Step.95



「酷い目に遭った」
「ごめんってばー!」

飛びついてきたピンクを背負ったままお風呂上がりのコーヒー牛乳を自販機で買った。
百ちゃんや梅雨ちゃんたち長髪組はまだドライヤーをかけていたようだけど、私と三奈ちゃんのようなあまり気にしない女子は早々にタオルドライで済ませて肩にタオルをかけるだけだ。

「コトハ男子の大部屋行こうよ!」
「いいよ、響香ちゃんたちはどうする?」
「髪乾かしたら行くよ」
「んじゃ先行くねー!」

三奈ちゃんは私の手を取って響香ちゃんたちにぶんぶんと手を振った。
何で私の手で振るの。
ピンクの可愛いほっぺをむに、とつまんで引っ張ると暴力だ!と罵られた。
けらけらと笑いながら廊下を歩いていると、前から歩いてきた消太くんに呆れた視線を頂いてしまった。

「おい補習女子コンビ、明日から覚悟しておけよ」
「ひいぃいいい!!!」
「お、お手柔らかに!!」

三奈ちゃんとダッシュで逃げた。
こ、こっわ!!
歴戦の勇者が命からがら逃げのびたといったような風体の私たちは、男子の大部屋を前に互いの俊足に抱き合った。
さすがの速さだよ!!
めっちゃ怖かったもんね!

「うああああ補習やだよぉおお!」
「久地楽、と芦戸?なにしてんだ?」
「私はオマケかーい!」
「明日からの補習、死ぬかもしれない……」

珍しく髪を下ろしている切島が何を言っているのか分からない、という顔で首を傾げて、理解するのを諦めたのか「まあ入れよ!」と大部屋の戸を開いた。
おお!部屋広い!
でもまあ、よく考えてみればそうか。
10人以上の人間が雑魚寝するスペースを確保するにはこれぐらい必要なのだろう。

「コトハ」
「お、焦凍くん。遊びに来たよー」
「お前、男湯はだめだ」
「ご、ごめん!でも何も見てないよ」
「俺は見た」
「なにを!?」

体は黒が隠していてくれたっていうのに!?
ぴっちり覆ったから体の線は出たかもしれないが、それぐらいなものだ。

「お邪魔しまーす!」

焦凍くんを問い詰めようとしたとき、後ろから透ちゃんが元気よく入ってきた。
お、おう。
後ろにはお茶子ちゃんや百ちゃんもいる。
百ちゃん、髪の毛降ろしてて可愛い。
いつもと違うところを見るとなんだかドキドキするよね。

「わーほんとに広いんやねー」

お茶子ちゃんはきょろきょろとあたりを見回して、不思議そうに首を傾げた。
あ、次に言うこと分かる。

「あれ?デクくんは?」
「お茶子ちゃんはデクくんばっかだなー」

可愛いやつめーとなでなですると、想像よりもずっと激しめな否定が返ってきた。
あれ?
これってガチなタイプじゃん。
お茶子ちゃんって緑谷のこと好きなのか。
しかし皆は特に気にした様子もない。
んん……どっちだ?
ここまであからさまなのに誰も気づいていないのかな。
いや、むしろ気づいていて何も言わないのか。
なるほど、じゃあ私もあまり干渉しないほうがいいのだろう。

「緑谷なら洸汰くん抱えてマンダレイのとこ行ってたぜ」

特にお茶子ちゃんの様子に疑問を持った様子もなく答えた切島を眺めていると、焦凍くんに肩を叩かれた。
やっぱりお茶子ちゃん気になる?
てっきりお茶子ちゃんのことだと思って振り返ったが、いつもより読み取りづらい表情の焦凍くんに、一体なんだろうと首を傾げた。

「……コトハ、少し外出れるか」



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