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マリオネット
「ローとお前のことは、昔からよく知っている」
昔、とはいつの話かと思ったが、そこでもまた昔の…そう、トラファルガーがいて、船を作るより前の記憶がないことに気付いた。
けれど、それには一度蓋をする。
「トラファルガーは私に何ヲ隠しているのだ。そんなに後ろメタイことなノカ?」
「隠す?いいや、隠しちゃいない。話したかったはずさ」
「ますますワカラないな…」
「まァそう急かすな」
船から離れ、船の死角となっている海岸でドンピンクはまたその辺のものに座っている。私は立ったままだ。
見えないこの場ならトラファルガーを気にすることはない。それはわかっている。
「お前はどこまでわかっている?」
「……この話し方に特徴があること。周りは後遺症ダト思ってイタらしいな。あとは手が左右で違う、片足が義足…と、聞いている」
「聞いている?」
「私ニハわからん。私が自分で気付いたのは、思い出せない記憶が多いコト。そして今までの私の動機がわからないことダ!」
「…成る程な」
ドンピンクはどこまでも楽しそうだ。早くしろ、と急かすように小石を蹴飛ばしてみるが、ドンピンクは当たる前にそれを踏んだ。
「結論から言うと、お前は生きていない」
突然、そう言われた。
「いいや、正確には…一度死んでいる」
「…? 意味がわからないナ」
「単純に考えるな。死にも色々あるだろう」
言われて頭を巡らせるが、やはり腑に落ちない。…死を体とするなら、心の死ということか?思ったまま口に出す。
「近いな」
「なんだ、私は一度心が死んだとでもいうのか?」
「いいや?恐らく体も生きていなかったはずだ」
「……そろそろまどろっこしいぞ、ドンピンク」
フッフッフッ、と笑ったドンピンクは、「おれはドンキホーテ・ドフラミンゴだ」と訂正をいれてくるが、無視する。それもまた楽しそうにされた。
「お前は、爆破に巻き込まれたんだ」
「…爆破」
「記憶にないのは仕方ない。鍵をかけたからな」
「鍵?」
「そうさ。おれが、ローに頼まれて、そうした」
ドンピンクは、続ける。
「爆破に巻き込まれ、お前の身体は生きるのが難しいほどに損傷した。一部は吹き飛んだらしいな。だからお前は一度死んでいる」
「……」
「だが、ローの能力は知っているだろう?オペオペの実…そしてアイツは、医者だ」
カチン、とピースがひとつはまった気がした。自分の手を見つめる。私には同じに見える手。他人には違うもの同士に見える手。…これは、吹き飛んだのだ。そして、繋がらせた。
トラファルガーの、能力で。
「お前のショックのでかさ、そして精神の限界を感じてローはおれに頼んだのさ。お前に催眠をかけることを」
「催眠?」
「あぁ。今までの記憶を全て塗り替え!鍵をかけ!そしてお前という、新しい人間を作り出した」
「……」
「リリーというその名前も、ローがつけた。本当のお前の名前は、***だ。だが、それもお前には聞き取れないだろう?」
「…そうだな」
耳鳴りのような酷い音が頭に響いた。やはりコイツがいう誰かの…私の、名前だったらしいものは、聞き取れない。
「お前が催眠をかけたのか」
「いいや、おれじゃない。おれは催眠をかけられるヤツを紹介しただけだ。だからおれには解けないぞ?」
「安心シロ。誰も解けトハ言ってナイ」
「そうか」
始終楽しそうに語ってみせたドンピンクを一度放っておいて、頭を整理する。…手がそうだと言うならば、足もそうだろう。皆が言う話し方トヤラもきっと、何かあった名残のはず。あぁ、これで……合点がいった。
なんて、皮肉な話だろう。
こいつの言葉を全て信じるのなら……私は、命の恩人を殺そうとしていたのだ。
「ローはお前に体を与え、おれはその先を生きる心を与え、そしてお前を手元に置くために、ローはお前の心臓を奪った」
「あぁ、納得した…しかしわからないな。何で私にソコマデしたのだ、アイツは…」
「フッフッフッ、それは本人に聞くことだろう」
「……そうしよう。ダガ最後に、1ついいか」
「なんだ?」
1つ、合点がいかないことがある。
「何故、私にアイツを殺そうとする催眠をかけた?」
手元に起きたいのなら心臓だけで十分だったはずだ。取り返すという気持ちは必要かもしれないが、その手段がトラファルガーの死というのはおかしな話だ。それでは本末転倒ではないか。
まさか、私に殺されたかったわけでもあるまい。
「…いいや。ソイツはおれもローも何もしちゃいねェ」
「? お前たちがやったンジャないのか?」
「それをやっても得はねェだろ。…恐らくそれは、お前が元から持ってた、潜在的なもんさ」
「…私が?」
あぁ、とドンピンクは頷く。
私…いや、私になる前の、違う、元となった私が。
トラファルガーを、殺したいと思っていたのか…?
