Step.47



放送席を恐る恐る仰ぎ見れば、ひざしくんはぐっと親指を立て、消太くんはわずかに頷いてくれた。
望んだ一位はとれなかったが、二人はまだ私に期待してくれている。
よかった、のか。
予選で想像以上に消費してしまったが、僅かに白い感情が芽吹いた。
予選順位は4位。
今しがた発表された騎馬戦のために、195Pを配られた。
文字通り4番目のポイントは私にとってほとんど意味を持たない。
一位を取れば、順位が変わるのだから。
だとすれば、ポイントに関わらず、緑谷のハチマキを確実に狙いにいける奴と組む。
それは、つまり。

「おいビビり。組め」
「私もそう言おうと思ってたとこ」

多分爆豪は私のことあんまり好きじゃないだろうけど、それでも私の個性を見て声をかけてくれた。
私もそれに答え、頷く。

「それと、一応言っとくけど、久地楽コトハって名前あるから」
「うっせえ」

ちらりと焦凍くんのほうを見れば、なぜか目があってびっくりした。
もしかして、組んでくれようとしてた、のかな。
がし、と頭を掴まれ、驚きに爆豪を振り返ったが何だか凶悪な顔をしていて振り返ったことを後悔した。
な、何だよ。
中指を立て、ぼすぼす、と小さい爆発を起こしている。
まさか。
爆豪の視線を辿ればその先にいた焦凍くんは珍しくウザそうな顔をして強い舌打ちをした。
こっわ!!
あんなのお父さんに向けたやつ以外で見たことないよ!

「爆豪!あんまり煽んないでよ!焦凍くんそういう面ではアホだけど、明確な煽りにはあんまり煽り耐性ないんだから!」

喜色満面の凶悪な顔で背を向けた。
そういう奴だよ!
知ってた!

「おーい!轟の奴そっこーチーム決めやがったぜ!爆豪!!俺と組もう!!」
「クソ髪」
「切島だよ!覚えろ!!」

切島の個性は爆豪と相性がいい。
それに、切島一人いるだけで物凄く気が楽になる。
一家に一台、切島鋭児郎だ。

「おめェどうせ騎手やるだろ!?そんならおめェの爆発に耐えられる前騎馬は誰だ!?」
「……根性ある奴」
「違うけどそう!硬化の俺さ!!ぜってーブレねえ馬だ!久地楽の個性なら俺も分かってる!俺が補給タンクになってやるよ!!」

切島は私にも笑いかけて白い心を投げた。
あーくっそイケメン。
切島と組もう。

「奪るんだろ!?1000万!!」

爆豪はその言葉に心を動かされたのか、にやりと口角を上げた。
分かるよ、その気持ち。
切島はいいよね。
うんうんと頷いていれば、うざったるそうに睨まれた。
ごめん。
切島とほどなくして決めた汎用性の高い瀬呂を仲間に加え、それぞれの個性を踏まえた布陣を決める。
前騎馬は切島、左腕が本調子じゃない私は右側に、瀬呂が残った左側に位置した。

「切島は知ってるけど、私の個性は心を燃料にしてる。この体育祭途中でガス欠は洒落にならない。だから、爆豪を選んだ」
「あ?」
「爆豪が怒れば怒るだけ、私の力になる。必要に迫られない限り、私に触れていてほしい。二人もね」

瀬呂とはあまり話したことも組んだこともなかったが、話した感じ多分苦労性の良いやつだ。
作戦会議を終えると、730と書かれたハチマキが爆豪の手に渡った。
そこそこ高い。
これは狙われる可能性もあるな。
目指すは緑谷だが、気を抜けば奪われかねない。
緑谷チームを見れば、お茶子ちゃんと常闇、サポート科の女子が組んでいた。
どういう編成なんだろう。
とは思ったが、1000万に選ぶ余地などないのかもしれないと妙に納得する。
お茶子ちゃん、緑谷、私は本気で行くよ。
目の合ったお茶子ちゃんはしっかりと私の目を見返して来て、ぞくりと肌が粟立った。
武者震いだなんて、初めてだ。
チーム編成の15分が終わり、騎馬を組んだ。
左腕には念のため心を纏わせて外傷を負わせないようにしておく。

「狙いは一つ」

爆豪が呟いた。
分かってる。
スタートの合図と共に切島が走りだしたのに合わせて、私と瀬呂も続く。
事前に言っておいたおかげか、切島の肩に置いた私の手に、爆豪が常に触れて怒りを供給してくれる。
いざとなれば爆豪の中にある卵も割らせてもらうし、1000万奪取に死角はない。
それにしても、案外騎手のいる戦いって言うのは、良いかもしれない。

「行くぞオラァ!!」

爆豪の声に、口角を上げた。


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