Step.84
私たちの実技試験場所は百ちゃんたちが消太くんと戦った市街地ではなく、爆豪たちが戦っていたような、ビルの立ち並ぶオフィス街だ。
やっぱり消太くんはこういう人工物のある場所のほうが戦いやすいのだろうか。
私と切島はビル群に隠れながら、ゴールを目指す。
切島と作戦を立てたときに、やっぱり捕まえた方がいいんじゃないかと言われたが、近距離戦闘を得意とする相手に対して、カフスという接近必須な捕獲道具で臨むのは私と切島の個性じゃ無理がある。
「久地楽!隠れろ!!」
ハッと振り向けば、切島が消太くんの捕縛武器によって捕まっていた。
マジか!?
せっかく燃料切れのリスクも背負いながら索敵用の蝶をたくさん出していたというのに、そのどれにも引っかからなかったなんて。
私はとっさに消太くんの視界から逃れた。
切島はおいてきたが、問題ない。
切島を選んだのはシンクロしやすいという理由のほかに、先にあげた5人の中で唯一、消太くんの捕縛武器に対抗することが出来るからだ。
消太くんは捕縛武器が邪魔になった時にすぐ切れるようにナイフを装備している。
って言うことは、あの布は切島にだって切れる。
たとえ捕まっても、個性さえ取り戻せば独力で脱出できるということだ。
『……ぃ……!!』
シンクロしているおかげで切島の前から消太くんが消えたことを察知する。
言葉を送ることが出来るほどシンクロを高めることはできなかったが、何となくの感情であれば伝わる。
その切島が必死に何かを伝えようとしてくれているのだが、それが何かは分からない。
シンクロの感覚から既に切島には個性が戻り、捕縛も解除したのを察知した。
後はそのことを知らない消太くんを私が陽動すれば、この作戦は完了する。
ライオンたちを従えて、四方に散らばる。
消太くん相手に個性は不利。
なら、シャチョーのとこで学んだ対人組手で何とかするしかない。
「とまあ、考えるよな」
「全部読まれてた!!」
あちこちで私の姿をちらつかせつつゴールに向かっていたのに、なぜか消太くんには出会わないし、いつまで経ってもゴール宣言が聞こえないから切島に声を送ったところで、やっと気づいた。
切島は捕縛され、そして私に信号を送った直後気絶させられていたのだ。
「起きて!!」
道路の真ん中に転がされていた、気絶している切島の頬を叩いて気付けをする。
端から全部読まれていた。
緑谷のように切島を抱えて一度路地に逃げ込みたいが、私の力ではそこまでの速力を出せない。
それに、目の前の消太くんがそれを許すとも思えない。
「試験だから俺が気絶させないとでも思ったのか?」
言葉に詰まる。
そうだよ、その通りだ。
この試験は生徒に合格する道を残すように出来ている。
だから、早々にリタイアさせるような手段はとらないと思っていた。
まあもちろん、ミッドナイト先生の眠り香ではないから、目覚めはする、と思うけど。
私は消太くんを前に構えた。
組み手で勝てるなんて考えていない。
でも。カフスをはめるぐらいなら、出来るかもしれない。
個性を奪われて消太くんの背後にあるゴールに走り抜けられない私は、ここに来て覚悟を決めた。
切島、頼むから出来るだけ早く、起きてね。
「行くよ、消太くん!!」
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