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指針は思考の中


「うわああああ!!薬物がボーン!!」
「いいから早く片付けろ」
「あいたっ」

ペンギンに頭をはたかれながら、リリーはいそいそと雑巾を絞る。今日も実験は失敗に終わったらしい。

「キャプテン、なんでリリーを船にのせてるの?」
「…お前たちはあいつをなんだと思ってる?」
「マッドサイエンティスト」
「キャプテンを狙う人」

シャチとベポが答える。そうか。マッドサイエンティスト。確かにそうかもしれない。

「でもこの船はあいつが作ったと聞いてる」
「え?じゃあ、船大工さん?」
「まさかー?どう見ても変人なあいつが、ただの船大工なわけないだろ!」
「同感だ。考えてみれば、なんであいつがこの船にいるのかおれ達は知らないな」

リリーを急かすのが終わったのか、ペンギンまで話に入ってきた。話題が話題なだけに、自然とおれに視線が向けられる。

……答えるべきか。
そもそも今まで聞かれなかったことの方が不思議だったのかもしれない。


「キャプテン、リリーは、どうしてここにいるの?」

首を傾げたベポを一瞥して、常に持ち歩いているそれを服越しに撫でた。

まだ話せない。話すべきじゃない。
そう判断して、口を紡ぐ。おれの態度を察したらしく、二人と一匹は諦めたようにリリーを見た。

「…船長、一つだけ聞きたい」
「なんだ」

申し訳なさそうにペンギンが口を開いた。

「リリーが船長の命を狙ってるのは事実だろう?…リリーは、敵と見ていいのか?」
「………」

もう一度、視線がおれに集まる。リリーとおれの関係がなんであれ、何故リリーがおれの命を狙っているのか、そんなリリーが何故おれの船にいるのか、それを知らなくとも敵か味方か、その事実は必要だ。
これなら答えてもいい。いいや、はっきりと言える。これだけは。


「味方だ」


例えあいつの中でおれが敵であろうと、おれの中でリリーは味方だ。

こんな状況を作り出してしまったのが自分なのだから、憎もうにも誰も恨めない。


指針は思考の中
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