Step.71



15分後。

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

え!?発表すんの!?
15分かけてもいまいち出てこない私はここに来て焦り始めた。
み、皆もう思いついてんの……?今日決めるの!?一生それかもしれないのに!?
ってか青山短文じゃん!!
よく分かんない……ヒーロー名よく分かんないぞ!
私が悩んでいる間も消太くんは既に芋虫状態だ。
くっそう、他人事だと思って!
そうこうしているうちにどんどんみんなのヒーロー名が決まっていく。
や、ヤバい。
この流れに乗らなければ発表し辛くなるぞ……!

「コトハさん、決まってないんですの?」
「決まってないんですのぉー……!!」
「名前でいいんじゃねぇのか」
「ショートくんはね!そういうとこあるしね!ウルトラマンとかでもそれでいいって言いそうだもんね!」
「別にそれでも―――」
「ダメだよ!色々!」

消太くんの場合はひざしくんのネーミングセンスがそこそこいい感じだったおかげで、後に恥ずかしいことにはならなかったが、人につけられた名前なんてそう簡単に使わないほうがいいに決まってる。絶対禍根残る。
どうしよう……!
百ちゃんのヒーロー名は確かクリエティだったか。
やっぱり個性に関係する感じだよなぁ。
私の個性は心……心かぁ。
んー……それじゃあ。
席を立って教壇に立った。

「えっと、マインドヒーロー ハーティ」
「ハートの形容詞!心のこもったいい名前ね!!」

ほっと胸をなでおろす。
爆豪が没になったせいで物凄くドキドキした。
よかったー……。
お休みしていた消太くんが薄目を開けてちらりとこちらを見た。
おっ、起きてる!?
教壇からの戻りがてらフリップをちらりと見せると、消太くんは目だけで頷き、またそっと閉じた。
良いのか悪いのか……。
後でひざしくんにも報告に行こう。
席に戻ると、焦凍くんが振り返ってフリップを覗き込んだ。

「いいんじゃねぇのか、ハーティ」
「あ、ありがと……」
「私もいいと思いますわ」
「ん、実はちょっと百ちゃんのパクった」
「あら、光栄ですわ」

笑う百ちゃんだったが、やはりどこか元気のない様子が見て取れて、何とも言えず苦笑を返した。
自信、失くしちゃったのかな。
何となく、自分のせいのような気がして、こつんと机に額をつけてうつむいた。
うーん……。


******


「さて、全員のヒーロー名が決まったところで、話を職場体験に戻す。期間は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡す。指名のなかった者は、予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件、この中から選んでもらう」

オファー久地楽宛と書かれたプリントが回ってきた。
五十音順かぁ。
ふと目に入ったエンデヴァーヒーロー事務所の文字に、とっさに焦凍くんを見た。
し、指名こっちに入ってるけど!?
何個でも指名だせるのかな、いや、そんなことしたらデカいヒーロー事務所の一人勝ちになっちゃうし、いやでも!?
後で消太くんに聞いてみよう。
物凄くドキドキした心臓を抑えて他に目を通す。
あ、い、う、え……。
う!?
ウシミツドキヒーロー事務所!?
ギャングオルカから指名入った!!
こ、これは、これしかないでしょ!?
同時に配られた希望体験先を記入する書類にウシミツドキヒーロー事務所と書き込んだ。
おそらく第一希望が通るんだろうけど第二、第三希望を書くところがあるってことは、必ずしもそうとは限らないのか。
「今週末までに提出しろよ」
第二希望……エンデヴァーヒーロー事務所にしようかな。
第一で決まるとすれば問題ないけど、そうじゃないとしたら。
……まあいいか!
第三希望にはファットガムヒーロー事務所と書き込み、チャイムが鳴った瞬間に消太くんを追いかけた。

「相澤先生!ちょっといいですか」
「個人的なことなら個室で聞くが」
「いや、ここでいいです。あの、プロのオファーって何件でも出せるんですか?」
「原則2件までだ。どうかしたか?」
「あ、エンデヴァーおじさんからオファー来てたんで、焦凍くんどうしたのかなって思っただけです!」

私宛のオファーの紙を見せると、消太くんはなるほどな、と頷いた。
ついでに即決した書類を渡して反応を伺う。
ウシミツ、エンデヴァー、ファットガム。
どれも武闘派のヒーロー事務所だ。

「お前がギャングオルカを好きなのは分かってる。憧れだけで決めたのか」
「憧れも、あるんだけど……前にあった時、体育祭見に来てた時なんだけど、『今年の1年はヴィランと対敵してるから、他との違いを見に来た』って言ってて、そういうプロが多いのかもしれないけど、私は思い至ってなかったから、そういう見方をする人もいるんだなぁって思って。だから、なんていうか……」

ぽす、と頭の上に手を乗せられて、思わず口を閉じた。
見上げれば、いつもと何ら変わらない顔で、別に怒るでもなく書類を眺めて居る消太くんがいた。

「まあ、考えてるならいいよ」
「あ、りがと」
「ございます、な」
「ございます!」



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