Step.49



「俺らのポイント取り返して!1000万へ行く!!」

俺らの、ね。
爆豪チームの騎馬が笑った。
今はもう、追われる者じゃない。
それならいっそ身軽だ。

「しょうゆ顔!テープ!!」
「瀬呂な!っと!!」
「ビビり!騎馬浮かせ!!」
「ビビりじゃないっての!」

切島、爆豪に一対ずつ、私と瀬呂には片翼ずつ、計三対の大きな白い翼を生やし、激しく羽ばたいた。
ぶわりと一瞬の浮遊感の後、瀬呂のテープと爆豪の推進力によって、ほぼ一瞬で物間の隣に躍り出た。
速いっ!!
いや、これは速すぎる!!
物間を抜き去り、だいぶ距離が開いた。
まずい!

「爆豪!!ブレーキ!」
「うっせ!止まんな!!取ったわ!!」

爆豪の声に飛びつつ上を見上げた。
ああああ、取った!!
爆豪の神懸った反射神経がここに来て私たちの命を救った。
手に握られたハチマキを首に巻きなおし、爆豪は吠えた。

「次!!デクと轟んとこだ!!」
「爆豪きみ最高!!」
「おう、行こうぜ爆豪!」
「残り30秒だ!急がねぇと!」

爆発をやめた爆豪が、私の手に触れた。
さあ、今だ。
翼を消し、立ち止まる。
焦るな。

「おいやんぞ久地楽!!必殺技ァ!」
「手ェ握って!!」

切島の肩に乗せた手を上に向け、爆豪の右手とつながる。
爆豪がとにかくエンジンをふかし、私がそれを制御するイメージだ。
これ、実は試したことないんだけど。
大丈夫、私は本番に強いタイプ!!
行くよ、黒!
散々回収した怒りを纏めて爆豪の中の卵に流し込む。
即座に容量オーバーを起こした卵に、ひびが入った。
インナーで動的にシンクロしたせいで、つながった左手から爆豪の怒りの色が広がる。
寝食されるような悍ましい感覚に、私も爆豪も顔を歪めた。
大丈夫、割れろ!

「イメージは!」
「ドラゴンだ!!」
「そういうの好き」

爆豪の右半身、私の左半身が赤黒い色に覆われ、――卵が割れた。
その瞬間、爆豪の体から赤黒い怒りの感情が溢れだして、私がそれに右手で触れると巨大なドラゴンの形を取った。
大きさは実に、会場の四分の一ほどもある。

『うぉおおお!?なんだ!?突如としてあらわれたこのドラゴンは!!もしかしてありゃァ爆豪チームか!?ここに来てトンデモねえ必殺技かましやがって!!次から次へと飽きさせねぇな!!』

巨体を唸らせ、赤黒いドラゴンが勢いに任せて私たちの騎馬になり、氷へと突っ込んでいく。
残り、何秒だ!!
分厚い氷壁などものともせずに大穴を開けたドラゴンは、二つの騎馬を前に咆哮する。

「くそデク!!」
「違う!1000万は焦凍!!」
「半分野郎おおお!!」

爆豪は飛びあがってドラゴンの頭を駆けていく。
行け、爆豪!!
ドラゴンの鼻先で超加速した爆豪が、焦凍くんを捉える。
と、どいた!!?
焦凍くんの氷の槍を左手で爆破し、即座に焦凍くんの左側に回った爆豪はその首にあるハチマキを奪い取った。

「やった!爆豪!!!」

未だに赤い怒りでつながっているのを利用して、爆豪の足元に赤い羊をその体から生み出した。

『TIME UP!!第二種目!騎馬戦終了!!』

コールと共に爆豪が羊の上にべちょりと落ちた。
すぐに騎馬を崩してドラゴンから飛び降り、爆豪の傍に駆け寄る。
羊に埋まったままハチマキを握り締めて動かない。
えっ!?
だ、大丈夫かな!?

「爆豪!」
「平気かお前!」
「どうしたの!?」
「ぅうあああ!!!」

爆豪は顔も上げず、羊に埋まったその状態で地面を何度も叩きつけた。
マジでどうした!?
ついに頭がおかしくなってしまったのかとも思ったが、ハチマキを見て息をのんだ。
145……!?

「ぁあ……!」

焦凍くんはどれが1000万か分からないように裏返して結んでいたから、仕方がない……と言いたいけれど、それでも悔しかった。
爆豪の気持ちも、シンクロしたから痛いほどわかる。
アイツの深層にあるのは、驚くほど強い、劣等感。
だからこそ、上を目指し、そして全力を尽くしている。

『早速上位4チーム見て見よか!!1位――――』

1位から呼ばれる名の先頭に、爆豪は立てなかった。


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