しているか確信を持てなかったのだという。

「はっ、あかん!これからタイムセールだった!」
「あ、もしかして駅前の?」
「そう!コトハちゃんも?」

頷くと何たる偶然、と互いに手を取り、無言で一緒に行くことを決めた。
今日は野菜の特売日だから逃せない。
色あせた一日に、やっと色が塗られたような気がして、ふふ、と笑う。
消太くんから生活費を頂いている私とは違い、一人暮らしのお茶子ちゃんは大分生活に困窮しているらしく、野菜を買うべきかそれともおもちを買うべきかで悩んでいた。
なんで主食とおかずで悩むの!
炭水化物ばっかり取らないで!
どうして私の周りはこう、食に無頓着な人が多いんだ!

「よし、おもちにしよう!」
「なんでよ!!」
「ええ!?」
「分かった……いいよ、買うがいいよ、私が一週間分の常備菜を作ってあげるから……今日お茶子ちゃんちで夜ご飯ね」
「えっ!コトハちゃんウチくるん!?やったー!地元から出てきたばっかりですっごい寂しかったんよ!今日はおもちパーティーだね!」
「却下。夜ご飯はコトハ推奨の健康飯です」
「コトハちゃんが作ってくれるのかー何かいいね!女子っぽくて!」

大丈夫かな、言葉通じてるかな。
ちょっと不安になったけど可愛いので許す。
今日は幸か不幸か消太くんも遅いとメッセージをくれているので晩御飯は作らなくていいだろう。
いつもより特売の野菜を多く買いこみ、お茶子ちゃんのためにおもちレシピも考える。
あれ、もしかして白米食べてない感じ?
これは、何だか手強そうな案件だ。


- 24 -

*前 | 次#

戻る