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さぁ、こじつけの世界だ
先に言っとくが、私は料理は得意じゃない。
「あるじさまあるじさま!これは、なんていうべきですか?」
「しょっぱい」
「うっ……くぅ〜…っ!大将っ……これは……?」
「梅干し食ったの?酸っぱい、だよ」
「アンタ、料理が得意なのか?」
「君スクランブルエッグしか食ってねぇな。気に入ったんです?料理得意じゃないけど、気に入ったなら好きとか美味しいって言うんだよ」
「おいしい!」
「好きだ!」
「……うまい」
「うまいはどっから仕入れてきた」
そんな言葉言ったか、と呟けば「アンタが米食べて最初に言ったから」と返された。成る程。
スクランブルエッグと味噌汁とご飯。居間(仮)にある丸いちゃぶ台を囲って、和なのか洋なのかわからんメニューを前に彼らは桜を舞わせていた。何でひとりでに桜舞うのか、原理は謎。
(……もしかして、テンション上がってんのかなぁ)
今まで生野菜そのまま食ってたらしいから、まともなご飯が嬉しいのかもしれない。と、適当に解釈し、ぱちんと箸を置く。「ごちそうさまでした」と手を合わせると、三人が真似して合唱した。それが終るのを待って、一呼吸置いてから口を開く。
「で、私これから何したらいいんです?先住民の意見に任せるよ」
「審神者の業務をやって欲しい」
「……審神者の業務?」
「あぁ」
「やんなきゃ駄目?」
自分から聞いといてつい、顔をしかめてしまった。
――私はとうらぶプレイヤーだけど、ログインは一度しかしていない。
チュートリアルをやった覚えもあるけど事前知識はほぼ無く、審神者の業務も一つもわからない。知ってるのはじじいが来ねぇってことだけ。じじいが誰かも知らんけど。
そして今のところ時の政府との接触はなく、チュートリアルで出てきた狐も現れない。なんとかしろよぅ、帰れないにしろ察しろよ政府ぅ。などと第三者に助けを求めるしか出来ない。
だから、必要性は感じないのだが……。
「……ここは元からげーむ用の本丸だから、やらなくてもぷれいやーが放置してるだけだと思われるだろうな」
「やらなくても良いんじゃねえか」
「大将、でも俺っち達は育ててくれねぇと。何かあった時に大将を守れねぇ」
「何かあった時?」
「たまに、てきがせめてきますよ」
「マジかよ」
そいつはヤベぇな。確かにやらざるを得ない理由だ。……まぁやりたくないし、出来れば断りたいものに変わりはないけど。でも。
(――分が、悪そうだなぁ)
ぴりっとした、張り詰めた空気。
ギラリとした底知れない瞳。
向けられる全てが居心地悪く、おそらく無意識のそれらは私を威圧するのに十分で。私が審神者であることは、目の前で饅頭を頬張る薬研の存在によって証明されているし、三対一で私にとうらぶ知識が殆どないってのもやり辛い。
何より彼らは、「主」という存在にとらわれ過ぎてるから。いくら「主」を否定しようとも、こればかりはきっと、逃がしてはくれない。
完全に場を支配し、全くと言っていいほど隙がない今の彼らには、例え何を反論したところで断るのは無理だろう。
ふー、と息を吐く。座ったまま身体を後ろにぐいと伸ばし力を抜いたあと、饅頭どっから取り出してきたんだこいつ……と半ば自棄になりながら、ちゃぶ台に散らばる饅頭を一つ手に取った。意図を察したらしい薬研がにやりと笑う。
左手を下に向けてひらひらと降り、降参の意を示す。無駄な抵抗をするつもりはもうない。
「……レベルってどうやって上がんの?」
今剣がぱっと顔を輝かせ、他の二人を見やった。
山姥切国広も頷き、シャキン!と背筋を伸ばしてごそごそと……おいどうなってんだそれ。布から何かを取り出す。
ん、と巻物を差し出されたので受けとると、表題には何も書かれていなかったので中を開く。説明書のような文章が長々と綴られていて、これが審神者の業務ってやつなんだろうなということはすぐに分かった。
「俺達は文字が読めないからわからないが、アンタなら読めるだろ?」
「……あー、うん、おっけー。……助かります。そんじゃあこれに従って行動するか……」
「あるじさま!ぼく、しゅつじんしたいです!」
「大将大将!俺っちも!」
「うっせぇちょっと黙ってろ」
急に元気を取り戻した少年二人を睨み、巻物に目を通す。都合良いなお前ら。
ちらりとちゃぶ台を見れば、今剣はちまちま饅頭を食べているものの山姥切国広は一切手をつけていないのが見えて、薬研藤四郎がひたすら食べるからだろうな、とまたため息。注意する義理はないのに、どうにも気になる。
「君、饅頭食いすぎだかんな。山姥切国広の分取っとけよ」
「おっと。すまねぇ……って……」
「ん?」
ついと顔を上げ、薬研の視線を辿る。
そして反射的に動きを止め、ぱちりと瞬きをひとつ。
――山姥切国広が、傷ついたような顔をして、固まっていた。
「……なに?」
「……何でもない」
ふいと顔を逸らし、俯く。何でもないなんて、そんなはずはないだろうに。
彼は何も言わない。
「……そうか」
私も意識を巻物に戻す。反応がないなら、構ってやる気はなかった。
