▽ 閑話:あなたが好き


「今日は護衛いいよ、本丸待機してくれるかな」

神社の一室。
上元安奈は申し訳なさそうに準備をしていた短刀たちに言った。
今日は乱藤四郎、平野藤四郎の二振りが護衛の予定だった。

「えー!危ないよ主さん!」
「戦争が終わったとはいえ、まだ残党がいる可能性があります。せめて短刀一振りでもお傍に……」

言い募る短刀二振りに、安奈はごめんね、と呟いた。
二振りは沈黙する。
どちらも何かを言おうとして、口の中に留めた様子だった。

「分かったよ」
「どうか、お気を付けて」

空元気で笑う二振りに安奈は嬉しそうに頷いた。

「ありがとう」

部屋を出る直前、安奈は振り返り一瞬だけ泣きそうな顔をした。
けれど何も言わず、部屋を出て行く。

「戦争なんか、終わらなきゃよかった」

刀であった時はそれの意味も込められた思いも知らなかった雫を、乱藤四郎は拭いもせず床に落とした。
平野藤四郎は同意こそしなかったが、かといって否定もしなかった。
事件より、数か月前の話である。


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