Step.4



「Foooo!!起きたなコトハ!」
「あ、ひざし兄ちゃ……消太お兄ちゃんは?」
「おおい!!俺より先にイレイザーかよ!!シヴィー!!」

ひざしくんはいつもの溌剌とした笑顔で私を指さした。

「アイツはいま、君を救ってるんだぜ」


******


「それでは、ここに署名をお願いします」

教師、クラスメイト、俺たち……誰もが知らなかった養父の件を、コトハの幼馴染が全て明るみに出してくれたおかげで、情状酌量、思春期にありがちな個性暴走として収められることとなった。
しかしいろいろな呵責はついて回る。
一度は、ヒーローにヴィランとして見られたのだ。
その目は決してすぐに記憶から消えるものでは無い。
コトハの中からも、世間の中からも。

『消太くん、ひざしくん、忙しいのに構ってくれてありがとうね』

そう、思えばあの時コトハの母は、おそらく自身に振りかかる災厄を知って俺たちに託したのだ。

『ねえ、お願いよ、コトハを……お願いね』

コトハの母は、泣いていた。
もしかしたら、こうなることも、分かっていたのかもしれない。
彼女が死んだいま、一体どこまで“予知”していたのかは分からないが、そんなものはもう関係ない。
俺たちが、託されたのだから。
俺は、ペンを取って、迷うことなく自分の名を記した。

「非常に重要な公文書ですので、宣言をお願いします」

罪なき業は彼女が死ぬまで付き回るのかもしれない。
なればこそ、俺がすべきことは、俺をヒーローと呼んでくれた友人を守ること。
……それこそが、合理的最善手、なのだから。

「上記 久地楽コトハを、プロヒーロー・イレイザーヘッドの名に於いて身柄を引き取り、さらにその保護、及び観察を保証、以降私が全ての責任を負うことを宣言します。以上、宣言者・相澤消太」
「宣言、正に承認致しました。これは久地楽コトハが成人するまで継続されますのでこれより8年間、くれぐれもお忘れなきよう」

あくまで厳正な刑事は頷いてハンコを押した。


******


「つーわけでお前、今日から俺の家で暮らすから転校な」
「え!?」

消太くんから紙を受け取りつつ、衝撃的な内容に彼を二度見する。

「それ、俺が保護者になる同意書ね。目ェ通して異論なければサインしてくれ」
「消太くんが保護者!?パパになるってこと!?」
「戸籍上はそのままだ。あくまでお前が二十歳になるまでの保護者ってだけ」
「そう、なんだ」

色々なことがありすぎて、正直頭が回っていないが、それでも何とか頷いた。
そんな私を見てか、ひざしくんがよしよしと、昔のように頭を撫でてくれた。
擦り寄せる髭が少し痛いけれど、ひざしくんが温かくて、思わず笑みを漏らす。

「よく考えて決めろよ。これは強制じゃない。養父は病院で経過観察の後に刑務所に入るし、お前はどちらにせよ転校することにはなるが……自分で考えて、後悔しないほうを選べ」

消太くんはばっかだなぁ。
私はペンを取って、躊躇うことなく署名した。
今まで何度それを望んで、手に入らず泣いたことだろうか。
今更、差し出されたその手を掴まないなんて、そんなわけないんだから。

「消太くん、不束者ですが、よろしくお願いします」

ベッドの上ではあるけれど、ぺこりと頭を下げれば、消太くんは虚をつかれたような顔で、そして笑った。

「おう」
「YEEEEEAAAHHHHHHH!!よぉーく言ったコトハ!!俺も家ちけぇから遊びにCOME ON!!……ところでお前なんでくん付けなの?」
「えっ!?あ、いや、その……さすがに、私も中一だし、お兄ちゃんは恥ずかしいかなって……」
「ハァアアアン!?何だよ今更だろォ!?お兄ちゃんって呼んでくれよマイシスター!!」
「シスターじゃないし病室でうるさすぎない!?」
「お前もお兄ちゃん呼びがいいよなァ!?なあそうだろイレイザー!!」
「なんでもいい……」



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