Step.45
「プレゼントマイク、絶好調だね」
盛り上がる会場と放送を聞いたお茶子ちゃんの言葉に、苦笑を返す。
ひざしくんこういうの大好きだから……。
『どうせてめーらあれだろ!こいつらだろ!?敵の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!1年A組だろぉおお!?』
「わあああぁ……人が、すんごい……!」
「緑谷……さっきまではカッコよかったのにね……」
ガクガクと震える手を胸に当てて緊張を逃がそうとしている緑谷を見て、はあ、と呆れる。
焦凍くんに言い返した瞬間まではカッコよかったんだけど。
仕方がなく緑谷の手に触れて緊張を少しだけ緩和させてあげる。
「あ、ありがとう、久地楽さん……!」
あれ、顔が真っ赤になってしまった。
女子耐性なさすぎない?
「久地楽!わりぃ俺も!」
「はいはい」
手を差し出してきた切島にタッチしてみんなと同じだけ緊張を受け取る。
感情の現地調達って案外いいかも。
私の中から作りだすものじゃないから黒と白に渡し易いし。
「めっちゃ持ち上げられてんな!なんか緊張すんな、なあ爆豪!」
「しねえよ。ただただアガるわ」
爆豪らしいなぁ。
ぶふ、と小さく笑うと、お茶子ちゃんによくそんな余裕でいられるね、と信じられないものでも見るような目で言われた。
昔からそんなに緊張するタイプでもないし、黒に緊張はとってもらってるからね。
主審のミッドナイト先生の前に整列すると、切島が少し顔を赤らめて「ミッドナイト先生……なんちゅうかっこーだ……!」とつぶやいた。
硬派を地でいく切島のかわいい反応に思わず笑う。
「コトハちゃん……もしかして緊張で可笑しくなったんじゃ……」
「ひどくない!?」
「静かにしなさい!」
ミッドナイト先生が鞭を振るって声を張った。
カッコいい。
ミッドナイトは大人の女性って感じがして好きだ。
18禁ヒーローが伊達じゃないと、見れば分かるほどのフェロモンを垂れ流している。
「選手代表、1−A!久地楽コトハ!爆豪勝己!」
今朝、消太くんが首席の二名が選手宣誓を行うと私たちに告げてくれていたので、事前にどうするか話そうと思っていたのだが、「俺が言う」の一点張りで取り合ってもらえず、仕方がなくじゃあそれで、と頷いたのだけれど。
……大丈夫かな。
登壇してちらりと爆豪と視線を合わせる。
はいはい、分かってますよ。
そんな、睨まないの。
「宣誓」
「俺が一位になる」
とっさに口を抑えたが、自分の笑いに勝てず、噴き出した。
「絶対やると思った!!」
私も思った。
A組の叫びと周囲のブーイングにも気にした様子は欠片も見せず、むしろ煽るように首を切るしぐさをした。
笑っちゃダメだと思えば思うほど、笑いがこみ上げてくる。
やばい、第2波来てる!
爆豪はぷるぷると震える私など目にも留めず、整列している生徒たちを睨み親指を地に向かって下げた。
「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」
「あはははっ!やめ、しんど!そんなん笑うわ!!」
「久地楽お前、爆豪止めろって!!」
「なんで?」
白に笑いをとってもらって、やっと落ち着いた時に切島の声が聞こえて、息を整えながら応えた。
あー、でも確かに、爆豪へのヘイトが高まってしまっているのは良くないか。
ふぅと、肩をすくめて、マイクに声が入るように少しだけ声量を上げる。
「みんな、自分が1位獲るつもりでやるでしょ。爆豪は間違ってないよ、口は悪いけど」
「た、確かに、そうだな……くそっ漢らしいじゃねぇか!よく言った爆豪!俺も負けねぇぞ!」
「えええっ!?切島くん!?」
切島、ちょろすぎる……!
ごめんね切島!
第3波にも勝てず、やはり彼の将来を危ぶみながら遠慮なく笑った。
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