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帰省本能がざわつく


結局街を走り回った挙げ句私がたどり着いたのは船だった。びくびくしながらそっと船に乗り込むと、トラファルガーはまだ帰っていなかったので、私は研究室であり自室である部屋に隠った。

「……リリー、帰ってるか」

暫くして、控えめな声がドアの前から聞こえた。私は実験用被験人形のとらふぁる君を抱き締める。

「……いません、ヨ」

しょんぼりしながら言えば、扉の前の人物が息をはくのがわかった。それがため息でないことも。

「リリー、飯作ってきたんだ。パスタ。今日は一つの皿に数種類のせたんだぞ」
「……」
「……ここを、開けてくれないか」

ちくしょう、なんだよそんな弱々しい声しやがって。女々しいっての。気持ち悪いわ!
立ち上がってドアをほんの少しあける。隙間から持っていたとらふぁる君を出し、腹話術のように人形を動かす。

「今日はフォーク、あるんダロウナ」
「…ある。予備も持ってきている」
「…入れ」

ドアを人が一人入れるほど開ければ、なんだか複雑そうな顔をしたトラファルガーがいた。よく似せて作ったはずのとらふぁる君は度重なる実験でいつもしょんぼりした顔をするようになってしまったのだが、今のトラファルガーはとらふぁる君とおんなじ顔をしている気がした。

「その人形…」
「とらふぁる君ダ。私の実験の被験者である」
「……もしかしてモデルは、」
「お前だが何か」
「………」

トラファルガーがまた複雑そうな顔をした。しかし、ウム、先ほどよりイイナ。良しとする。
トラファルガーの手にあったパスタを奪いとり、しっかりフォークを手に握る。食べようとしたけど、突っ立ってこちらを見ているバカがいるから食べにくい。まぁ座れよ、と床を座せば、戸惑いながらトラファルガーは床にあぐらをかいた。

「…いいか、トラファルガー。私はナ、お前の物じゃない。確かに私の心臓はお前の手にアルガ、それで全部乗っ取った気になるなヨ」
「…あぁ。反省している」
「ソウカ。ところでこれウマイな」
「とれたての魚を使っているから新鮮だぞ」
「でかした」

美味しいもの食べてたら元気が出てきたゾ!何よりトラファルガーが思った以上に気持ち悪くて、気持ち悪い。威勢のないお前になど興味はない!

「まぁ、私も悪いとしよう。次は一応報告してやらんこともない」
「そうしてくれると助かるが」
「よし、これにて終戦ダ。私が作ったパスタをやろう」

おらよ、とパスタが乗った皿を差し出す。気分だったカラ私も作ったのだ。そう言えばトラファルガーはまた驚いたように私を見てから、予備のフォークを手にとった。

いただきます、とご丁寧に言ってからトラファルガーはパスタをぐるぐる。ちなみにナポリタンだ。ぐるぐるしたパスタを、トラファルガーが口に入れ、る。


「……っげほ!お、お前…!」
「ばあああか!ナポリタンだと思ったナバカやろうめ!そいつはタバスコと唐辛子たっぷりの激辛ナポリタンだざまぁみろ!!」
「くそ…み、水…!」

言ってから、私の部屋に水なんかないことに気づいたトラファルガーは、急いで部屋から出ていった。
私がそんなしなやかにお前と終戦するわけがなかろうが!ばあああか!!


帰省本能がざわつく
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