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道行く君について行こう
「増えた」
「薬研藤四郎だ。名前はこうだが兄弟たちと違って、俺は戦場育ちでな。雅なことはよくわからんが、戦場じゃ頼りにしてくれていいぜ。ま、なかよくやろうや大将」
「誰だよ」
すっと右手を差し出したまま、目の前の少年はぱちぱちと瞬き固まる。ええっとなんだったか……やげんくんね、やげん。普通にくすりって読んでたわ。
困惑する彼に、大将って男に使うもんじゃないの?と聞いてみたところ、薬研くんはあぁと頷き息を吐いた。自己紹介の後に誰だよなんて言われたら固まるのもしょうがないよね。私が悪かった。
「大将って、かしらだぜ。集団の統一者。あんたが審神者であんたの本丸なんだから、主は大将だろ?」
「あー成る程。失礼」
「いや、俺っちは全然。……大将って、呼ばない方がいいか?」
「私の認識では大将って男性に使うものだったから、違和感があるのはそうだね」
「じゃあ、主」
「いや、主じゃないんで。だから大将でもない」
「……んーと?」
困ったように笑い、薬研くんは今剣を見た。山姥切国広は庭を眺めぼうっとしている。当然の人選だな。
助けを求められた今剣も薬研くんと同じように困った顔で笑い、てててと小走りで私に寄ってきた。
「ね?あるじさまは、ほんとうにさにわだったでしょう?」
「実感はわかないけどそうなりますね。マジで鍛刀できたし」
「はい。だからあるじさまは、あるじさまなんです」
「それとこれは別です。拒否する」
あるじさまぁ……!と半泣き状態で私の服の裾を控えめに掴む今剣はスルー。例え審神者であろうと、私の感覚ではゲーム同様のことが出来たということに過ぎない。ゲームならともかく、現実で彼らの主なんてものになる気は全くなかった。
昨夜、本丸内の部屋や環境や設備、電化製品など何があるのかを聞き、ついでに実験として鍛刀を行ってみた。主じゃない発言によって今剣が「しょうこをみせます!」と食ってかかってきたのもそうだが、ゲームシステムじゃなく現実として審神者の業務を行えるのかということを確かめたかったからだ。
結論的に言えば鍛刀は成功。鍛刀部屋にあるカウンターが時を表示し始めた時点でマジだったと判断した私は早々に眠りについた。薬研はその間に他二人との対面を果たしたらしい。
「鍛刀が出来るんなら、目指すとこはコンプリートか……何か知ってる神様にぶちあたるかもしれんし……」
「こんぷりーと?あるじさま、なにかするんですか?」
「ちなみに新しい君、神隠しの原因又は帰る方法に心当たりは?」
「……すまねぇ大将。俺っちは協力出来そうにない」
「わかったありがとう。大将じゃねえよ」
「あるじさまぁ……」
くいくい。裾を引っ張ってくる今剣をちらりと見て、左手の甲で長い前髪をそっと撫でる。目に入りそうだなと思うけど、赤目が両方はっきり見えたら怖そうだなとも思う。
「私は主じゃない」
今剣が下唇をきゅっと噛んだ。彼が何にこだわっているのか全くわからない。
しかし名前が無いのも不便ではあるか。とうらぶにどんなキャラがいて何人いるかもわからないけれど、この分だと主呼びはかなり多い気がする。まだ一回も主とか呼ばずアンタで通してる山姥切国広は稀な存在なのかもしれない。それとも主呼びはちっさい子だけがするのか……まぁ、他と会ってみなきゃわかりそうもない。
「プレイヤー名、たぶんみつるぎにしたと思うんすよね。それで呼んでください」
「……みつるぎ?」
「ぼくは、あるじさまってよびたいです……」
「返事せんわ」
目下、私がやるべきは鍛刀だろうか。
いや……一気に増やすのも怖いから、しばらくこの三人で様子見すべきだな。
