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「夏になる前にちょっと切りたいんです。肩上くらい、かな……」
「……ん」
………最早人見知りしてるのは私ではなく従業員側の方が酷い気がしてきた。
というかもっというなら、なんかもう……ただのダメなおじさんに見えてきたよ……。
spring splice
私が客と気付いたら仕事モードになるかと思いきや、余計しどろもどろするだけでした。ちなみにおちゃめな髪型をしてるその人は、店長さんらしい。従業員のお兄さんの方が笑顔対応出来てるんですが……それでいいんですか、店長さん。
もう既にダメなおじさんのレッテルが私の頭の中で確定しそうな勢いです。まるでダメなわけじゃないだろうから、マダオではありません。多分。
しどろもどろしながら店長さんは私を椅子を座らせ、どうしたいのか聞いてきた。ちなみに荷物はお兄さんがにこやかに預かってくれた。
今日来た目的自体はそんな難しいことじゃない。ちょっと短くなるだけならいっそすくだけでもいい気さえする。まぁどうせならと、ちゃっかり普通のカットお願いしたけど。
そして現在。
お兄さんが気持ちよく髪を塗らしてくれた後椅子に座り、店長さんと鏡越しの対面です。
「……じゃあ切っていきます、よい」
「はい」
………その、よいって……なんなんだろう。
なんだか一々気になる人だなぁといっそ微笑ましくさえ思えてきた。普段割と人見知り……とまではいかないけど、相応に緊張する私にしては珍しく余裕があるかもしれない。多分私より店長さんの方が心配だからだと思う。
「……この店には」
「え?」
「この店には……どうやってきたんだい?」
「………えっと…」
どうやって、と言われましても……。さっき道案内したってお兄さん言ってた気がする。じゃあ交通手段みたいな?それもどうなんだろう。
シャキシャキと決して痛くない、寧ろ気持ちよくすら感じるハサミだけが軽やかだ。店長さんの意識も半分以上は切るのに集中してるらしくて、私だけが一方的な気まずさを感じてる気がする。……あれ、さっきと逆転してる……?
どう答えようか、とりあえず徒歩でと言ってみようかと口を開いたところで、店長さんがあ、と声を漏らした。
「間違えた」
「えっ」
「どういう経緯で、この店を知ったんだい?」
「あぁ……」
一瞬髪切るのを間違えたのかと思った……。
「えっと、知人にオススメされたんです」
「知人?誰か聞いてもいいかい?」
「えええ、っと……サッチっていう人なんですが……」
「………サッチ!?」
ぎょっと、店長さんが目を丸くする。それに私まで驚けば、店長さんはまたおろおろしてすまないよい……!って謝った。え、な、なんですか!?
「え、さ、サッチが誰かわかりまし、た?」
「わかるも何も、うちの店に来たことあるサッチは1人しかいないからねい……」
「……仲いいんですか?」
「まぁ……少し、な」
なんだろうその歯切れの悪さ。首を傾げそうになったら、店長さんに正された。「真っ直ぐしてないと切れないよい」……すみま、せん…。
「元から知り合いだったわけじゃねェが、アイツとは飲みに行ったりもしてるんだよい」
「へー…」
「まさかアイツの知人に若い女の子がいるなんて思ってなくてねい……びっくりしたよい」
「……あぁ、そうですよねぇ。私がというよりあれなんです、私の父とサッチが知り合いで」
「あぁ、それでかい」
合点がいったというように店長さんは頷いた。
店長さん自身の雰囲気は、もう緊張もなければ心配する余地もなさそうだった。
「さて……となると、だ」
「?」
「尚更文句言われねェように切らなきゃ……な」
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「……ん」
………最早人見知りしてるのは私ではなく従業員側の方が酷い気がしてきた。
というかもっというなら、なんかもう……ただのダメなおじさんに見えてきたよ……。
spring splice
私が客と気付いたら仕事モードになるかと思いきや、余計しどろもどろするだけでした。ちなみにおちゃめな髪型をしてるその人は、店長さんらしい。従業員のお兄さんの方が笑顔対応出来てるんですが……それでいいんですか、店長さん。
もう既にダメなおじさんのレッテルが私の頭の中で確定しそうな勢いです。まるでダメなわけじゃないだろうから、マダオではありません。多分。
しどろもどろしながら店長さんは私を椅子を座らせ、どうしたいのか聞いてきた。ちなみに荷物はお兄さんがにこやかに預かってくれた。
今日来た目的自体はそんな難しいことじゃない。ちょっと短くなるだけならいっそすくだけでもいい気さえする。まぁどうせならと、ちゃっかり普通のカットお願いしたけど。
そして現在。
お兄さんが気持ちよく髪を塗らしてくれた後椅子に座り、店長さんと鏡越しの対面です。
「……じゃあ切っていきます、よい」
「はい」
………その、よいって……なんなんだろう。
なんだか一々気になる人だなぁといっそ微笑ましくさえ思えてきた。普段割と人見知り……とまではいかないけど、相応に緊張する私にしては珍しく余裕があるかもしれない。多分私より店長さんの方が心配だからだと思う。
「……この店には」
「え?」
「この店には……どうやってきたんだい?」
「………えっと…」
どうやって、と言われましても……。さっき道案内したってお兄さん言ってた気がする。じゃあ交通手段みたいな?それもどうなんだろう。
シャキシャキと決して痛くない、寧ろ気持ちよくすら感じるハサミだけが軽やかだ。店長さんの意識も半分以上は切るのに集中してるらしくて、私だけが一方的な気まずさを感じてる気がする。……あれ、さっきと逆転してる……?
どう答えようか、とりあえず徒歩でと言ってみようかと口を開いたところで、店長さんがあ、と声を漏らした。
「間違えた」
「えっ」
「どういう経緯で、この店を知ったんだい?」
「あぁ……」
一瞬髪切るのを間違えたのかと思った……。
「えっと、知人にオススメされたんです」
「知人?誰か聞いてもいいかい?」
「えええ、っと……サッチっていう人なんですが……」
「………サッチ!?」
ぎょっと、店長さんが目を丸くする。それに私まで驚けば、店長さんはまたおろおろしてすまないよい……!って謝った。え、な、なんですか!?
「え、さ、サッチが誰かわかりまし、た?」
「わかるも何も、うちの店に来たことあるサッチは1人しかいないからねい……」
「……仲いいんですか?」
「まぁ……少し、な」
なんだろうその歯切れの悪さ。首を傾げそうになったら、店長さんに正された。「真っ直ぐしてないと切れないよい」……すみま、せん…。
「元から知り合いだったわけじゃねェが、アイツとは飲みに行ったりもしてるんだよい」
「へー…」
「まさかアイツの知人に若い女の子がいるなんて思ってなくてねい……びっくりしたよい」
「……あぁ、そうですよねぇ。私がというよりあれなんです、私の父とサッチが知り合いで」
「あぁ、それでかい」
合点がいったというように店長さんは頷いた。
店長さん自身の雰囲気は、もう緊張もなければ心配する余地もなさそうだった。
「さて……となると、だ」
「?」
「尚更文句言われねェように切らなきゃ……な」