Step.83
「怪我、大丈夫?」
「おう!リカバリーしてもらった!いつでも行けるぜ!!」
「よろしくね」
やっぱり気の合うやつがいいよね、うん。
爆豪&緑谷戦の戦闘を見ながら切島と手を繋ぐ。
切島と私のちょうど間に、二人の心を繋ぐためのクラウドのような第三のインナースペースを作る。
これで以心伝心とはいかないけど私の思考がなんとなく分かるくらいには、勘程度には働くはずだ。
体育祭の時に爆豪とシンクロしたときは、私の中に爆豪の心を呼びこんだから片利共生のような歪なシンクロの仕方をした。
でも今回は、まんまその意味でのシンクロを目指す。
正直、モデルテストは爆豪とのあれだけだから自信はないが、切島の心は今までさんざん触れて知っている。
「爆豪もそうだけどよ、緑谷も爆豪絡むと何か調子狂うよな」
「確かに」
言われてみればそうだ。
爆豪がいっつも怒鳴っているからそちらにばかり意識が言っていたけど、普段冷静な緑谷が爆豪を前にしてそれを失っている。
声が聞こえないせいで何を言っているのかは分からないが、それでも仲の悪さは見て取れる。
「仲良くすればいいのにね」
「いやいや、そういう単純な話じゃねぇだろ」
「そうかな」
「そうだろ」
たとえ互いに嫌いでも、強大な敵を前にして喧嘩なんて馬鹿にしてる。
もっとまじめに戦わないと。
「あ、殴った」
「あーあー!緑谷何やってんだよ!こんなところで仲間割れしてる場合じゃねぇって!」
切島の言葉にうんうんと頷く。
爆豪を殴った緑谷はすぐに倒れた爆豪を回収してオールマイトから逃げた。
長引きそうだな。
『切島』
心の中で切島を呼べば、切島がふとこちらを見た。
切島自身、どうしてこちらを見たのかも分からないような顔をして首を傾げる。
「あれ、いま呼んだか?」
「心の中で呼んだの。シンクロが進んでる証拠だよ」
「おー、便利だなこれ」
『切島、5+5は?』
切島は私のほうを向いたまま笑うだけで、心の声は聞こえていない様子だった。
うーん、まだか。
でもまあ、呼べば分かるってことは少なくとも10%くらいはシンクロできているはずだ。
モニターに視線を戻して、爆豪と緑谷を見る。
爆豪とシンクロしたからわかる。
きっと誰も、爆豪以外誰も知らないのだろうけど、彼は緑谷に対して凄まじい劣等感がある。
二人の関係性は全く知らないけど、きっと今まで見下してきた緑谷の急激な成長というあたりが原因だろう。
チームワークの欠片もない酷いチームだ。
路地で随分喧嘩した二人だったが、爆豪の専行に続いて緑谷が爆豪の篭手で最大火力を打ったことで、一時的にではあるが、オールマイトの動きを止めた。
「すげえ!!」
「あれって誰でも使えるんだね」
脱出ゲートへ向かう二人を、オールマイトが猛追し、捕まえた。
圧倒的過ぎる。
これ、勝てるのか……?
どちらにせよ、タイムリミットがある以上、あと十分ほどで決着がつく。
二人とも、満身創痍だ。
爆豪は緑谷を行かせるために捨て身の覚悟でオールマイトを足止めする。
顔面を捕えられ、地面に押さえつけられてもその心は折れない。
爆豪……。
そして、戦闘は終わる。
「……勝っちまった、オールマイトに」
緑谷は気絶した爆豪をオールマイトの元から救出して、ゴールへと走った。
私、置いていくかと思った。
爆豪が足止めしている以上、それが最善だし、爆豪だってそれを望んでいるだろうと思ったから。
けど、あの瞬間。
「俺らも、絶対に勝とう」
ぎゅ、と繋がった手を強く握られた。
「うん」
- 84 -
*前 | 次#
戻る