彼らがどんな顔をしていたかも、それ以上は知らない。
- 6 -
「あるじさまあるじさま!これは、なんていうべきですか?」
「しょっぱい」
「うっ……くぅ〜…っ!大将っ……これは……?」
「梅干し食ったの?酸っぱい、だよ」
「アンタ、料理が得意なのか?」
「君スクランブルエッグしか食ってねぇな。気に入ったんです?料理得意じゃないけど、気に入ったなら好きとか美味しいって言うんだよ」
「おいしい!」
「好きだ!」
「……うまい」
「うまいはどっから仕入れてきた」
そんな言葉言ったか、と呟けば「アンタが米食べて最初に言ったから」と返された。成る程。
スクランブルエッグと味噌汁とご飯。居間(仮)にある丸いちゃぶ台を囲って、和なのか洋なのかわからんメニューを前に彼らは桜を舞わせていた。何でひとりでに桜舞うのか、原理は謎。
(……もしかして、テンション上がってんのかなぁ)
今まで生野菜そのまま食ってたらしいから、まともなご飯が嬉しいのかもしれない。と、適当に解釈し、ぱちんと箸を置く。「ごちそうさまでした」と手を合わせると、三人が真似して合唱した。それが終るのを待って、一呼吸置いてから口を開く。
「で、私これから何したらいいんです?先住民の意見に任せるよ」
「審神者の業務をやって欲しい」
「……審神者の業務?」
「あぁ」
「やんなきゃ駄目?」
自分から聞いといてつい、顔をしかめてしまった。
――私はとうらぶプレイヤーだけど、ログインは一度しかしていない。
チュートリアルをやった覚えもあるけど事前知識はほぼ無く、審神者の業務も一つもわからない。知ってるのはじじいが来ねぇってことだけ。じじいが誰かも知らんけど。
そして今のところ時の政府との接触はなく、チュートリアルで出てきた狐も現れない。なんとかしろよぅ、帰れないにしろ察しろよ政府ぅ。などと第三者に助けを求めるしか出来ない。
だから、必要性は感じないのだが……。
「……ここは元からげーむ用の本丸だから、やらなくてもぷれいやーが放置してるだけだと思われるだろうな」
「やらなくても良いんじゃねえか」
「大将、でも俺っち達は育ててくれねぇと。何かあった時に大将を守れねぇ」
「何かあった時?」
「たまに、てきがせめてきますよ」
「マジかよ」
そいつはヤベぇな。確かにやらざるを得ない理由だ。……まぁやりたくないし、出来れば断りたいものに変わりはないけど。でも。
(――分が、悪そうだなぁ)
ぴりっとした、張り詰めた空気。
ギラリとした底知れない瞳。
向けられる全てが居心地悪く、おそらく無意識のそれらは私を威圧するのに十分で。私が審神者であることは、目の前で饅頭を頬張る薬研の存在によって証明されているし、三対一で私にとうらぶ知識が殆どないってのもやり辛い。
何より彼らは、「主」という存在にとらわれ過ぎてるから。いくら「主」を否定しようとも、こればかりはきっと、逃がしてはくれない。
完全に場を支配し、全くと言っていいほど隙がない今の彼らには、例え何を反論したところで断るのは無理だろう。
ふー、と息を吐く。座ったまま身体を後ろにぐいと伸ばし力を抜いたあと、饅頭どっから取り出してきたんだこいつ……と半ば自棄になりながら、ちゃぶ台に散らばる饅頭を一つ手に取った。意図を察したらしい薬研がにやりと笑う。
左手を下に向けてひらひらと降り、降参の意を示す。無駄な抵抗をするつもりはもうない。
「……レベルってどうやって上がんの?」
今剣がぱっと顔を輝かせ、他の二人を見やった。
山姥切国広も頷き、シャキン!と背筋を伸ばしてごそごそと……おいどうなってんだそれ。布から何かを取り出す。
ん、と巻物を差し出されたので受けとると、表題には何も書かれていなかったので中を開く。説明書のような文章が長々と綴られていて、これが審神者の業務ってやつなんだろうなということはすぐに分かった。
「俺達は文字が読めないからわからないが、アンタなら読めるだろ?」
「……あー、うん、おっけー。……助かります。そんじゃあこれに従って行動するか……」
「あるじさま!ぼく、しゅつじんしたいです!」
「大将大将!俺っちも!」
「うっせぇちょっと黙ってろ」
急に元気を取り戻した少年二人を睨み、巻物に目を通す。都合良いなお前ら。
ちらりとちゃぶ台を見れば、今剣はちまちま饅頭を食べているものの山姥切国広は一切手をつけていないのが見えて、薬研藤四郎がひたすら食べるからだろうな、とまたため息。注意する義理はないのに、どうにも気になる。
「君、饅頭食いすぎだかんな。山姥切国広の分取っとけよ」
「おっと。すまねぇ……って……」
「ん?」
ついと顔を上げ、薬研の視線を辿る。
そして反射的に動きを止め、ぱちりと瞬きをひとつ。
――山姥切国広が、傷ついたような顔をして、固まっていた。
「……なに?」
「……何でもない」
ふいと顔を逸らし、俯く。何でもないなんて、そんなはずはないだろうに。
彼は何も言わない。
「……そうか」
私も意識を巻物に戻す。反応がないなら、構ってやる気はなかった。
彼らがどんな顔をしていたかも、それ以上は知らない。