Step.48



飛んだ!?
サポート科のマシンかなんかか!

「爆豪!」
「次飛んだら俺が行く!!」
「足場作るから緑谷の高さについたら構わず振りかぶって!」

逃げ回る緑谷は障子たちに峰田チームに追い詰められ、再び上空に飛び上った。
爆豪は即座に騎馬の上に立ちあがり、小さい爆発を繰り返して推進力を上げ、私たちから離れたところで大きめの爆発に変えた。
そうか、上昇まで下にいる私たちが邪魔で少し時間がかかるんだ。
白い小型の鯨を緑谷の隣あたりに出し、爆豪の足場にする。
行け、爆豪!

「調子乗ってんじゃねぇぞクソが!!」
「常闇くん!」

爆発を常闇の黒影に阻まれ、二撃目を加える間もなく緑谷はサポート科のアイテムを使って爆豪から逃げた。
白鯨じゃあ速度不足だ。

「瀬呂、回収」
「おう!」

白鯨から跳ぼうとした爆豪の肩に瀬呂のテープが張りつき、引っ張り戻した。
切島の肩から一旦手を離し、瀬呂が爆豪を受け止める。

「ナイスキャッチ!」

とっさに緑谷を見ると、着地でもたついていた。
不具合か?
何にせよ、緑谷の性格上おそらくだが二度目はないだろう。

「爆豪、緑谷は多分もう飛ばない。正面突破でいこ―――」
「単純なんだよ、A組」

背後を取られて、ぞっとした。
物間くん!!
その手には爆豪のハチマキ。
爆豪が反射的に背後へと爆発を振るったが、遅かった。

「やられた!!」
「んだてめェコラ!!返せ殺すぞ!!」
「ミッドナイトが“第一種目”と言った時点で、予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」

物間はぺらぺらと聞いてもいないことをしゃべり、爆豪の怒りボルテージを上げていく。
普段であれば止めるけれど、今この瞬間に置いて、物間は最悪手を打っている。
怒れ、そして、心に負荷を!!
私の手を握る爆豪は、すさまじい怒りの濁流を流してきた。

「久地楽も残念だったね。そんな騎手じゃ、優勝は無理だ。B組と組んでいれば、まだ可能性はあっただろうに」
「いいや、爆豪であってるよ」

痛いほどの怒りがとめどなく爆豪から私へと流れ込んでくるせいで、私と爆豪が怒りのどす黒い赤い靄に包まれた。
ちょ、ちょっと煽りすぎだね!
初めて見たけどこれ、みんなにも見えてんじゃないのか。

「爆豪、少し回収する」

これ以上は冷静になれないと、ごっそり奪っても、噴火しつつある火山のように溶岩は止まらない。
ううん、マジか。
しかしこれなら燃料面での問題はすべて解消されたといっていい。

「切島……予定変更だ」

物間は優位に立つと油断するタイプだ。
追われ慣れていない。

「デクの前にこいつら全員殺そう……!!」
「賛成!行こう!」
「久地楽!?爆豪落ち着け!冷静になんねえとポイント取り返せねえぞ!」
「おォオオオ……!!」

両手を打ちつけ、小さな爆発を起こした爆豪は再び私の手の上に手の平を重ねたが、今度は濁流というほどの怒りでは無い。
ハッと爆豪を仰ぎ見れば、般若の形相ながらも、怒りを何とか制御しようとしている様子が見て取れた。
やっぱり、激昂するだけの馬鹿じゃない!

「っし進め切島ァ!!俺は今……すこぶる冷静だ……!!!」
「頼むぞマジで!」

正面から突っ込み、ハチマキを取り戻す!
少し話したことある程度で、物間たちの個性はあまり知らない。
元B組とは言えたった2日やそこらだ。
しかし、それはあっちも同様。
少しでも触れられれば、その騎馬崩してやる。
咆哮に切島が走りだし、爆豪が右手を振りかぶった。

「死ねェ!!」

しかし、爆豪の爆発を受け流し、するりと身をかわす。
円場が近い。
右手を伸ばそうとしたが、体勢を崩した爆豪を支えるために断念する。
即座に振り返った爆豪に、物間の手が伸びた。

「白!カバー!!」

白い鳥が爆豪を覆った瞬間、物間の右手が爆発を起こす。
あれは、爆豪の個性!?
すぐに鳥を消して、切島の動きに合わせて物間から距離をとる。

「へえ、いい個性だね」
「俺の……!」
「爆豪おめーもダダ被りか!!」
「クソが!!」

爆豪が再び物間に右の大振りをかまそうとするが、今度は切島の硬化の個性で防がれた。
これは。

「僕の方がいいけどさ」

ぎちぎちに硬化したあの姿には見覚えがある。
切島の肩に置いた手に力がこもる。
あいつ……!

「こいつ……コピーしやがった」

私に指一本でも触れたら根こそぎ感情を奪ってやるのに。
どこからか飛んで来たボンドを再び白の鳥でカバーし、内心の怒りを抑え込む。
つくづくカンに触る……。
ヘラヘラしやがって、今に見てろ足元掬ってやんぞ。

「あ、怒らないでね。煽ったのは君だろ?ホラ……宣誓でなんて言ったっけ、恥ずかしいやつ……えー……まぁいいや、おつかれ!」

俺が1位になる。
爆豪は間違ってない。
私は背を向けた物間に手のひらを向けた。

「必殺技、使おう爆豪」
「俺がとるのは、完膚無きまでの1位だ!こんな雑魚に使ってられっか!!まだだ!!」
『残り1分を切って現在!轟ハチマキ4本所持!』

まさか!
当たって欲しくない予測が脳裏をよぎり、爆豪の怒りを右足を掴んで吸い取った。
冷静でいられない!

『ガン逃げヤロー緑谷から1位の座をもぎ取ったあ!!』
「放せやビビり……!」

私の手を蹴り解いて、爆豪は騎馬から飛び上がった。
マジか!
あんだけ吸い取ったのに、爆豪の怒りは底なし!?

「待てって!!勝手すなぁああ!爆豪!!」
「円場!ガード!!」

円場の個性で固化した空気に阻まれたが、爆豪はそれを足場に無理やりぶち破った。
掴んだ!!
単騎で足場の悪い中、爆豪は物間から二本のハチマキを奪い取った。
すごい運動神経と執念だ。

「瀬呂、回収!」
「おう!」
「切島!全速前進!」
「ああ!」
「待て待て!このまま持ち逃げすりゃあ通過は確実だろ!?距離とった方がいい!」

瀬呂はテープを引きながら声を上げた。
持ち逃げは男らしくねぇ、といつもの調子で叫ぶ切島を無視して爆豪を受け止める体勢を作る。
たしかに、最善手は通過できるポイントを回収して、先ほどまでの緑谷チームのごとくガン逃げだ。
しかし、このチームにおいては違う。
騎手が違う。

「爆豪は納得しないでしょ!私もやられっぱなしは嫌だ!」

それに、進めば進むだけ、私たちは得られるのだ。
飛んで来た爆豪をキャッチした瀬呂は間髪入れずに爆豪に退くかと聞いた。

「まだだ!!」

瀬呂は答えに苦笑し、私に頷いた。

「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねぇ!行け!!!」


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