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茨は心の中にある
――二二〇五年では、歴史を改変しようとする歴史修正主義者と時の政府の戦いが繰り広げられている。
ゲームの中の設定はそのまま真実であり、実際に存在する審神者が未来で刀剣男士と日々頑張っている。
しかし、それだけでは手が足りず、仕方なく政府は「直接」歴史修正主義者と戦う審神者と、「間接的に」戦う審神者とで、その戦力を分散させようとした。
つまり。「過去のゲーム」という媒体を使い、サイバーテロによる歴史修正を阻止しようとした。
「……で、過去の審神者……ゲームプレイヤーが本当に本丸に来ちゃうのを『かみかくし』ですか……中々出来てんな」
「……あるじさま、これ、げんじつですからね」
「わかってます」
山姥切国広と今剣に案内されて入った日本家屋もとい本丸は、基本は和室で時折現代の様式が入ってるといったところか。一応都会暮らしだった私には慣れない景色だったが、田舎ってこんな感じかなと思えば楽しかった。ここ未来らしいけど。
「でも確かにそうだよな、過去に行って直接歴史を変えなくても、記録を変えりゃそれは歴史修正になり得る……所詮今の歴史も、記録頼りで真実かどうかは別か……」
「あるじさま……」
「未来なら紙よりデータの記録なのかな。だとしたらサイバーテロってほんと、中々出来てる」
未来すげえ。歴史修正主義者、意外と頭いい。なんて山姥切国広から聞いた説明に感心していると、今剣が困ったように止めようとする。まぁ彼らからしたら敵なのだから、その反応は当然か。
私がここに来てしまったのは「かみかくし」と呼ばれるようで、本来ならあり得ないことらしい。原因は不明。本丸は時間とか時空とかそういったものが曖昧な空間のようで、彼ら曰く本丸自体が神様の領域に等しいらしかった。かみかくしって言うくらいなら原因は君達じゃないか?と思ったが「ぼくたちはかみですが、ようかいでもあります。それにもとはただのかたな……かみらしいちからは、よくわかりません」と言われてしまったので、じゃあ仕方ねぇなと思って終った。
「……だから、アンタには悪いが、アンタにはしばらくここに居てもらう」
「戻る方法はないんですか」
「今のところは」
「ここにいて戻れる保証は」
「……わからない」
「神様として心当たりは」
「……」
確認のために質問攻めにしたところ、山姥切国広と今剣が相談するように顔を見合わせた。困らせる気はないぜ、と言ってみようかと思ったけどめんどうだったのでやめた。この二人が何を考えてるかなんて、私には知らない。
うろり。今剣が私の顔を見て、眉を下げ震える瞳で口を開いた。「……もし」弱々しい声だ。
「もし、あるじさまがかえるほうほうがわかったら……あるじさまは、かえりますか」
「帰るね」
「っ……そう、ですか」
今剣はしゅんとしたように一度視線を下げ、すぐに笑みを浮かべまた私を見た。「それは、そうですよね」。眉は下がったままなので全く説得力がない。
視線を下げたのは山姥切国広も一緒で、こちらは誤魔化す気がないようだ。俺が写しだから……と聞こえ辛いほど小さな声で呟くのが聞こえ、あぁこいつそういえばそうだったと思い出す。写しが何なのかよくわからんが、彼を選ぶ時にネガティブ野郎だなと認識したことは覚えてる。ちょっとめんどくさそうなタイプだ。
「で、心当たりは?」
「……無いな」
「じゃあ帰れませんね。ちくしょー、どうすっかなー」
別段困るようなことは浮かばなかったけれど、やはり原因すらわからないというのはもやもやするものだ。困りはしないが、ここに居たいとも思わないし。なら帰るにはとりあえずゲームクリアか?刀集めか?トリップって言ったらそうなんのかな。……いっけね、トリップっていうよりタイムスリップか……これは詰んだな。
がしがしと頭を掻き、あーと唸る。何から取り組むべきか、今は何も出来そうにない。
(……別に、いいかな)
思考はだいぶぼんやりしているけど、きっと言えることなんてそれしかない。考えるのはストップした。
「……あ、ここに居るのは大丈夫なんでしたっけ?」
「! あぁ。ここはアンタの本丸だからな」
「ぼくたちは、あるじさまのかたなですから!」
「……ゲームの?」
「げーむだけど、ぼくたちはげんじつです」
「そうか」
そりゃどうも、と軽く頭を下げる。
――でも。
「有り難いけど、私は主扱いしなくていいですよ」
「――え」
「私はあなた達の主じゃないし、なる気もないんで」
それより使って良い部屋あります?