それなら今はとりあえず、
「ご飯たべたい」
- 5 -
「薬研藤四郎だ。名前はこうだが兄弟たちと違って、俺は戦場育ちでな。雅なことはよくわからんが、戦場じゃ頼りにしてくれていいぜ。ま、なかよくやろうや大将」
「誰だよ」
すっと右手を差し出したまま、目の前の少年はぱちぱちと瞬き固まる。ええっとなんだったか……やげんくんね、やげん。普通にくすりって読んでたわ。
困惑する彼に、大将って男に使うもんじゃないの?と聞いてみたところ、薬研くんはあぁと頷き息を吐いた。自己紹介の後に誰だよなんて言われたら固まるのもしょうがないよね。私が悪かった。
「大将って、かしらだぜ。集団の統一者。あんたが審神者であんたの本丸なんだから、主は大将だろ?」
「あー成る程。失礼」
「いや、俺っちは全然。……大将って、呼ばない方がいいか?」
「私の認識では大将って男性に使うものだったから、違和感があるのはそうだね」
「じゃあ、主」
「いや、主じゃないんで。だから大将でもない」
「……んーと?」
困ったように笑い、薬研くんは今剣を見た。山姥切国広は庭を眺めぼうっとしている。当然の人選だな。
助けを求められた今剣も薬研くんと同じように困った顔で笑い、てててと小走りで私に寄ってきた。
「ね?あるじさまは、ほんとうにさにわだったでしょう?」
「実感はわかないけどそうなりますね。マジで鍛刀できたし」
「はい。だからあるじさまは、あるじさまなんです」
「それとこれは別です。拒否する」
あるじさまぁ……!と半泣き状態で私の服の裾を控えめに掴む今剣はスルー。例え審神者であろうと、私の感覚ではゲーム同様のことが出来たということに過ぎない。ゲームならともかく、現実で彼らの主なんてものになる気は全くなかった。
昨夜、本丸内の部屋や環境や設備、電化製品など何があるのかを聞き、ついでに実験として鍛刀を行ってみた。主じゃない発言によって今剣が「しょうこをみせます!」と食ってかかってきたのもそうだが、ゲームシステムじゃなく現実として審神者の業務を行えるのかということを確かめたかったからだ。
結論的に言えば鍛刀は成功。鍛刀部屋にあるカウンターが時を表示し始めた時点でマジだったと判断した私は早々に眠りについた。薬研はその間に他二人との対面を果たしたらしい。
「鍛刀が出来るんなら、目指すとこはコンプリートか……何か知ってる神様にぶちあたるかもしれんし……」
「こんぷりーと?あるじさま、なにかするんですか?」
「ちなみに新しい君、神隠しの原因又は帰る方法に心当たりは?」
「……すまねぇ大将。俺っちは協力出来そうにない」
「わかったありがとう。大将じゃねえよ」
「あるじさまぁ……」
くいくい。裾を引っ張ってくる今剣をちらりと見て、左手の甲で長い前髪をそっと撫でる。目に入りそうだなと思うけど、赤目が両方はっきり見えたら怖そうだなとも思う。
「私は主じゃない」
今剣が下唇をきゅっと噛んだ。彼が何にこだわっているのか全くわからない。
しかし名前が無いのも不便ではあるか。とうらぶにどんなキャラがいて何人いるかもわからないけれど、この分だと主呼びはかなり多い気がする。まだ一回も主とか呼ばずアンタで通してる山姥切国広は稀な存在なのかもしれない。それとも主呼びはちっさい子だけがするのか……まぁ、他と会ってみなきゃわかりそうもない。
「プレイヤー名、たぶんみつるぎにしたと思うんすよね。それで呼んでください」
「……みつるぎ?」
「ぼくは、あるじさまってよびたいです……」
「返事せんわ」
目下、私がやるべきは鍛刀だろうか。
いや……一気に増やすのも怖いから、しばらくこの三人で様子見すべきだな。
それなら今はとりあえず、
「ご飯たべたい」