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「ほんともったいないよねー」


友人はそう言って呆れた。






spring splice






曰く、私の髪は割と綺麗だったらしい。
曰く、友人は私の髪が好きだったらしい。


「そう言われても……暑いし…」
「でもさ?それなら髪アップにすればよくない?」
「えー…手間かかるもん」
「えぇーっ?」


もったいないなぁもったいないなぁと、友人は私の髪を軽く撫でた。髪アップとか言われても、もう切ってしまったものは戻ってこない。いくらもったいないと言われても、時既に遅しなのだ。


「私なんかずっとショートだよ……部活なければなぁ」
「でもソフト、好きなんでしょ?」
「うん、好きー」


仕方ないよねなんて言う友人は、呆れながらも嬉しそうだった。それを見ているだけで私まで嬉しくなるような、少しだけ羨ましいような。
好きなことがあるって、いいよなぁ。

思わずへにゃりと笑ったら、友人はじっとこちらを見てきた。 



「…小春はさぁ」
「ん?」


「恋とか、しないの?」




……………うん?

突然の話題の変化球に頭が一瞬追い付かない。首を傾けると、友人は深い溜め息をついた。


「だってさぁ、髪も躊躇なく切っちゃうし、男の子の話題は出ないし、私だけサークル楽しんじゃって申し訳ないじゃん」
「え、えええ?私十分楽しんでるから、気にしなくていいよ?」
「だーめ!それじゃ私がつまんないじゃん!自分が出来ない分、せめて周りからの話聞きたいじゃん!」
「そっちが本音……!」
「なんかないの?浮きよだった話とか、なんか最近素敵な出会いしたとかさ」


うー、ん?
もう一度首を傾げる。言われて気づいたけど、そういえば私はそういう話が本当に出ない。おかしいなぁ、別に興味がないわけじゃないはずなんだけど……疎いのかな。
けれど、きっと見落としてるだけで何かあったのかもしれない。友人は呆れながらもキラキラした目で見てくるし、恋、とまでは行かなくてもなにか素敵な出会いだとか、カッコいい人を見たとかなかっただろうか。素敵な出会い………。

………出会い?



「……くだもの…」
「え?」


はっとして手を振るが、友人は既に興味を持ってしまったようだった。なになに、と更に目を輝かせている。くだものって言葉にはなんの効力もないはずなのにな……。


「何でもないよ?」
「うっそだー!今絶対なんか思いだそうとして浮かんじゃった感じじゃん!」
「んー、まぁそうなんだけど……あの人たちはカッコいいけど違うっていうか……」


頭くだものだし……。


「いやいや小春、それが間違ってるんだよ!」
「ん?」
「最初から違うって思ってたら、そりゃあ相手のこと何も理解出来ないし発展しないじゃん。相手のことわかんなきゃ、恋なんか出来ないよ」


……確かにそう、かも。
別に店長さんとか、あの店員さんとかサッチとかが良い、とかじゃなくて。そういうわけじゃなくても、友人のいうことは正しい。私にそういう話題が出ないのはその辺の意識の差にあるのかな。

………でも、恋愛対象とかっていうのは、


「……やっぱり、違うって」


思うんだけどなぁ。

曖昧に言えば、友人は溜め息をついた。そして、全くこの子は!と頭をはたいてきた。いたい……。
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