首を傾げて問いかければ、二人は目を見開き口を開け、固まっていた。
- 3 -
ゲームの中の設定はそのまま真実であり、実際に存在する審神者が未来で刀剣男士と日々頑張っている。
しかし、それだけでは手が足りず、仕方なく政府は「直接」歴史修正主義者と戦う審神者と、「間接的に」戦う審神者とで、その戦力を分散させようとした。
つまり。「過去のゲーム」という媒体を使い、サイバーテロによる歴史修正を阻止しようとした。
「……で、過去の審神者……ゲームプレイヤーが本当に本丸に来ちゃうのを『かみかくし』ですか……中々出来てんな」
「……あるじさま、これ、げんじつですからね」
「わかってます」
山姥切国広と今剣に案内されて入った日本家屋もとい本丸は、基本は和室で時折現代の様式が入ってるといったところか。一応都会暮らしだった私には慣れない景色だったが、田舎ってこんな感じかなと思えば楽しかった。ここ未来らしいけど。
「でも確かにそうだよな、過去に行って直接歴史を変えなくても、記録を変えりゃそれは歴史修正になり得る……所詮今の歴史も、記録頼りで真実かどうかは別か……」
「あるじさま……」
「未来なら紙よりデータの記録なのかな。だとしたらサイバーテロってほんと、中々出来てる」
未来すげえ。歴史修正主義者、意外と頭いい。なんて山姥切国広から聞いた説明に感心していると、今剣が困ったように止めようとする。まぁ彼らからしたら敵なのだから、その反応は当然か。
私がここに来てしまったのは「かみかくし」と呼ばれるようで、本来ならあり得ないことらしい。原因は不明。本丸は時間とか時空とかそういったものが曖昧な空間のようで、彼ら曰く本丸自体が神様の領域に等しいらしかった。かみかくしって言うくらいなら原因は君達じゃないか?と思ったが「ぼくたちはかみですが、ようかいでもあります。それにもとはただのかたな……かみらしいちからは、よくわかりません」と言われてしまったので、じゃあ仕方ねぇなと思って終った。
「……だから、アンタには悪いが、アンタにはしばらくここに居てもらう」
「戻る方法はないんですか」
「今のところは」
「ここにいて戻れる保証は」
「……わからない」
「神様として心当たりは」
「……」
確認のために質問攻めにしたところ、山姥切国広と今剣が相談するように顔を見合わせた。困らせる気はないぜ、と言ってみようかと思ったけどめんどうだったのでやめた。この二人が何を考えてるかなんて、私には知らない。
うろり。今剣が私の顔を見て、眉を下げ震える瞳で口を開いた。「……もし」弱々しい声だ。
「もし、あるじさまがかえるほうほうがわかったら……あるじさまは、かえりますか」
「帰るね」
「っ……そう、ですか」
今剣はしゅんとしたように一度視線を下げ、すぐに笑みを浮かべまた私を見た。「それは、そうですよね」。眉は下がったままなので全く説得力がない。
視線を下げたのは山姥切国広も一緒で、こちらは誤魔化す気がないようだ。俺が写しだから……と聞こえ辛いほど小さな声で呟くのが聞こえ、あぁこいつそういえばそうだったと思い出す。写しが何なのかよくわからんが、彼を選ぶ時にネガティブ野郎だなと認識したことは覚えてる。ちょっとめんどくさそうなタイプだ。
「で、心当たりは?」
「……無いな」
「じゃあ帰れませんね。ちくしょー、どうすっかなー」
別段困るようなことは浮かばなかったけれど、やはり原因すらわからないというのはもやもやするものだ。困りはしないが、ここに居たいとも思わないし。なら帰るにはとりあえずゲームクリアか?刀集めか?トリップって言ったらそうなんのかな。……いっけね、トリップっていうよりタイムスリップか……これは詰んだな。
がしがしと頭を掻き、あーと唸る。何から取り組むべきか、今は何も出来そうにない。
(……別に、いいかな)
思考はだいぶぼんやりしているけど、きっと言えることなんてそれしかない。考えるのはストップした。
「……あ、ここに居るのは大丈夫なんでしたっけ?」
「! あぁ。ここはアンタの本丸だからな」
「ぼくたちは、あるじさまのかたなですから!」
「……ゲームの?」
「げーむだけど、ぼくたちはげんじつです」
「そうか」
そりゃどうも、と軽く頭を下げる。
――でも。
「有り難いけど、私は主扱いしなくていいですよ」
「――え」
「私はあなた達の主じゃないし、なる気もないんで」
それより使って良い部屋あります?
首を傾げて問いかければ、二人は目を見開き口を開け、固まっていた。