▽ 十話

「おはようございます。まず初めに、お話ししておかなければならないことが有ります」

私は前置きをして、まんばさんと視線を交わし、かすかに頷く。

「戦場で重傷を負っていたあんたを、俺が拾い、こいつが直した」
「結果、前の主さんとの縁が切れ、私との縁が結ばれたようです」

私が恐る恐るそう言うと、おおくりからさんは心なしかほっとしたような仕草で私に向き直った。
あれ、なんか思ってた感じと違う。

「大倶利伽羅だ。誰が主だろうと関係ない。慣れ合う気はないからな」
「おっけー。おおくりからさんがいいならいいや。ってことです、こんのすけ」
「大倶利伽羅様には後ほど詳しくお話を聞かせていただきます。場合によっては刀解、召し上げもありますので、皆さまもご周知ください」

何だそれ。
私の心の声が聞こえたのか、こんのすけは視線から逃れるようにまんばさんの後ろに隠れた。
まんばさんと視線を合わせると何が言いたいのか分かったらしく、こんのすけを捕まえて私の前に出した。

「タヌキ鍋はあるけどキツネ鍋って聞かないよね。どんな味がするんだろうね」
「こ、こんのすけは美味しくないです!!」
「分かるよね、こんのすけくん、大人なんだから」
「一介の管狐には審神者様の高尚なお考えなど察することは……」
「狐の肉って臭いらしいけど、それでも食べて見たいなぁ。ねーまんばさん」
「あんたが作るんならきっと美味いんだろう」
「良きように計らいます!」

こんのすけはどろんと音を立てて消えた。
なにそれずるい。
動かないと太るぞ。

「ちなみにだけど狐肉は本当に臭いらしいから食べれないよ」
「分かってる」
「おい、次の出陣はいつだ」

おおくりからさんが話しかけてきたことに少し驚きつつ、表には出さないようにして応えた。

「お昼に一回予定してるけど、おおくりからさんは本調子じゃないだろうし休んでていいよ」
「俺は刀だ。戦場に出る」
「そっか、分かった。無理しなくていいから」

それからすっかり黙り込んでしまったおおくりからさんにご飯を残してあると告げたが、食事は必要ないと突っぱねられてしまった。
ご飯食べないなんて絶対損してる。
昼の出陣から帰ったまんばさんも秋田くんも、さり気なくご飯を一緒に食べようと誘ったが、断られたらしく、本日の昼食も三人で食卓を囲んだ。

「おおくりからさん、どう?」
「強い」
「すっごく強いです……でも」

秋田くんはまんばさんの言葉に頷きながら顔を曇らせた。

「何か、捨て身の攻撃っていうか……折れてもいいって、思ってるような感じがして、嫌です」
「そっか……」
「俺たちより強いからな、助けに入るわけにもいかない」
「死にたがってる感じはするの?」
「どうでしょう……僕には分からないです」
「単純に、命に頓着していないように感じる」

三人とも、少しの間黙って、この話は暗黙の了解で流れた。
せめて一緒に食事でもして何を考えているのか教えてもらいたいのだけれども。
食事を終えた私たちは食器を片付けるために台所に入った。
その時、まんばさんがぼそりとつぶやいた言葉が、妙に気になって秋田くんから少し離れたところで意味を問うた。

「最初の秋田くんと同じってどういう意味?」
「大倶利伽羅ほど顕著では無かったが、あいつも初めて戦場に立った時、自分自身に関心を持たず、替えの利く兵士として戦っている感じがあった」

まんばさんはそういって皿洗いに戻ったが、私は声をかけられるまでその場で考え込んでいた。


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