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迫りし冬至


ぷかぷかと、あひるを浮かべてお風呂に入る。
そういえばリヴァイさんが来た時はお風呂上がりだったなぁなんて思い出しながら、今日のことを一人反省会。

リヴァイさんの同僚ことハンジさんを初めて見た時から、早二週間。
最初の失敗から二回しても、まだハンジさんとコンタクトが取れていないのだ。


「……ハンジさんかぁ…」

今までするりするりとかわされてきたから、まだ遠くからしか見れてないけども。なんだか可愛らしい人だったな。
目をきらきらさせて、先生の話を聞いて。たまに頷いたり、メモもとっていた気がする。
リヴァイさんは変人だとかなんとか言っていたけども、私には勤勉家のように思えるよ。
……ん?メモ?


「……あぁ!!」


ざぶん!とお湯の中から立ち上がって、
いそいそとお風呂から出た。











「おまえ…まだ髪が濡れてる」
「あとで乾かします!それより、リヴァイさん!」
「だめだ。髪かわかせ」

ぺい、とドライヤーのコンセントを放ってきた。ちなみにリヴァイさん自身は、ドライヤーを当てると風で涙目になる。それが嫌なのか、あんまり進んで使おうとはしないのだけど…。
自分を棚にあげといて、まったく!でもいまは仕方ないから、ダッシュでドライヤーをさして髪を乾かす。その間もずっと、私はそわそわしていた。

「リヴァイさん!」
「ん、よしいいぞ。話せ」
「メモですよ!」
「……あ?」
「メモ!ハンジさん!」

そう言えば、リヴァイさんははっとしたように目をまんまるくした。そのままぱちぱちと瞬きして、ちょっとだけフリーズ。

「……きづかなかった」
「ですよね!」

つかまらないなら、メモを残しておけば良かったんだ。
結構単純なことだったよ…!
嬉しくなってはしゃげば、リヴァイさんも嬉しいのか、それとも褒めてるつもりなのか、得意の綿棒で私の手をぺしぺし叩いてきた。
くすぐったい…リヴァイさん、すごく満足気だけど…くすぐったい…。
この人何がしたいのかな…。


「じゃあ、リヴァイさん!来週はメモ残しましょうね!」
「ん」
「ってことは私はいつもより早めに行ってメモを置いて…」
「暦」
「はい?」
「…あのでかいやつで、文字を書くのか?」

言われて、はたと固まる。
でかいやつ…でかいやつって多分、シャーペンのことだよね。全長16センチがシャーペンで筆記かぁ…。

「んんん、芯使いますか?」
「手が汚くなる」
「そこは洗いましょうよ」
「……」
「どうしたいんだあなたは」

16センチの三十路が考えることなんてわからん。
何か言いたげなリヴァイさんが、じっと私を見るから、私もじっと見返す。


「おまえが、かけばいい」


………なにをおっしゃって…、

ええ?ばかなの?冷静じゃないの?
と、思う私の意図を汲んだリヴァイさんが綿棒で突っついてきたから、私は綿棒をでこぴんの要領で弾いた。リヴァイさんおこ。
何はともあれこのおっさん、本気らしい。本気で私にかけというらしい。
全く知らない文字なのに。
そしてリヴァイさんは、それを譲らないらしい。

こうして、リヴァイさんが何を考えているかは勿論わかりっこないけど、とりあえず、私がハンジさんへメモを書くことは、決定してしまったのである。
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