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それは逃避か対面か


バタン!と乱暴にドアを開いた。それに驚いたようにリリーが振り向き、酷く焦って呼吸も乱れたおれを見て、その驚きは更に増したようだ。

「お前…、いつ…!」
「お、おう…?部屋に戻ッタのはさっきだ。書き置きならしたが?」
「それは見たッ!」

リリーの気配がしないことに焦り、部屋を確認した時にちゃんと書き置きは見た。散歩というその言葉にすら不安を覚えたが、流石に同じ過ちはしないだろうと、今おれが何か言える状態でも、リリーがおれから離れられる状態でもないと思って、そうわかっていた。だから見逃したんだ!
それなのに、

「何故あいつと一緒にいた…!?」

こんなところでまた会うとは、思いもしなかった。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ…おれが、リリーの回復に協力を頼んだ男。

あいつがリリーに会って、何か話さないわけがないというのに。


「……前にも言ッタが」
「……」
「何をシヨウと、私の勝手だ」


リリーは言う。真っ直ぐな目で。

……全く、その通りだ。

全てはリリーの勝手で、自由だった。それをおれが縛り付けて、奪ったんだ。こいつの何もかもを。それを間違いだと思って、罪だと思って、おれはリリーに鍵を渡し、リリーがやることに抵抗をしなくなったんだ。
真実を知ってほしいと、思い出してほしいと願ったはずなのに、それを自分ではせず、おまけに自分以外で伝えられる人間と接触することを拒むおれは、なんて身勝手なんだ。

「……リリー…、どこまで聞いた」

あぁ、だから。


「……アイツが知っている全て、だそうだが」



――もう、終わりにしよう。



「なッ、何をスル!?」
「……」
「離セっ…痛いゾ、トラファルガー!」
「黙ってろ」
「ッ!」

リリーの腕を掴み、引っ張り、部屋から引きずり出した。そのまま制止も抵抗も無視して、外に連れ出す。
乱暴に扱ったって構わない。元から今掴んでいるこの手さえ、リリーの…アイツの手ではないのだから。

「くそッ…ロー!」
「その名前で呼ぶな!」
「…っ、お前…一体何ナンダ!?何がしたいんだ!」

勢いと一緒におれの手からリリーの手が外される。もう完全に船から離れ、陸に足をつけた。おれ達の様子に気づいたらしいベポたちが船から見てきているのがわかったが、それすらもどうでも良い。

日は沈みかけている。だが今からなら泊まる場所も、そしてそれだけの金も持たせていたはずだ。今日見ていた限り、治安の悪い島でもない。大丈夫だ。……リリーなら、やっていける。

「…船長命令だ」
「え…?」
「会うなと言ったやつと会い、おれに言えと言ったのに書き置きだけ残し、言うことも聞けない上におれを殺そうとし航海に協力する気もない。そんなやつをこれ以上船に置き続けて、何の得がある?」
「おい…トラファルガー、お前まさか…!」

リリーを見る。出来るだけ感情のない目で、出来るだけ冷たく冷酷な目で、出来るだけ、蔑んだ目で。
お前など、いらないと。伝わるように。

「…な…んでだ…」
「……」
「お前は…お前はッ!何故私をここに置イタ!?何故命を狙われてもッ私を船に置き!律儀に飯まで作って!縛りつけたッ!?」
「……」
「こんな…こんな…っことをするならッ…最初からッ…船に乗せなければ良かっタのにッ…!」

リリーが怒鳴る。おれの胸ぐらを掴み、泣きそうな声で、泣きそうな顔で。
…そんな顔をさせるのは、これで二回目だ。

「…おれはお前に悪いと思っていた」
「…ッ」
「だから、船に乗せた。いつか真実を教えなければならないと思っていたが、知ったのならもう意味はない。お前がこの船に乗る意味も、おれがお前にこれ以上関わるのも、全て無駄だ」

トン、と。
軽く、けれど明確な拒絶を乗せて、リリーを突き放す。

「返したぞ」
「!」

リリーが白衣を捲れば、ぽかりと空いていたはずの空洞は埋まっていた。おれが奪いとり、預かっていた心臓。お前を縛り付けていた、お前の自由。お前そのもの。
これでお前にはもう、おれが必要ないはずだ。

「リリー」

おれから始まった全てに。
おれが、今度は逃げずに…終止符を打とう。


「この船から、出ていけ」


それは逃避か対面か
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