「お前に、リリーに殺したいとに思わせるくらいのことを…ローはしたってことだ」
マリオネット
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昔、とはいつの話かと思ったが、そこでもまた昔の…そう、トラファルガーがいて、船を作るより前の記憶がないことに気付いた。
けれど、それには一度蓋をする。
「トラファルガーは私に何ヲ隠しているのだ。そんなに後ろメタイことなノカ?」
「隠す?いいや、隠しちゃいない。話したかったはずさ」
「ますますワカラないな…」
「まァそう急かすな」
船から離れ、船の死角となっている海岸でドンピンクはまたその辺のものに座っている。私は立ったままだ。
見えないこの場ならトラファルガーを気にすることはない。それはわかっている。
「お前はどこまでわかっている?」
「……この話し方に特徴があること。周りは後遺症ダト思ってイタらしいな。あとは手が左右で違う、片足が義足…と、聞いている」
「聞いている?」
「私ニハわからん。私が自分で気付いたのは、思い出せない記憶が多いコト。そして今までの私の動機がわからないことダ!」
「…成る程な」
ドンピンクはどこまでも楽しそうだ。早くしろ、と急かすように小石を蹴飛ばしてみるが、ドンピンクは当たる前にそれを踏んだ。
「結論から言うと、お前は生きていない」
突然、そう言われた。
「いいや、正確には…一度死んでいる」
「…? 意味がわからないナ」
「単純に考えるな。死にも色々あるだろう」
言われて頭を巡らせるが、やはり腑に落ちない。…死を体とするなら、心の死ということか?思ったまま口に出す。
「近いな」
「なんだ、私は一度心が死んだとでもいうのか?」
「いいや?恐らく体も生きていなかったはずだ」
「……そろそろまどろっこしいぞ、ドンピンク」
フッフッフッ、と笑ったドンピンクは、「おれはドンキホーテ・ドフラミンゴだ」と訂正をいれてくるが、無視する。それもまた楽しそうにされた。
「お前は、爆破に巻き込まれたんだ」
「…爆破」
「記憶にないのは仕方ない。鍵をかけたからな」
「鍵?」
「そうさ。おれが、ローに頼まれて、そうした」
ドンピンクは、続ける。
「爆破に巻き込まれ、お前の身体は生きるのが難しいほどに損傷した。一部は吹き飛んだらしいな。だからお前は一度死んでいる」
「……」
「だが、ローの能力は知っているだろう?オペオペの実…そしてアイツは、医者だ」
カチン、とピースがひとつはまった気がした。自分の手を見つめる。私には同じに見える手。他人には違うもの同士に見える手。…これは、吹き飛んだのだ。そして、繋がらせた。
トラファルガーの、能力で。
「お前のショックのでかさ、そして精神の限界を感じてローはおれに頼んだのさ。お前に催眠をかけることを」
「催眠?」
「あぁ。今までの記憶を全て塗り替え!鍵をかけ!そしてお前という、新しい人間を作り出した」
「……」
「リリーというその名前も、ローがつけた。本当のお前の名前は、***だ。だが、それもお前には聞き取れないだろう?」
「…そうだな」
耳鳴りのような酷い音が頭に響いた。やはりコイツがいう誰かの…私の、名前だったらしいものは、聞き取れない。
「お前が催眠をかけたのか」
「いいや、おれじゃない。おれは催眠をかけられるヤツを紹介しただけだ。だからおれには解けないぞ?」
「安心シロ。誰も解けトハ言ってナイ」
「そうか」
始終楽しそうに語ってみせたドンピンクを一度放っておいて、頭を整理する。…手がそうだと言うならば、足もそうだろう。皆が言う話し方トヤラもきっと、何かあった名残のはず。あぁ、これで……合点がいった。
なんて、皮肉な話だろう。
こいつの言葉を全て信じるのなら……私は、命の恩人を殺そうとしていたのだ。
「ローはお前に体を与え、おれはその先を生きる心を与え、そしてお前を手元に置くために、ローはお前の心臓を奪った」
「あぁ、納得した…しかしわからないな。何で私にソコマデしたのだ、アイツは…」
「フッフッフッ、それは本人に聞くことだろう」
「……そうしよう。ダガ最後に、1ついいか」
「なんだ?」
1つ、合点がいかないことがある。
「何故、私にアイツを殺そうとする催眠をかけた?」
手元に起きたいのなら心臓だけで十分だったはずだ。取り返すという気持ちは必要かもしれないが、その手段がトラファルガーの死というのはおかしな話だ。それでは本末転倒ではないか。
まさか、私に殺されたかったわけでもあるまい。
「…いいや。ソイツはおれもローも何もしちゃいねェ」
「? お前たちがやったンジャないのか?」
「それをやっても得はねェだろ。…恐らくそれは、お前が元から持ってた、潜在的なもんさ」
「…私が?」
あぁ、とドンピンクは頷く。
私…いや、私になる前の、違う、元となった私が。
トラファルガーを、殺したいと思っていたのか…?
「お前に、リリーに殺したいとに思わせるくらいのことを…ローはしたってことだ」
マリオネット