Step.79



緑谷が叫んだ何故と言う問いに、敵は雄英に落ちたからだと応えた。
明るい未来を持つ私たちが憎いのだと。

「要するに八つ当たりだろうが!クソ黒マントが!!」
「そうだね!でも独断専行はだめ!」

穴の淵で踏み切った爆豪に鳥を飛ばし、回収する。
こ、こいつ、あっちに人質がいるの忘れてるのかな!?
爆豪母が見せつけるように連れて来られ、悲鳴を上げた。
爆豪はお母さんに向かって勝手に捕まってんじゃねえよと声を張るが、さらに大きい声で爆豪母が怒鳴り返してきた。
この親子!!
お願いだから人質らしくしてて!
命がかかってるって言うのに条件反射かな!?

「クソがッ……」

珍しく焦っているような感じの爆豪に触れて焦りを回収する。
触んなって怒られるかと思ったけど、そんなこともなく、爆豪はすぐに体勢を立て直してしゃがんだまま私のほうも見ずに、口も僅かにしか動かさず小声で囁いてきた。
すごい冷静じゃん。

「体育祭のデケェ必殺技ぶちかまして、檻ごとかっさらう」
「犯人が外に出ればいいけど、中にいる以上賛成しかねるよ」
「出しゃいいんだろうが」
「あともう一個問題あって、あんなデカいのは出せない」
「くそポンコツじゃねぇかブス!!」

ひ、酷い言われようだ。
私だって爆豪が提案してくるならもっと良い作戦かと思ったよ。
結局ごり押しじゃんか。
ふぅ、と息をついて苦笑する。

「爆豪の怒りボルテージが低いってことだよ。冷静なのはいいことだけど」
「……人質全員乗る程度なら出せんのか」
「燃料面が自信ないけど、心をもらえれば」

視界の端では緑谷たちが何かをたくらんでいるようだ。
そういえば、爆豪の琴線って……。
爆豪に触れたまま、少しためらいながら口を開いた。

「緑谷、何か企んでるみたいだね。このまま緑谷に任せたら解決するんじゃないかな?」
「ああ!?んだてめぇコラ!!あんのクソデクに任せるだと!ざけんじゃねぇ!俺が一人で解決―――」

ごっそりと怒りの心を奪えば、爆豪はがくりと膝をついて地面を両手で叩きつけた。
あれ、待って間違った?
ぎろりと睨んでくる爆豪は何かと葛藤しているようでとにかく怖い。

「利用しやがったな……!」
「ご、ごめん」

でも振り払われないのをいいことに私に湧き出る怒りも次から次へと回収する。
今回は私の中にある卵に蓄積させてあるから爆豪とシンクロさせたりはしない。
あの時爆豪とドラゴンをシンクロさせたのは、専攻する爆豪に都合の良いように動いてもらうためだ。
私の卵だとやっぱり私が指示を与えないといけないから。

「ドウヤラ、ミエナイコバエガ、マギレコンデイタナ!」

透ちゃんが何かをしようとしたことに苛立ったのか、男は乱暴に檻の鍵を開け、外に出てきた。
チャンス!
爆豪と一瞬視線を交わし合い、互いに走りだした。
犯人が落としたライターのせいで、穴の中に巻いてあっただろうガソリンに引火し、熱風と共に炎が上がった。

「今が絶好のチャンスだろうがよ!!」
「かっちゃん!?」

淵から跳ぶのだろうと私が鳥で援護しようとすると、爆豪が何を察知したのか私を振り向いて「余計なことすんなビビり!」と怒鳴ってきた。
温存しろってことかな。
爆豪はお茶子ちゃんの個性を借りて、飛びあがった。

「焦凍くん氷結!」
「おう」

いつでも冷静沈着な焦凍くんは私の声に氷を生み出して犯人の足元を捕えた。
爆豪は怒鳴るけどそのおかげで捕まえられたのだから、ちょっとくらい焦凍くんに感謝しても罰は当たらないと思う。

「切島!人質を回収するから後衛を!」
「任せろ!」

卵を割って、巨大なマンタを出現させる。
比較的手の空いている面々に私に心を渡すようにお願いして作った。
マンタは切島を乗せるとすぐに檻のほうへと宙を泳いでいく。
その上空を、お茶子ちゃんの力によって浮いた緑谷たちが飛んでいった。
焦凍くんまで!?
ふと、爆豪の下で犯人がマントの下から手を出したのが見えた。

「爆豪!そいつ―――」

その直後リンゴの芯のように削られていた地面が、爆発音と共に崩壊を起こした。
すぐにマンタを檻の前につけて人質を全員乗せる。
が、重い!!
シャチョーと私を乗せるぐらいならわけなかったが、保護者全員はさすがに重い!

「焦凍くん足場を作って!!」

マンタも必死に上昇しようとするが、現状の高さを維持するので精いっぱいだ。
すぐに焦凍くんが中心のマンタを支えるように、崩れ落ちていく地面とこちらを氷結でつなぐが、この炎にあぶられている状況じゃいつまで持つか分からない。
爆発の影響で飛んでくる瓦礫や砂粒からは常闇のダークシャドウと切島が守っているから今のところ外傷は無いだろうが、あんな炎の中にいればすぐに酸素もなくなり、熱傷も負うだろう。
すぐに、何か考えなければ。
私は頭を動かそうとするが、マンタに鳥を飛ばして心を補給しているせいで上手く集中できない。

「こっちにいる奴らは久地楽に心を補給してやってくれ!こいつがガス欠起こしたら終わりだぜ!」

瀬呂が皆に呼びかけてくれたおかげで、何人かが私に触れて心をくれる。
でも、これじゃ根本解決には至らない。

「コトハちゃん!デクくんが氷の橋を滑ってこっちに渡ってくるって!!」
「だ、ダメだよ!中心部は炎からまだ遠いけど、氷の橋を渡るってことは焼肉みたいに炙られるってこと―――」
「大丈夫、もう出来ましたわ!」

百ちゃんの背中から、巨大な防火断熱シートが出現した。



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