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うみについて。
大きな船を案内されながら、この船の話を聞く。1から16までの隊に分かれていて、それぞれ隊長さんがいるとか。それ以外にも傘下の海賊がいるとか。海賊だけど家族とか、でも血の繋がりはないとか。まるで村みたいだなぁと思いながら、果物頭のおじさんについていく。
廊下を歩くおじさんが、ひとつの部屋の前で立ち止まった。
「……で、ここがお前の部屋だよい。きったねぇが、あとでエース達に掃除させる」
「掃除なら、自分でやります」
「だめだよい。自分から持ち込んできたんだ、これくらいはさせる」
「…そうですか…手伝うのもダメですか?」
「あぁ、そうだねい……してもいいが、今からお前に海の話をするからねい。それが終わってからなら、いいよい」
「海の話!」
それは、つまり。偉大なる航路の話ということだろうか。
正直、私は航海をしたことがない。ちょっとだけ漁船に乗らせてもらったことはあるけれど、島から島に渡ったことはない。だからといって他の島に行ったことがないわけじゃないけど、南の海にある島だけだ。偉大なる航路どころか、普通の海も知らない。
一通り船の中を見たあと、一番最初にお兄さんに連れてかれた部屋にきた。船長のおじいさんがいる部屋だ。
「船はどうだった、フロート」
「でっかかったです!」
「グララララ!体がでかいやつが多いからなぁ」
「ひともいっぱいでした」
「あぁ。みんな俺の息子だ」
そう言うおじいさんの目は優しい。大家族の長は、すごいなぁという気になる。
お兄さんがあんなにお人好しなのは、この人の影響なんだろうか。この船にいる人たちは、良い人ばかりだなって思う。
…一部、こわい人もいるけど。
「…なんだよい?」
「いえ…!お、お話を!」
「あぁ…そこ座れい」
……このおじさんは、ちょっと、苦手だったりする。
最初のこわい印象もあるんだろうけど、船の案内する時にも淡々としていて、怖かった。おじいさんの部屋に来たのは、ほんとに良かったかもしれない…二人きりは、ちょっと緊張する。
いいかい、と机に海図を広げたおじさんが話し出す。
「これも、正確かはわからねェ。うちの航海士が書いたもんではあるが…行ったことある海しか、わからねぇよい」
「はい」
「南の海で航海したことは?」
「ないです」
「…島から出たことは」
「あります。帽子使って」
「…そうかい」
完全に初心者だねい、とおじさんが呟いた。面目ない、です…。
「お前が海をどう思ってるか知らねぇが、海は危険だよい。天候に左右されるし、海の生き物も馬鹿に出来ねェ。その上おれ達は海賊だからねい、他の海賊と戦ったり、海軍に追われたりもする」
「海軍…」
「安心しろい。戦闘になったら船の奥に行かせるし、海軍に捕まったらまぁ、捕虜ってことにでもするかねい」
海軍の存在は勿論知ってる。あまり直接みたことはないけど、海軍は良いことをする人たちだ。悪い海賊を捕まえる人たちだ。
…あれ…じゃあ、この人たちは?良い人に見えるけど、でも、海賊だから…海軍に捕まるの?
