▽ 四話

「よろしくお願いしまぁぁああす」
「そのように気合を入れる必要はありませんよ?」
「様式美というやつです」

鍛冶妖精さんに札を渡し、資材を指定する。
こんのすけの指示ですべて50だ。

「では今回はこちらの手伝い札をお使いください」
「はーい。妖精さんお願いします」
「承りました」

手伝い札によって、新しい刀剣がすぐにできた。
妖精さんからそれを受け取り、まんばさんと顔を見合わせる。
どんな刀かな?
見た感じだと短刀なんだけど。
鍛刀小屋の隅にある小上がりでまんばさんに付き添ってもらって顕現する。

「秋田藤四郎です。外に出られてわくわくします!」
「秋田くん、審神者です。よろしくね」
「よろしくお願いします、主君!」
「か、可愛い……」

桃色のふわふわした髪を撫でて立ちあがる。

「秋田くん、この本丸にはまだまんばさんと私しかいないので、一緒に頑張っていこうね」
「はい!」
「それでは次に刀装を作りましょう!」

こんのすけに連れられて、隣の小屋に移った。
中がつながっているので、移動も楽だ。
母屋から少し離れたここは、火気を取り扱うため石造りの壁で他とは違う雰囲気がある。

「では先程と同じように資材を指定してください。今度は札はいりません」
「はーい」

またこんのすけの指導ですべて10に指定する。
まんばさんが空のガラス玉のようなものを持ち、妖精さんがそれに手を当てる。
一瞬、強く光って銀色に落ち着いた。

「これでいいだろう」
「軽騎兵・上です」

妖精さんに査定してもらい、私は曖昧に頷いた。
よく分かんないけど上っていうぐらいなんだから良い方なんじゃないかな。
興味津々という様子で、私が受け取った刀装を見ている秋田くんにそっと声をかけた。

「秋田くんもやってみる?」
「いいんですか?」
「どーぞ」
「資材の量は先程と同じでよろしいですか?」
「うん」

妖精さんに頷くと、秋田くんもまんばさん同じように空の球を持つ。

「出来ました!」
「軽歩兵・上です」
「おー二人とも優秀だねー」

偉い偉いと頭を撫でてあげれば秋田くんは嬉しそうに目を細め、まんばさんは鬱陶しそうに手を避けた。
なんだなんだ反抗期かな。
私だったら振り払うけど。

「では次は出陣してみましょう!」
「顕現したばっかりだけど、秋田くん行ける?」
「はい!」
「まんばさんも大丈夫?」
「ああ」
「では、城門のほうへ参りましょう」
「俺は戦支度をしてくる」
「じゃあ、門のほうで待ってるね」

秋田くんは顕現した状態のままで大丈夫な様子だったので、先程作った軽歩兵を渡して一緒に門へと向かう。
この辺りは非常に自然が豊かで、さまざまな木々より高いところに私の本丸がある。
石垣よりもさらに下へ階段を下っていけば裏手に海が、表には深い森が広がっていた。
そこから少し行けば川があり、上流には大きな滝が見える。
まだ下には行っていないがパッと見ただけでこれだけ分かるのだから、きっと探索したら楽しいのだろう。
非番の日にはでもみんなで遊びに行こうか。
一応週2で休みはもらっているから土曜日にでも遊びに出ればお仕事にも響かないだろうし。
ぐるりと眼下に広がる自然を見回し、今度は上へと視線をやった。
本丸よりも高い位置にある丘には、簡素な朱色の鳥居が一基だけ立っており、奥にか細い苗が植わさっている。
丘にあるあの苗は、審神者と刀剣男士たちの霊力で育っていくらしい。

「すまない、待たせた」
「大丈夫です!行きましょう隊長!」
「行ってくる」
「うん、気を付けてね」

しっかりと戦支度を整えたまんばさんに刀装を渡せば、神妙な顔で頷いて私に背を向けた。
秋田くんも楽し気に私に手を振り、まんばさんの後ろに続く。

「これからしばらく帰還を待ちましょう。おそらく傷を負って帰ってくると思いますので、先に手入れの説明をさせていただきますね」
「ところでお昼はキムチ焼うどんにしようかと思うんだけど秋田くんって子供舌かな」
「お話しを聞いていただけますか!!こんのすけは何でも食べられますよ!」
「分かった。やっぱりキムチは湯がくね」
「手入れ部屋に入ってしまえば、審神者様が直々に手をかける必要はございません。本来審神者様にお任せしていた手入れを手入れ部屋というシステムでお手伝いいたしております」
「札は?」
「手伝い札の使用は可能ですが、常用に消費されるものは資材のみです」
「了解」

私は立ったまま待つのも疲れるかと思い、門が視界に入る縁側に座った。
隣にこんのすけが座る。
自然は豊かだが、生き物の気配がしない。
門の向こう、森のほうからは少しばかり鳥の声が聞こえたりはするが、この本丸では鼠一匹、虫一匹見たことがない。

「そうしておられますと、まるで人形のようですね」
「こんのすけはお昼抜きね」
「なっ!褒め言葉でございます!私は整った顔立ちだと言いたかっただけで――」

じっとこんのすけを見る私に耐えられなくなったのか、弁解をやめてぺたりと尾を下ろした。

「無神経な物言いでした……」
「いいよ」
「……先程、ああは言いましたが、やはりこんのすけには審神者様が“空”であるとは思えません。なぜ、その様な、失礼ながら不名誉なお名前を拝領したのです?」
「私が“空っぽ”だからでしょ」

私が曖昧に答えたのをどう受け取ったのかは知らないが、こんのすけは気まずそうに頭を下げ、私と同じように門のほうに向き直った。

「また、出過ぎたことを申しました」

私はため息をついて空を見上げた。
空はあんなにきれいなのに。

「いいよ」


前へ次へ
戻る