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招かぬ幸に笑う


 ――ぼやあっと、する。

 まどろんだ意識の中、目を覚ます。うっすらとした視界に写るのはよくテレビとかで見る立派な日本家屋って感じの建物と、石畳。どうやら私は地面に寝転がっているらしい。直接肌が当たっている腕と頬が冷たかった。

(……どこだ、ここ)

 ぱしぱし。目を瞬いて、状態を起こす。乱れていた髪を手櫛で整えて、改めて辺りを見渡した。木がいっぱいある。めっちゃ広い。なんだここ。考えてみてもやっぱりわからなかった。多分知らないところであるのには間違いないとは思う。
 ふむ。顎に手を添え考える。この直前まで何してたっけ。大して真剣になる気はおきなかったので、ゆっくり、ざっくり、思い出す。……学校行って帰ってきてからだなぁ。となると。

「……とうらぶ?」

 だったはず……。
 思い出された直前の記憶はパソコンで、確かにゲームをやろうとしてたはずだった。ロードが遅いからじゃあその間に飲み物取りに行こう、とキッチンに向かいオレンジジュースをコップに注いだのは覚えてる。それでその後は……わからんな。そこが直前のようだ。

「しまった……何も覚えてねぇんだなあ……」

 ちくしょう、と軽く呟き、立ち上がる。状況は相変わらずわからないけど、不思議と焦ってはいなかった。
 部屋着代わりに着てる高校のジャージをはたいて土埃を落とす。ふざけやがって〜と怒ってもいないのに悪態を吐きつつ、腰に手を当て正面を見据えた。やっぱり日本家屋だ。周りは木。後ろはでっかい門。門の先は見えない。
 前進するしかないのかなぁ。前に行くか後ろに行くか迷いながら、その場に突っ立つ。知らん人ん家を訪ねたくはない。でも人に聞かんとここがどこかもわからない。まさに究極……ちょっと楽しくなってきて顔がにやける。

「ん〜……とりあえず外かな」

 まず自力探索して、そっから人に聞こ。出来れば誰かに頼りたくないもん。
 よしゃ、と小さく掛け声かけて、踵を返す。そびえ立つ門は中々にでかく、丈夫そうだ。これも石で出来てるっぽい。
 重そうだけど開くの?とおそるおそる扉に触れるも、ひんやりした門は動く気配もなかった。ぐん、と右手に力を入れてみるがびくともしないので、こりゃ両手でも無理だろうなと早々に諦める。無駄なことはしたくない派である。

(ならこの辺をふらっとしてー、ちょっと木の中にも入ってみてー、そんでだめなら日本家屋だなぁ〜)

 念のため左手も添えて軽く扉を押し、うんやっぱだめだわと確認。今度は右側に体を方向転換させようとしたところ、くい。……後ろから服を引っ張られた。
 んんん……?

「は、」
「っあるじさま!」
「いっ!?……てぇ……!」

 がつん!振り向いた途端腹に衝撃。何かがアタックしてきたらしい。そして踏ん張りきれず押されれば後ろの扉に頭をぶつけ、……おいふざけんな、痛すぎか……!めちゃんこ痛い泣きそう。あと腹も地味に痛い。
 ずるずると扉に添ってしゃがみこみ、うずくまる。頭を擦りながら唸っているとわたわた動く影が見えて、あぁ〜子供かな?とその小さめな影に納得する。痛いけど、これも子供のやったことならしょうがねぇなぁ。私の心は案外広い。

「ごめんなさい、だいじょうぶですか?あるじさま……」
「……痛い」
「や、やまんばさん、どうしましょう……!」
「俺に聞くな」

 ……どうやらもう一人いるらしい。
 おくすりがひつようですか?薬なんてないぞ?という会話を聞きながらゆっくりと立ち上がると、二人が静かになった。あれ、そのまま話してていいのにな。軽く申し訳なさを感じつつ、声の主を見た。

「あるじさま、へいきですか……?」
「……冷やすか?」

 ――白髪赤目の子供と、白い布被った青年。あからさまに怪しい。
 二人して心配そうな目を向けてきたけれど、それよりこの二人はどっからどう見ても通報ものじゃないだろうか、というのが私の気になるところだった。頭痛はもういいわこっちの方が問題だわ。ここがコスプレイベントの会場ならいいけど、そうじゃないならこれはなんというか、うわあ……うわあ。気を抜くと顔が歪んじゃいそうだった。

(……ん、でも……)

 少し、もやっとする。
 なんか――見覚えがあんなぁ。
 布の彼にしがみついてこちらを伺う子供が、不安そうに私を見上げてくる。布の彼は顔を隠すように更に深く布を被り、子供の肩にそっと手を添えた。私がじっと見たのが駄目だったらしい。
 けど。その姿ではたと。一つ思い出す。
 ――この組み合わせは割とつい最近、見たばっかだった。

「……とうらぶか」

 確信持ってハッキリ呟けば、二人の肩がびくりと跳ねた。
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