じゃあそもそも、海賊って何なんだろう。海賊王になりたいわけじゃないなら、なんのために海賊やってるんだろう。
「次、いいかい?」
「あ、はい!」
意識を引き戻された。
おじさんがちらりと私を見る。
「…偉大なる航路の話だよい。南の海に出ればあとは楽だろうが、そこに行くまでが問題だ。来た道引き返すだけって言っても危ないよい」
「はい」
「特に、偉大なる航路は何が起こるかわからねェ。説明すら出来ないことが起きることだってある。一概に語れない海だよい」
「説明できないこと?」
「あぁ。普通じゃあり得ねェことも、この海ならあり得ちまう。まぁ、そうだな…おれたちも臨機応変に対処するしかねェ。わからない限りは何が正解かもわからねぇからよい」
「……」
「だから…はっきり言うと、お前も、いつ死ぬかわからねェ。常に死と隣合わせだと思ってろい。この船に、乗った限りは」
以上。これより詳しい話は、してもわからないだろい、とおじさんが話を閉めた。
広げていた海図をぐるぐる巻いて、しまう。
「…おじさん」
「おじ、…!?」
「おじさん、海賊楽しい?」
じっと見つめていれば、何やら動揺していたらしいおじさんが、真剣な顔になった。
探るような視線が向けられたけど、それにも真っ直ぐ見つめ返す。これは特に意味のない、純粋な質問だ。勿論おじさんが答えたくないなら、それも別に構わない。
おじさんが、ゆっくり口を開いた。
「…おれ個人の意見としちゃあ……楽しいよい、すごく」
結局おじさんは、答えた。まだ、窺うような様子のまま。
海賊は、わるいこと。でもこの人たちは私からしたら良い人で、そして海賊が楽しいという。
その魅力が何なのか、私にはさっぱりわからないけど。もしかしたら皆が皆わるい人というわけでも、ないのかもしれない。もしかしたら良い海賊も、この海にはたくさんいるんだろうか。
…私の島に来たあいつらは、わるい海賊だったけど。
「あのね、おじさん」
「……なんだよい」
「色々、ありがとうございます。…おじいさんも」
良い海賊もいる。悪い海賊もいる。
でもやっぱり、きっと、悪い海賊の方が多いと思うんだ。人の島を荒らして、人を傷つけて、優しさの欠片もない海賊が、いっぱいだと思うんだ。
その中で…この海賊団に巡り会えたのは、すごく、運の良いことだった。
奇跡とも、言えるくらいに。
「自分のできることはやります。迷惑にも、邪魔にもならないようにします。これからしばらく…よろしくお願いします!」
思い切り頭を下げる。
それにはまたおじさんが動揺しているみたいで、雰囲気から伝わってくる。どうしていいかわからないように、無駄に動いてる足元が見えた。
「お、親父…!」
「マルコ、随分情けねェなァ」
グララララ、とまた楽しそうに笑うおじいさんに。
この人、マルコさんていうのか。なんて、おじさんに自己紹介されていなかったことに気づいた。
「マルコ、さん?マルコおじさん?」
ひょこりと顔をあげてそう言えば、またおじさんが動揺したような、複雑そうな顔をして、
「…マルコさん、がいいよい」
と、主張した。
- 5 -
廊下を歩くおじさんが、ひとつの部屋の前で立ち止まった。
「……で、ここがお前の部屋だよい。きったねぇが、あとでエース達に掃除させる」
「掃除なら、自分でやります」
「だめだよい。自分から持ち込んできたんだ、これくらいはさせる」
「…そうですか…手伝うのもダメですか?」
「あぁ、そうだねい……してもいいが、今からお前に海の話をするからねい。それが終わってからなら、いいよい」
「海の話!」
それは、つまり。偉大なる航路の話ということだろうか。
正直、私は航海をしたことがない。ちょっとだけ漁船に乗らせてもらったことはあるけれど、島から島に渡ったことはない。だからといって他の島に行ったことがないわけじゃないけど、南の海にある島だけだ。偉大なる航路どころか、普通の海も知らない。
一通り船の中を見たあと、一番最初にお兄さんに連れてかれた部屋にきた。船長のおじいさんがいる部屋だ。
「船はどうだった、フロート」
「でっかかったです!」
「グララララ!体がでかいやつが多いからなぁ」
「ひともいっぱいでした」
「あぁ。みんな俺の息子だ」
そう言うおじいさんの目は優しい。大家族の長は、すごいなぁという気になる。
お兄さんがあんなにお人好しなのは、この人の影響なんだろうか。この船にいる人たちは、良い人ばかりだなって思う。
…一部、こわい人もいるけど。
「…なんだよい?」
「いえ…!お、お話を!」
「あぁ…そこ座れい」
……このおじさんは、ちょっと、苦手だったりする。
最初のこわい印象もあるんだろうけど、船の案内する時にも淡々としていて、怖かった。おじいさんの部屋に来たのは、ほんとに良かったかもしれない…二人きりは、ちょっと緊張する。
いいかい、と机に海図を広げたおじさんが話し出す。
「これも、正確かはわからねェ。うちの航海士が書いたもんではあるが…行ったことある海しか、わからねぇよい」
「はい」
「南の海で航海したことは?」
「ないです」
「…島から出たことは」
「あります。帽子使って」
「…そうかい」
完全に初心者だねい、とおじさんが呟いた。面目ない、です…。
「お前が海をどう思ってるか知らねぇが、海は危険だよい。天候に左右されるし、海の生き物も馬鹿に出来ねェ。その上おれ達は海賊だからねい、他の海賊と戦ったり、海軍に追われたりもする」
「海軍…」
「安心しろい。戦闘になったら船の奥に行かせるし、海軍に捕まったらまぁ、捕虜ってことにでもするかねい」
海軍の存在は勿論知ってる。あまり直接みたことはないけど、海軍は良いことをする人たちだ。悪い海賊を捕まえる人たちだ。
…あれ…じゃあ、この人たちは?良い人に見えるけど、でも、海賊だから…海軍に捕まるの?
