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真理の歪み


イライラしている。いつの間にか島について、潜水艦である船もお日さまに照らされているようだが私には関係ない。寧ろソノ!晴れっぷりが!鬱陶しいわ全く!
ムカついたので机に向かって設計図ガリガリしていると、コンコンと、ドアではないところからノックが聞こえた。
…窓…か?


「ッう、ぉオオオオ!?」

ナンカイル!!チョウ怖いぞ!?
飛び退いてウオオオオ!と叫び続けている間にも、窓にへばりついているやつは「フッフッフッ」とか笑ってやがる!窓という隔たりで聞こえにくいが、コイツ、笑ってヤガルぞ…!

「オ、お前ェ!よく見れば人間じゃないかぁ!」
「………」
「何言ッテルかわかんね!なんだし!」

よくよく見たら小さな丸窓いっぱいに顔だけ見えてるだけで、人間だということがわかった。口が動いてるしもごもご聞こえるから何かを話してはいるらしいが、何もわからん。ただ人間だとわかった私に怖いものはないのだ!いいや?しかし油断ナラないゾ…?人間の皮を被ったサングラスかもしれない…!

「ム?…上、か?」
「……」
「イイヤ違うな…外に…出ろ、とデモ言うのか」

言葉が通じないと悟ったらしい人間、いいやサングラス(仮)にしておこう。は、何か手でジェスチャーを始めた。解釈を言葉にしていれば、最後の言葉でにたぁと笑みが濃くなった。怖い。夢に出ソウダ…とりあえず意味はあってるらしい。

窓から消えたサングラス(仮)に一瞬悩んだが、まぁ、大丈夫かと半ば自棄になり部屋を出た。一応報告として置き手紙してミタ。『散歩』…ウム。私は達筆ダ。




「…おや?」
「遅かったな、***」

頭に、キン、と何か響いた。
あぁそうだコイツ、知ってるじゃナイかという仮定は、それにより確定に変わった。

「……私の名前は、リリーだ」
「そうだったな。悪かった、リリー?」

フッフッフッ、とまた笑った男を不気味に思いながら、座ってくれててヨカッタナと思った。
やっぱりコイツ、前に島で会ったヤツだ。私を、私じゃない名前で呼ぶヤツ。

「スッカリ忘れテイタ。何だ、私ニ用か?」
「忘れてた?それは酷いな。科学者と聞いたから覚えもいいものだと思っていたが」
「いや、ウソだ。嘘、うそ。覚…エテ……えーっと…」
「俺の名前は?」
「あー…」
「……」
「……」
「………」
「ど……」
「……」
「ドン、ピンク…ドピンク…」


ぽかん、と鳩が豆鉄砲食らったような顔をした後、目の前の…あぁもうイイダロドンピンクで!ドンピンクが盛大に笑いだした。ちょう笑顔。ヤバい。普段は名前を間違えても気にしない私が、私が!恥ずかシイぞ!?なんだこの仕打ちハ!

「お前…っ…中々面白いことを…っ」
「……私は今絶望にうちひしがれているノダ黙れ」
「まぁ、そう気にするなよ。正直、お前が人の名前を覚えられないことは知っていたから知ってて聞いたんだ。怒っちゃいねェ」

笑いの余韻を残しながら、ドンピンクはそう告げる。ソウカ怒っテいないか、と安心したのもつかの間。すぐに言われた言葉が引っ掛かった。

「……名前を覚えられない?」
「あぁ。そうだろう?」
「……」

誰が、そんなコトを言った。
私ですら、そう思ったことはないのだ。興味がないから覚えない。そう思っていた。けれどコイツは覚え、られないという。苦手でも覚えないでもない。られない。大きな言葉の差だ。
私が気づかず、思わなかったことを指摘される。疑問が生じる。…つい最近、味わったものだ。

「……トラファルガーが、最近おかしい」
「ローが?」
「あぁ。私が関係シテイルようだが、私はわからず、聞イテも避ける。ダガ私は既に違和感に気付イタ。知る義務がある」
「……」
「お前……何か知っテイルだろう」

座って、目線の低い相手の、サングラス越しの目に訴える。
私に接触した目的もソレカ、とわかったように言えば、ドンピンクは満足そうに笑った。


「知っているさ。そして、目的と言えば、目的だなァ」
「……」
「聞きたいか?」


私は、科学者だ。
生じた疑問に結論を出すのは、最早義務。


「愚問だな」


真理の歪み
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