じゃあそもそも、海賊って何なんだろう。海賊王になりたいわけじゃないなら、なんのために海賊やってるんだろう。
「次、いいかい?」
「あ、はい!」
意識を引き戻された。
おじさんがちらりと私を見る。
「…偉大なる航路の話だよい。南の海に出ればあとは楽だろうが、そこに行くまでが問題だ。来た道引き返すだけって言っても危ないよい」
「はい」
「特に、偉大なる航路は何が起こるかわからねェ。説明すら出来ないことが起きることだってある。一概に語れない海だよい」
「説明できないこと?」
「あぁ。普通じゃあり得ねェことも、この海ならあり得ちまう。まぁ、そうだな…おれたちも臨機応変に対処するしかねェ。わからない限りは何が正解かもわからねぇからよい」
「……」
「だから…はっきり言うと、お前も、いつ死ぬかわからねェ。常に死と隣合わせだと思ってろい。この船に、乗った限りは」
以上。これより詳しい話は、してもわからないだろい、とおじさんが話を閉めた。
広げていた海図をぐるぐる巻いて、しまう。
「…おじさん」
「おじ、…!?」
「おじさん、海賊楽しい?」
じっと見つめていれば、何やら動揺していたらしいおじさんが、真剣な顔になった。
探るような視線が向けられたけど、それにも真っ直ぐ見つめ返す。これは特に意味のない、純粋な質問だ。勿論おじさんが答えたくないなら、それも別に構わない。
おじさんが、ゆっくり口を開いた。
「…おれ個人の意見としちゃあ……楽しいよい、すごく」
結局おじさんは、答えた。まだ、窺うような様子のまま。
海賊は、わるいこと。でもこの人たちは私からしたら良い人で、そして海賊が楽しいという。
その魅力が何なのか、私にはさっぱりわからないけど。もしかしたら皆が皆わるい人というわけでも、ないのかもしれない。もしかしたら良い海賊も、この海にはたくさんいるんだろうか。
…私の島に来たあいつらは、わるい海賊だったけど。
「あのね、おじさん」
「……なんだよい」
「色々、ありがとうございます。…おじいさんも」
良い海賊もいる。悪い海賊もいる。
でもやっぱり、きっと、悪い海賊の方が多いと思うんだ。人の島を荒らして、人を傷つけて、優しさの欠片もない海賊が、いっぱいだと思うんだ。
その中で…この海賊団に巡り会えたのは、すごく、運の良いことだった。
奇跡とも、言えるくらいに。
「自分のできることはやります。迷惑にも、邪魔にもならないようにします。これからしばらく…よろしくお願いします!」
思い切り頭を下げる。
それにはまたおじさんが動揺しているみたいで、雰囲気から伝わってくる。どうしていいかわからないように、無駄に動いてる足元が見えた。
「お、親父…!」
「マルコ、随分情けねェなァ」
グララララ、とまた楽しそうに笑うおじいさんに。
この人、マルコさんていうのか。なんて、おじさんに自己紹介されていなかったことに気づいた。
「マルコ、さん?マルコおじさん?」
ひょこりと顔をあげてそう言えば、またおじさんが動揺したような、複雑そうな顔をして、
「…マルコさん、がいいよい」
と、主張した。